この記事のポイント
- 骨折のあとの後遺障害の等級は、主に「動かない」「曲がった(つかない)」「痛い」がどの程度残ったかで決まります。
- 「骨がついた」ことと症状固定は同じではありません。多くの骨折で、リハビリの目安は骨がつくまでの期間より長くなっています。
- 症状固定の前に、画像の写しや左右両方の関節の角度などの資料をそろえます。金属を抜く予定があれば、症状固定の前に主治医と弁護士に相談します。
交通事故で骨折したときは、治療を終えたあとも、関節が元のように動かない、骨が曲がってついた・つかないまま残った、痛みやしびれが続く、という形で症状が残ることがあります。


この頁では、部位ごとの骨がつくまでとリハビリの期間の目安、後遺障害になる主な3つの場合と等級、症状固定の前にそろえる資料、プレートなどの金属を抜く手術と症状固定の関係を、交通事故の被害者側の弁護士が、医学書などを出典に説明します。
「骨がついた」のに、後遺障害が残ることがあるのはなぜ?

ただ、この段階の骨はまだ元の強さに戻っておらず、骨が作り直される過程(リモデリング)は数か月、長いと数年続くとされています(救急/プライマリ・ケアの骨折診療スタンダード 原著第4版 18頁。以下「骨折診療スタンダード」)。
整形外科医の講演でも、骨折のあとに全く痛みがなく完全に治ったといえる例は多くなく、痛みが残る、膝が曲がらないといった状態のまま「症状固定」として治療を終えることがある、と説明されています(赤い本 2009年版 下巻 100頁)。
骨がつくことと、後遺障害が残らないことは別の問題です。骨折のあとで後遺障害として評価されるのは、主に次の3つです。
骨がつかない(偽関節)
このほかに等級の対象になるもの
このほか、手術や開放骨折の傷あと(醜状障害)や、関節がぐらつくようになったもの(動揺関節)も、等級の対象になることがあります(自動車損害賠償保障法施行令 別表第二、労災保険の認定基準。傷あとの後遺障害(醜状障害)、骨盤・脚・足の後遺障害)。
部位別:骨がつくまでとリハビリは、どのくらいかかる?
骨折の治療指針は、骨折の種類ごとに「標準的な骨癒合期間」と「標準的なリハビリテーション期間」を示しています。交通事故で多い骨折について、その期間と、治療のあとに残りやすい症状を表にまとめました(肋骨は骨折診療スタンダードの表によります)。
| 骨折の部位 | 骨がつくまで | リハビリの期間 | 残りやすい症状 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 鎖骨 | 6〜12週(粉砕が強いと長い) | 10〜12週 | 骨が曲がったり短くなったりしてつく。高齢の方は肩が固くなり、痛みが残りやすい | 骨折の治療指針 67頁・68頁 |
| 上腕骨近位端(肩の付け根) | 6〜8週 | 12週〜1年(幅が広い) | 肩が固くなる(拘縮)。拘縮のリハビリは長くかかる | 同 78頁 |
| 橈骨遠位端(手首) | 骨折部が安定するまで6週 | 12週(関節の中まで折れたものなどは長い) | ずれたままつくと、手首の動きの制限や痛みが残ることがある | 同 151頁・152頁 |
| 肋骨(胸やおなかの中のけがを伴わないもの) | 6週 | 出典に期間の目安はない(ふだんの生活ができるまで、2〜3週ごとに受診) | 曲がってつく・つかないまま残るのはまれ | 骨折診療スタンダード 437頁 |
| 腰椎の圧迫骨折・破裂骨折(背骨) | 8〜16週 | 3〜6か月 | 背骨の並びが崩れた形(変形)が残ることがある | 骨折の治療指針 437頁・438頁 |
| 大腿骨頚部(股関節) | 金属で固定した場合12〜16週 | 手術後20〜24週程度は続けるべきとされる(6か月のリハビリで歩く力の改善が期待できる) | 事故の前の歩く力に戻らないことがある。ずれの大きい骨折では、高齢の方は人工骨頭に入れ替える手術が行われる | 同 210頁 |
| 大腿骨骨幹部(太もも) | 4〜6週で仮骨ができ始め、完全には12〜16週 | 12〜16週 | ねじれたり短くなったりしてつくことがある | 同 230頁 |
| 脛骨プラトー(膝の関節面) | 10〜12週 | 14〜20週 | 関節面のへこみが残ると、膝の変形・ぐらつきや、将来の変形性膝関節症のおそれ | 同 272頁 |
| 脛骨骨幹部(すね) | 10〜12週 | 12〜14週 | 骨がつかない(偽関節)。起こりやすさは、皮膚や筋肉のけがの程度で大きく変わる | 同 284頁、骨折合併症 白熱講義 108頁 |
| 足関節(くるぶし) | 6〜12週(骨折の型による) | 12〜24週(骨折の型による) | 関節面がずれたままつくと、関節症が進み、痛みの原因になる | 骨折の治療指針 304頁・305頁 |
| 踵骨(かかと) | 8〜12週 | 12〜16週(保存療法などではもっと長い) | 関節面のずれが残ると関節症が進み、立つ・歩くときに痛みが残ることがある | 同 330頁 |

表の期間は目安。骨のつき方を左右するもの
表の期間は、典型的な骨折の目安です。骨のつき方は、年齢(高齢の方ほど遅い)、栄養、糖尿病や喫煙、開放骨折(折れた骨が皮膚の傷で外とつながったもの)かどうか、感染、血管や神経のけがなどに左右されます(骨折診療スタンダード 18頁、標準整形外科学 第14版 728頁)。
皮膚や筋肉が強くつぶれた開放骨折や、骨の表面の膜(骨膜)が広くはがれるほど粉々に折れた骨折(高度の粉砕骨折)では、骨のかけらへの血の流れが悪くなり、つきにくくなります(骨折の治療指針 4頁)。
入院の期間は? 治療の期間は賠償にどう響く?
表は入院の期間を示すものではありません。入院が必要かどうかは、けがの重さや年齢などで判断され、たとえば肋骨骨折では、3本以上折れた場合や65歳以上の場合などが入院を考える目安とされています(骨折診療スタンダード 437頁)。

後遺障害になるのは、どんな場合?(主な3つ)
後遺障害の等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第二で決まっています。自賠責保険の等級の認定は、原則として労災保険の障害等級認定基準(以下「認定基準」)に準じて行われます(自賠責保険の支払基準 第3、赤い本 2020年版 上巻 437頁)。
①関節が元のように動かない(関節の動きの制限)

等級は、けがをした側の関節が動く角度を、けがをしていない側(健側)と比べて決めます。対象は、肩・肘・手首(上肢の三大関節)と、股・膝・足首(下肢の三大関節)です。
健側の4分の3以下なら12級、2分の1以下なら10級、関節が固まって動かないもの(強直)などは8級です。人工関節・人工骨頭に入れ替えた関節は、少なくとも10級に当たります(認定基準)。
リハビリで良くなっている途中なら、症状固定を急がない
注意したいのは、ギプスで固定していたために起きた動きの制限(廃用性の機能障害)について、認定基準が、将来その障害が軽くなることを考えて等級を認定するとしている点です。
リハビリで角度がまだ良くなっている途中なら、症状固定を急がず、改善が止まったことを記録に残してからにしましょう。
角度の測り方と部位ごとの例は、肩・腕・手の後遺障害と骨盤・脚・足の後遺障害で説明しています。
②骨が曲がってついた・つかない(変形・偽関節)
折れた骨がずれたままついた状態を「変形癒合」といいます。見た目だけでなく、隣の関節の痛みや動きの悪さを残すことがあり、大人では変形はそのまま続きます(標準整形外科学 第14版 729頁・747頁)。
関節面がずれたままつく「関節の中の変形」は、けがのあとに起こる変形性関節症の直接の原因になります(骨折合併症 白熱講義 347頁)。
骨がつくはずの時期を過ぎてもつかないものを「遷延癒合」、骨がつく働きが止まってしまったものを「偽関節(骨癒合不全)」といいます(標準整形外科学 第14版 730頁)。
何か月たてば偽関節かは一律には決まらず、受傷から6か月とする教科書の記述や、9か月以上たち、直近の3か月で骨がつく傾向がないもの、とする米国食品医薬品局(FDA)の定義が紹介されています。プレートや髄内釘で固定されていると、骨がついていなくても外からはぐらぐら動かないことが多い点にも注意が必要です(骨折合併症 白熱講義 100頁・101頁)。
変形・偽関節の等級の目安
- 偽関節:腕の骨(上腕骨、橈骨と尺骨の両方)や脚の骨(大腿骨、脛骨)の骨幹部などに偽関節が残ったものは8級、そのうえ常に固い装具(硬性補装具)が必要なものは7級です。
- 長い骨の変形:長い骨が15度以上曲がってついたものなどは12級です。
- 脚の短縮:脚が短くなったものは、健側と比べて1センチ以上短ければ13級、3センチ以上なら10級、5センチ以上なら8級です。
- 鎖骨・肋骨・骨盤など:これらの変形は、裸になったときにはっきり分かる程度なら12級で、レントゲンで初めて分かる程度では当たりません。
- 背骨:背骨の圧迫骨折などが画像で確かめられるものは少なくとも11級で、背骨の曲がり(後彎・側彎)が大きいものは8級相当や6級に、背骨の動きが制限されたものは8級などになることがあります(くわしくは首・背中・腰の後遺障害)。
偽関節や変形と同じ所に痛みも残ったときは、どちらか上位の等級だけで認定されます(別表第二、認定基準)。
③痛み・しびれが続く(神経症状)
動きの制限や変形が等級の基準に届かなくても、骨折した所に痛みが残れば、神経症状として等級の対象になります。
認定基準は、「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」を12級、「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」を14級としています(神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準)。
もっとも、自賠責保険の実務では、障害があることを医学的に証明できるものは12級、説明できるにとどまるものは14級とする考え方がとられているといわれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁。首・背中・腰の後遺障害の「14級と12級の分かれ目」)。
- 自賠責保険の実務では、障害があることを医学的に証明できるものとする考え方がとられているといわれる
- 自賠責保険の実務では、医学的に説明できるにとどまるものとする考え方がとられているといわれる

強い痛みと機能障害を起こすRSD(CRPS)も、骨折の合併症の一つです(赤い本 2009年版 下巻 102頁。CRPS(RSD、カウザルギー)について)。
3つの場合で、等級と賠償の目安はどう違う?
| 残った症状 | 等級と別表第二の文言 | 認定基準による目安 | 後遺障害慰謝料(裁判の基準) | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|---|
| 関節の動きの制限 | 12級6号・7号「一上肢(一下肢)の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」 | 健側の4分の3以下 | 290万円 | 14% |
| 関節の動きの制限 | 10級10号・11号「一上肢(一下肢)の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」 | 健側の2分の1以下、人工関節・人工骨頭 | 550万円 | 27% |
| 関節の動きの制限 | 8級6号・7号「一上肢(一下肢)の三大関節中の一関節の用を廃したもの」 | 関節が固まった(強直)など | 830万円 | 45% |
| 骨の変形 | 12級8号「長管骨に変形を残すもの」 | 15度以上曲がってついたものなど | 290万円 | 14% |
| 骨の変形 | 12級5号「鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの」 | 裸になったときにはっきり分かる | 290万円 | 14% |
| 骨の変形 | 11級7号「脊柱に変形を残すもの」 | 背骨の圧迫骨折などが画像で確かめられる(変形が大きければ8級相当・6級) | 420万円 | 20% |
| 骨がつかない | 8級8号・9号「一上肢(一下肢)に偽関節を残すもの」 | 骨幹部などの偽関節 | 830万円 | 45% |
| 骨がつかない | 7級9号・10号「一上肢(一下肢)に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」 | 常に硬性補装具が必要 | 1,000万円 | 56% |
| 痛み・しびれ | 12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」 | 時には強い痛みで、仕事にある程度差し支える | 290万円 | 14% |
| 痛み・しびれ | 14級9号「局部に神経症状を残すもの」 | ほとんどいつも痛みが残る | 110万円 | 5% |
慰謝料は裁判で使われる基準(いわゆる赤い本)の目安で(赤い本 2020年版 上巻 196頁)、労働能力喪失率は自賠責保険の支払基準の表の割合です(同 441頁)。

同じ骨折でも、どれに当たるかで賠償額は大きく変わります。たとえば膝の関節面の骨折(脛骨プラトー骨折)のあと、膝の曲げ伸ばしが健側の2分の1以下なら10級(慰謝料の目安550万円)、4分の3以下なら12級(290万円)に当たります。
角度の制限が基準に届かず痛みだけが残ったときは、12級(290万円)か14級(110万円)に当たるかが問題になり、どちらにも当たらない(非該当)とされることもあります(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。10級と14級とでは、後遺障害慰謝料の目安だけで440万円の差があります。
症状固定の前に、何をそろえておけばいい?
症状固定とは、医学上一般に認められた治療をしても効果が期待できず、残った症状が自然の経過で行き着く最終の状態になったときをいいます(赤い本 2013年版 下巻 8頁・9頁)。
症状固定の日を境に、それまでは治療費・休業損害・入通院慰謝料、そのあとは後遺障害の慰謝料と逸失利益、と請求の項目が分かれます(同 9頁・10頁。症状固定とは何か)。
- 事故骨折。治療とリハビリを続けます
- 治療中治療費・休業損害・入通院慰謝料の対象。この間に、下の資料をそろえます
- 症状
固定治療をしても効果が期待できなくなった時点。ここで請求の項目が分かれます - その後後遺障害の慰謝料と逸失利益の対象
骨折では、次のものを症状固定の前にそろえておきましょう。
症状固定の前にそろえる資料(骨折)
- 画像の写し:事故の直後から最後までのレントゲン・CT・MRIを、病院からCD-Rなどで受け取ります。関節の中の骨折の評価にはCTが役立ち(骨折の画像診断 改訂版 137頁)、まれに、レントゲンでは骨折線がはっきりしない骨折もあります(同 201頁)。診断書の病名だけでは、粉々に折れていたか、関節の中まで折れていたかといった骨折の型は分からないことが多くあります(赤い本 2009年版 下巻 91頁・92頁)。
- 骨がついたかどうかの記録:いつの画像で骨がついたと判断されたか。つかないときは、偽関節の診断と、その後の治療方針。
- 左右両方の関節の角度:けがをした側と健側の両方を、動きの種類ごとに測ってもらいます。リハビリの記録で、角度の改善が止まったことが分かるようにしておきます。
- 骨の曲がり・短縮・ねじれ:左右を比べたレントゲンや、脚の長さの計測。上腕骨のねじれは、左右の上腕骨の全長を撮ったレントゲンなどで確かめる取扱いです(認定基準)。
- 見た目の変形の写真:鎖骨・肋骨・骨盤の変形は、裸になったときに分かるかどうかが基準なので、写真を残します。
- 骨を留めた金属の予定:プレート・髄内釘・スクリューを抜く手術の予定があるか、金属が関節の動きを妨げていないか(次の見出しで説明します)。
- 痛み・しびれの記録:場所、強さ、出る場面(歩く、階段、重い物を持つ、天気など)、仕事や家事で困ること。通院のたびに医師に伝え、カルテに残してもらいます。
プレートは抜くべき? 抜く手術と症状固定の時期

骨折の手術で入れたプレートやスクリュー、髄内釘などの金属は、必ず抜くものではありません。ステンレス製のものは長く体の中にあると腐食することがあるため役目が終われば抜く一方、チタン合金は腐食しにくく体の中での安全性にも優れ、骨を留める金属の多くに使われています(標準整形外科学 第14版 198頁・199頁)。
抜く手術にも、気をつけたい点があります
抜いたあとに骨が再び折れることがあり(標準整形外科学 第14版 728頁・729頁、骨折の治療指針 12頁)、チタン製のものは骨とくっついて抜けにくい、抜くときに新たな骨折を起こすことがある、とも指摘されています(骨折合併症 白熱講義 37頁)。抜くかどうかは、主治医とよく相談して決めることです。
金属を入れたままでも、症状固定にできる?
後遺障害の等級との関係では、認定基準は、骨折部に入れた髄内釘や金属の釘が関節の動きの制限の原因になっている場合は、それを除去するのを待って等級を認定し、原因になっていない場合は、傷が治った時点で認定する、としています。
金属を抜かないと後遺障害が認められない、ということではありません。反対に、金属を入れたまま症状固定にして、あとで抜く手術を受ける場合、症状固定のあとの治療費は一般に認められにくく、支出が相当なときに認められるとされています(赤い本 2020年版 上巻 7頁)。

手術を受けないと決めたときは?
まだ手術などの治療の余地があるのに、体への負担を考えて受けないと決めることもあります。裁判官の講演では、この場合も症状固定を認めたうえで、手術を受けなかった判断の合理性などを、損害の範囲や過失相殺の検討で考慮する方向が示されています(赤い本 2013年版 下巻 16頁〜18頁)。
手術の効果と負担について主治医から受けた説明は、記録に残しておきましょう。
肩・脚・背骨など、部位ごとに詳しく知りたいときは?
部位ごとの詳しい説明
- 肩・腕・手の後遺障害:鎖骨、上腕骨、肘、手首、舟状骨、指の骨折と、関節の角度の測り方
- 骨盤・脚・足の後遺障害:骨盤、大腿骨、脛骨、膝、足首、かかとの骨折と、脚の短縮・偽関節
- 首・背中・腰の後遺障害:背骨の圧迫骨折と、背骨の変形・動きの制限
- 顔(目・耳・鼻・口・歯)の後遺障害:目のまわりや鼻、あごなど顔の骨折と、歯のけが
- 交通事故の後遺障害(けがの部位から探す)
よくある質問
高齢で骨が弱かった(骨粗しょう症)と言われました。賠償は減らされますか。
被害者の体の特徴が損害の発生や拡大に関わったとして賠償額を減らすことを「素因減額」といいます(赤い本 2009年版 下巻 51頁)。裁判官の講演では、骨粗しょう症について、高齢の被害者の裁判例ではおおむね減額されていない傾向が紹介され、同年代の平均を大きく下回るのでなければ減額の理由となる「疾患」とみるべきではなく、加齢そのものを理由に減額はできない、という考え方が示されています。一方、若い方の場合は、疾患にあたるとして減額される傾向もあるとされます(同 57頁・59頁)。
高齢の方の骨折はゆっくり治るため(骨折診療スタンダード 18頁)、治療が長くなることもあります。減額を言われても、そのまま応じずにご相談ください。
「骨がついたので治療は終わり」と、治療費の打ち切りを告げられました。
骨がついたことと、症状固定は同じではありません。症状固定は、治療を続けても良くならない状態になったときです(赤い本 2013年版 下巻 8頁・9頁)。骨がついたあとも、リハビリで関節の動きや筋力が回復していく時期があり、表のとおり、多くの骨折でリハビリの目安は骨がつくまでの期間より長くなっています。
症状固定の時期は、保険会社が一方的に決めるものではありません。裁判では、主治医の判断を基本的に尊重しつつ、症状の推移や治療の内容などから、その判断が合理的かを検討するとされています(同 10頁・11頁)。打ち切りを告げられても、主治医がまだ改善が見込めると考えているなら、その意見をカルテや診断書に残してもらいましょう。対処の方法は交通事故で「治療費打ち切り」に遭った場合の対処方法で説明しています。後遺障害の申請をして等級が認められなかったときは、異議申立てもできます。
参考文献
- 自動車損害賠償保障法施行令 別表第二
- 自賠責保険の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第3
- せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準(平成16年6月4日基発第0604003号)
- 神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準(平成15年8月8日基発第0808002号)
- 骨折の治療指針とリハビリテーション(南江堂)4頁、6頁、12頁、67頁・68頁、78頁、151頁・152頁、210頁、230頁、272頁、284頁、304頁・305頁、330頁、437頁・438頁
- 救急/プライマリ・ケアの骨折診療スタンダード 原著第4版(エルゼビア・ジャパン)18頁、437頁
- 標準整形外科学 第14版(医学書院)198頁・199頁、728頁〜730頁、747頁・748頁
- 渡部欣忍『骨折合併症 白熱講義』(メジカルビュー社)37頁、100頁・101頁、108頁、347頁
- 骨折の画像診断 改訂版(羊土社)137頁、201頁
- 交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版(保険毎日新聞社)192頁
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 7頁、196頁、437頁、441頁
- 同 2013年版 下巻(講演録編)高木健司裁判官「症状固定について」8頁〜11頁、16頁〜18頁
- 同 2009年版 下巻(講演録編)鈴木祐治裁判官「素因減額」51頁、57頁、59頁、加藤義治氏(整形外科医)「下肢骨折の形態と機能障害,その問題点」91頁・92頁、100頁、102頁



