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後遺障害12級とは|14の号の症状と慰謝料・障害者手帳との違い

執筆 弁護士 鈴木晶(神奈川県弁護士会所属) 公開

この記事のポイント

  1. 12級の後遺障害慰謝料は、裁判の基準で290万円が目安です。自賠責保険の基準では94万円で、どの基準で計算した額かで大きく変わります。
  2. 12級には、目・歯・耳・骨の変形・関節・指・痛みやしびれ・傷あとまで14の号があり、号によって逸失利益の期間の考え方が違います。
  3. 12級が認められても、身体障害者手帳が自動で交付されるわけではありません。示談の提示が届いたら、慰謝料・期間・喪失率などを確かめます。
首をかしげる男の子のイラスト
ご相談者
12級と認められました。慰謝料や逸失利益は、どのくらいになるのでしょう?
説明する弁護士のイラスト
弁護士
慰謝料は、裁判の基準なら290万円が目安で、これに逸失利益が加わります。ただ、12級には14の号があり、号によって逸失利益の期間の考え方が違います。順番に説明しますね。

 12級には、目・歯・耳・骨の変形・関節の動き・指・痛みやしびれ・傷あとまで、14の号があります。号によって、逸失利益が67歳まで認められやすいか、期間を区切られやすいか、仕事への影響そのものが争われやすいかが違います。

 この頁では、交通事故の被害者側の弁護士が、14の号を部位別の表にし、号ごとの逸失利益の考え方と、身体障害者手帳との違いを、法令・認定基準・書籍を出典に説明します。

12級の慰謝料はいくら? 裁判の基準で290万円が目安

 後遺障害12級の後遺障害慰謝料は、裁判で使われる基準(いわゆる赤い本の基準。弁護士基準と呼ばれることもあります)で290万円が目安です(赤い本 2020年版 上巻 196頁)。これに、将来の収入の減少分(逸失利益)が加わります。

 12級の労働能力喪失率は14%で、逸失利益は、事故の前の収入と、労働能力が下がる期間から計算します(同 99頁、441頁)。

12級の後遺障害慰謝料の目安12級の後遺障害慰謝料は、裁判の基準で290万円、自賠責保険の基準で94万円。参考として、自賠責保険から支払われる後遺障害分の上限は、慰謝料と逸失利益などを合わせて224万円。12級の後遺障害慰謝料(目安)裁判の基準(赤い本)290万円自賠責保険の基準94万円参考:自賠責保険の後遺障害分の上限(慰謝料と逸失利益などの合計)224万円
図 同じ12級でも、どの基準で計算するかで慰謝料は大きく変わる(裁判の基準では、これに逸失利益が加わる)

どの基準で計算した額かを確かめる

 自賠責保険の支払基準では、12級の慰謝料は94万円、自賠責保険から支払われる後遺障害分の上限は224万円ですから(支払基準 第1・第3、自動車損害賠償保障法施行令 別表第二)、どの基準で計算した額かで、受け取る額は大きく変わります。

裁判の基準と自賠責保険の違い

項目裁判の基準自賠責保険
後遺障害の慰謝料290万円94万円
労働能力喪失率14%を参考に、仕事の内容や年齢などから判断14%
労働能力が下がる期間原則として症状固定の日から67歳まで(むちうちは10年程度に区切る例が多い)症状固定の時の年齢に応じた就労可能年数
支払の上限なし(相手と相手の任意保険に請求)224万円(慰謝料と逸失利益などの合計)

 裁判の基準は赤い本 2020年版 上巻 99頁・196頁、自賠責保険は、令和2年4月1日以降の事故に適用される支払基準(第1・第3)と、自動車損害賠償保障法施行令の別表第二によります。

 年収と年齢を当てはめた計算の例は、交通事故の後遺障害(けがの部位から探す)の「計算の例」に載せています。慰謝料の基準の違いは後遺障害の慰謝料計算基準の比較と計算方法、逸失利益の計算は交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法をご覧ください。

12級にはどんな後遺障害がある? 14の号を部位別に

 12級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第二で、1号から14号までの14の号に分かれています。自賠責保険は、原則として労災保険の障害等級の認定基準に準じて等級を認定します(自賠責保険の支払基準 第3)。

12級の号と体の部位目とまぶたは1号・2号、歯は3号、耳は4号、鎖骨・骨盤などの変形は5号、肩・肘・手首の関節は6号、股・膝・足首の関節は7号、腕や脚の長い骨の変形は8号、手の指は9号・10号、足の指は11号・12号、頭・顔・首の傷あとは14号。痛み・しびれの13号は、体のどこでも対象になる。1・2号目・まぶた3号歯5号鎖骨・骨盤など6号肩・肘・手首9・10号手の指14号傷あと(頭・顔・首)4号耳8号腕・脚の長い骨7号股・膝・足首11・12号足の指13号 痛み・しびれは、体のどこでも
図 12級の14の号と体の部位(詳しい中身は下の表のとおり)

 表の「別表第二の文言」は政令の文言です(数字は算用数字にし、かなの表記を今の書き方に改めました)。「目安」は、別表の備考、厚生労働省の認定基準(以下「労災の認定基準」)などによります。

号・部位別表第二の文言目安
1号
目
1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの片方の目のピントを合わせる力や、目を動かせる範囲が大きく落ちたもの
2号
目
1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの片方のまぶたの開け閉めがうまくできないもの。顔面神経麻痺でまぶたが閉じなくなったときも、まぶたの障害として扱う
3号
歯
7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの失った歯や、歯ぐきから出ている部分の4分の3以上が欠けた歯などを、冠やブリッジなどで補った歯が7本以上
4号
耳
1耳の耳殻の大部分を欠損したもの片方の耳(耳介)の大部分を失ったもの。傷あと(外貌の醜状)としての等級のほうが上なら、そちらで認定する
5号
鎖骨・肋骨・骨盤など
鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの裸になったときに変形がはっきり分かるもの。レントゲンで初めて分かる程度のものは当たらない
6号
肩・肘・手首
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの3つの関節のどれか1つの動く範囲が、けがをしていない側の4分の3以下
7号
股・膝・足首
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの3つの関節のどれか1つの動く範囲が、けがをしていない側の4分の3以下
8号
腕・脚の長い骨
長管骨に変形を残すもの外から分かる程度(15度以上)に曲がってついたものなど。よい向きで短くならずについたときは、つなぎ目が太くなっても当たらない
9号
手の指
1手のこ指を失ったもの小指を第2関節(近位指節間関節)か、それより付け根側で失ったもの
10号
手の指
1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したものどれか1本の指先の骨の半分以上を失ったもの、付け根の関節か第2関節の動く範囲がけがをしていない側の2分の1以下になったものなど
11号
足の指
1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの足の指を付け根から全部失ったもの
12号
足の指
1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの親指(第1の足指)か、ほかの4本すべてについて、先の部分を失ったもの(親指は先の骨の半分以上、ほかの指は第1関節か、それより付け根側)や、関節の動きが大きく制限されたもの
13号
体のどこでも
局部に頑固な神経症状を残すもの痛みやしびれが残り、その原因を画像や神経の検査で医学的に証明できるもの
14号
頭・顔・首
外貌に醜状を残すもの顔の10円硬貨大以上の傷あとか長さ3センチメートル以上の線状の傷あと、頭や首の鶏卵大以上の傷あとなどで、人目につく程度以上のもの

 目安の出典は、2号・4号・14号が「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準」、3号が交通事故裁判における歯科領域の傷害・後遺障害 28頁、5号〜8号と10号が「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」、9号〜12号が別表第二の備考二〜五です。

表にない障害も「12級相当」になることがある

 表にない障害でも、表の障害に相当するものは、その等級として扱われます(別表第二 備考六)。たとえば、口が開きにくいためにかむのに相当の時間がかかるもの、味がまったく分からないもの(味覚脱失)は、12級相当とされています(交通事故裁判における歯科領域の傷害・後遺障害 31頁・32頁)。

部位ごとの詳しい頁

関節・変形・指・歯・傷あとの号は、何で決まる?

関節の動きの制限(6号・7号)

 関節の等級は、けがをした側の動く範囲を、けがをしていない側と比べて決めます。4分の3以下なら12級、2分の1以下なら10級、関節が固まって動かないもの(強直)などは8級です(労災の認定基準)。

関節の動く範囲と等級けがをした側の動く範囲を、けがをしていない側と比べる。4分の3以下なら12級、2分の1以下なら10級。関節が固まって動かないもの(強直)などは8級。たとえば、けがをしていない側の膝が130度なら、97.5度以下で12級、65度以下で10級。けがをしていない側と比べた、動く範囲02分の14分の3同じ10級12級当たらない65度97.5度130度例:けがをしていない側の膝が130度の場合関節が固まって動かないもの(強直)などは8級
図 関節の等級は、けがをしていない側と比べた割合で決まる(膝の例は、手帳の節の表と同じ数字です)

診断書には、左右両方の角度を

 わずかな角度の違いで12級に当たるかどうかが分かれるため、後遺障害診断書には左右両方の角度を正確に書いてもらうことが大切です。測り方は肩・腕・手の後遺障害と骨盤・脚・足の後遺障害で、例を挙げて説明しています。

骨の変形(5号・8号)

腕を三角巾で吊る男の子のイラスト
鎖骨や骨盤などの変形(5号)は、裸になったときに見て分かることが必要です。変形の分かる写真を残しておくと役立ちます。

 鎖骨の変形と肩の動きの制限が両方残ったときは、別の系列の障害として併合します(労災の認定基準)。自賠責保険では、12級が2つあれば11級として扱われます(自動車損害賠償保障法施行令2条1項3号ニ)。

 腕や脚の長い骨の変形(8号)には、曲がり方のほか、骨の端の部分などで骨がつかないまま残った場合(ゆ合不全)の一部も含まれます(労災の認定基準)。

歯・目・耳・傷あと(1号〜4号・14号)

 歯の障害は、等級に当たるかどうかよりも、労働能力を失ったかどうかが争いになることが多い障害です(交通事故裁判における歯科領域の傷害・後遺障害 35頁)。

 傷あとは、眉毛や髪に隠れる部分は数えません(外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準)。目や耳の障害は、検査の結果で程度を判断します。必要な検査は顔(目・耳・鼻・口・歯)の後遺障害と傷あとの後遺障害をご覧ください。

12級13号(痛み・しびれ)は、14級とどこで分かれる?

首を痛がる女性のイラスト
ご相談者
首の痛みやしびれが続いています。12級と14級は、どこで分かれるのですか?

 13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」は、むちうちや椎間板ヘルニアのほか、骨折した所の痛み、神経のけがによるしびれなどでも問題になります。

 労災の認定基準の説明では、12級は、ふだんの仕事はでき、職種の制限もないが、ときに仕事に支障が出る場合があるもので、14級9号「局部に神経症状を残すもの」はそれより軽いものとされています(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。

 自賠責保険の実務では、障害があることを医学的に証明できるものが12級、医学的に説明できるものが14級、という考え方がとられているといわれます(同 192頁)。

 むちうちのうち神経の根元が圧迫される型について、裁判例では、画像で神経の圧迫が確かめられ、その神経が受け持つ場所に感覚の異常などの検査の結果が出ていると12級と認められやすく、画像の圧迫と、しびれなどが出ている場所が合わないときは14級にとどまりやすいとされています(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 200頁)。

12級13号
「局部に頑固な神経症状を残すもの」
  • 障害があることを医学的に証明できるもの
  • ふだんの仕事はでき、職種の制限もないが、ときに仕事に支障が出る場合がある
  • 神経の根元が圧迫される型のむちうちの裁判例では、画像の圧迫と、その神経が受け持つ場所の検査の結果が合うと、12級と認められやすい
14級9号
「局部に神経症状を残すもの」
  • 障害があることを医学的に説明できるもの
  • 12級より軽いもの
  • 同じ型の裁判例では、画像の圧迫と、しびれなどが出ている場所が合わないときは、14級にとどまりやすい

事故の前からの変化がかかわるとき

 事故の前からの椎間板の変化などを通して12級が認められるときは、証明はしやすい一方で、持病などを理由とする減額(素因減額)がされやすい傾向があります(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 201頁)。

 14級と12級の分かれ目と必要な検査は、首・背中・腰の後遺障害と「むち打ち」で後遺障害認定を取得する方法 総まとめで詳しく説明しています。

逸失利益の期間は67歳まで? 号によって変わる

 労働能力が下がる期間は、原則として症状固定の日から67歳までです。ただし、むちうちの場合は、12級で10年程度に区切る例が多く見られます(赤い本 2020年版 上巻 99頁)。

 むちうち以外の原因による12級の神経症状(13号)でも、相手の側から同じように期間を区切る主張をされることが珍しくありません(赤い本 2007年版 下巻 75頁)。

「神経症状だから5年〜10年」とは限らない

 赤い本の講演で裁判官は、むちうち以外の原因による神経症状について、神経症状だというだけで直ちに5年から10年に区切られると論じるのは慎重であるべきだと述べています(赤い本 2007年版 下巻 83頁)。

号によって変わる、労働能力が下がる期間関節(6号・7号)や指(9号〜12号)は、原則どおり症状固定から67歳まで。13号のうち骨折のあとの痛みや神経のけがなどは、区切る例も区切らない例もあり、事案ごとに決まる。13号のむちうちは、10年程度に区切る例が多い。症状固定67歳関節(6・7号)・指(9〜12号)原則どおり67歳まで13号(骨折のあとの痛み、神経のけがなど)区切る例も、区切らない例もある(事案ごと)13号(むちうち)10年程度に区切る例が多い
図 号によって、期間の考え方が違う(棒の長さはイメージです)

 号ごとの考え方をまとめると、次のとおりです。

号期間・喪失率の考え方
6号・7号(関節)、9号〜12号(指)原則どおり67歳まで。手足の一部を失ったもののように、体の組織に残る障害(器質的な障害)は回復することが考えにくい、とする学説が紹介されている(赤い本 2020年版 上巻 99頁、2007年版 下巻 76頁)
13号(骨折のあとの痛み、神経のけがなど)10年以下に区切った裁判例も、区切らずに働ける年齢まで認めた裁判例もある。痛みが中心の症状では5年から10年に区切るのが相当な場合が多いとしつつ、動きの障害が残る場合は区切ることに慎重であるべきとされる。脳や脊髄のけがに伴う12級は区切らないのを原則とする考え方が示され、そのように原因からみて改善が容易でないと考えられる神経症状は、区切ることに慎重であるべきとされる。5年から10年に区切るのが相当でない場合も、期間は年齢・職業・障害の程度をみて事案ごとに決まり、高齢の方ほど働ける年齢の終わりまで認められやすく、若い方ほど認められにくいとされる(赤い本 2007年版 下巻 80頁〜82頁)
13号(むちうち)10年程度に区切る例が多い(赤い本 2020年版 上巻 99頁)
5号(鎖骨・骨盤などの変形)鎖骨の変形や、骨を採ったあとの骨盤の変形では、労働能力を失ったといえるか(表の喪失率より下げるか)が問題になることが多い(赤い本 2006年版 下巻 177頁)
3号(歯)労働能力を失ったかどうかが争点になることが多い(交通事故裁判における歯科領域の傷害・後遺障害 35頁)
14号(傷あと)仕事に直接影響するおそれがあれば逸失利益を認め、間接的な影響にとどまるときは慰謝料を増やして考慮する、という整理が紹介されている。逸失利益が認められた例では、67歳までとするものが多いとも紹介されている(赤い本 2020年版 下巻 48頁)

 表にない号も、期間の原則は67歳までです。どの号でも、14%という喪失率は目安で、職業、年齢、後遺障害の部位や程度、事故の前後の働き方などを総合して判断されます(赤い本 2020年版 上巻 99頁)。

×の札を持つ弁護士のイラスト
弁護士
示談の提示で期間や喪失率が区切られていたら、その理由が号の性質に合っているかを確かめます。関節や指の障害なのに、5年や10年で区切られていないかを見てください。

12級なら身体障害者手帳ももらえる? 行政のサービスとの違い

法律書と木槌のイラスト
自賠責保険の後遺障害の等級と、身体障害者手帳の等級は、別の法律に基づく別の制度です。手帳は、都道府県知事が定めた医師の診断書を添えて申請し、障害が身体障害者福祉法の別表に当たると認められたときに交付されます(身体障害者福祉法15条)。

 交付の事務は、都道府県・指定都市・中核市が行っています(新訂第五版 身体障害認定基準及び認定要領 2頁)。12級が認められても、手帳が自動で交付されるわけではありません。

比べる点自賠責保険の後遺障害等級身体障害者手帳
決まり自動車損害賠償保障法施行令 別表第一・第二身体障害者福祉法 別表、同法施行規則 別表第5号
目的事故による損害の賠償の額を決める障害のある方の自立と社会参加を援助する(同法1条)
等級1級〜14級1級〜7級。7級の障害1つだけでは手帳の対象にならない(2つ以上あれば6級)
関節の動きけがをしていない側と比べた割合(4分の3以下で12級)関節が動く角度そのもの(膝なら90度以下で7級、30度以下で5級)
痛み・しびれ、傷あと、骨の変形それぞれ等級の対象(13号・14号・5号・8号)障害の種類として挙げられていない(手足や体の動きに障害が出ていれば、肢体不自由として程度を判断する)
目ピント合わせ、目の動き、まぶたも対象(1号・2号)視力と視野で判断する

 手帳の7級の扱いは同書 105頁・342頁、関節の角度は同書 341頁・346頁、手帳の対象となる障害の種類は身体障害者福祉法の別表によります。

例:膝の動く範囲で比べると

 たとえば、けがをしていない側の膝が130度まで動く方の場合、けがをした膝の動く範囲(曲げ伸ばしの合計)によって、2つの制度では次のように分かれます。

膝が動く範囲自賠責保険の等級身体障害者手帳
100度当たらない(97.5度を超える)当たらない
95度12級7号当たらない(90度を超える)
90度12級7号7級相当(これだけでは交付されない)
60度10級11号(65度以下)7級相当(これだけでは交付されない)
30度10級11号5級

 手帳の基準では、角度のほか、筋力や歩ける距離などでも判断されます(同書 345頁・346頁)。

2つの制度は、別々に判断されます

 このように、12級に当たっても手帳の基準には届かないことがあり、反対に手帳の等級が付いても、自賠責保険の等級がそれで決まるわけではありません。手帳の申請や、手帳で受けられるサービスの内容は、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口で確かめてください。

示談の提示が届いたら、どこを確かめる?

書類を読んで困る女性のイラスト
ご相談者
示談の提示が届きました。この金額でよいのか、自分では分からなくて……。

 12級が認められたあと、相手の保険会社から示談の提示が届いたら、次の点を確かめてください。

示談の提示で確かめる8つの点

  • 慰謝料:後遺障害の慰謝料が、自賠責保険の94万円や、それに近い額になっていないか(裁判の基準の目安は290万円)
  • 期間:関節や指の障害なのに、5年や10年で区切られていないか。骨折のあとの痛みを、むちうちと同じ扱いにされていないか
  • 喪失率:14%より下げられていないか。下げるなら、その理由(変形だけ、歯だけ、傷あとだけなど)が示されているか
  • 収入:原則は事故の前の実際の収入。実際の収入が平均賃金より低くても、将来、平均賃金程度の収入を得られる見込みがあれば、平均賃金を使うことがある(赤い本 2020年版 上巻 99頁)
  • 併合:12級が2つ以上ある、または12級と13級があるのに、12級のまま計算されていないか
  • 減額:事故の前からの持病を理由とする減額(素因減額)がされていないか。されているなら、その根拠は何か
  • 差し引き:自賠責保険から先に受け取った額として差し引かれる額が、実際に受け取った額と合っているか
  • 過失割合:示された過失割合が、事故の形に合っているか(交通事故の過失割合)
○の札を持つ弁護士のイラスト
弁護士
12級が認められなかった、または思っていたより低い等級だったときは、後遺障害の異議申立てで判断のやり直しを求める方法があります。

よくある質問

12級が認められれば、身体障害者手帳ももらえますか。

 12級だから手帳がもらえる、とは限りません。手帳は、指定された医師の診断書を添えて別に申請し、身体障害者福祉法の基準で審査されます。上の膝の例のように、12級に当たっても手帳の基準に届かないことがあります。

12級と14級では、何が違いますか。

 慰謝料の目安は12級で290万円、14級で110万円、労働能力喪失率は14%と5%です(赤い本 2020年版 上巻 196頁、441頁)。痛みやしびれでは、自賠責保険の実務で、医学的に証明できるものが12級13号、医学的に説明できるものが14級9号と区別されているといわれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。14級の計算は後遺障害14級の慰謝料と逸失利益の計算方法で説明しています。

自賠責保険からは、12級でいくら支払われますか。

 後遺障害分の上限は224万円で、慰謝料と逸失利益などを合わせた額です(自動車損害賠償保障法施行令 別表第二、支払基準 第1・第3)。このうち慰謝料は94万円です。上限を超える損害は、相手や相手の任意保険に請求します。

12級が2つ認められたら、どうなりますか。

 自賠責保険では、13級以上の障害が2つ以上あるときは、重いほうの等級を繰り上げます。繰り上げる幅は、5級以上の障害が2つ以上なら3級、8級以上の障害が2つ以上なら2級、それ以外(12級が2つなど)は1級です。1級繰り上げた等級の額が、それぞれの等級の額を足した額より多くなるときは、足した額にとどまります(自動車損害賠償保障法施行令2条1項3号ロ〜ニ)。12級が2つなら11級で、上限は331万円です(同令 別表第二)。12級と14級の組み合わせなら繰り上げず、12級のままです(同令2条1項3号ホ)。

仕事中や通勤中の事故で12級になったときは、労災保険からも支払われますか。

 労災保険からは、12級の一時金として、給付基礎日額の156日分が支給されます(労働者災害補償保険法 別表第二)。ただし、同じ損害について相手から賠償を受けたときは、その額の限度で労災保険の給付がされないことがあるなど、二重には受け取れない調整があります(同法12条の4)。使い方は交通事故で労災保険は使わない方が良いの?で説明しています。

参考文献

  • 自動車損害賠償保障法施行令 2条、別表第二(備考を含む)
  • 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第1・第3
  • 身体障害者福祉法 1条、15条、別表
  • 労働者災害補償保険法 12条の4、別表第二
  • 厚生労働省労働基準局長通知「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」(平成16年6月4日基発第0604003号)
  • 厚生労働省労働基準局長通知「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」(平成23年2月1日基発0201第2号)
  • 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 99頁、196頁、441頁
  • 同 下巻(講演録編)2006年版 蛭川明彦「労働能力喪失の認定について」177頁
  • 同 下巻(講演録編)2007年版 小林邦夫「むち打ち症以外の原因による後遺障害等級12級又は14級に該当する神経症状と労働能力喪失期間」75頁〜83頁
  • 同 下巻(講演録編)2020年版 綿貫義昌「外貌醜状に関する逸失利益,慰謝料をめぐる諸問題」47頁・48頁
  • 交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版(保険毎日新聞社)192頁、200頁、201頁
  • 交通事故裁判における歯科領域の傷害・後遺障害 28頁、31頁・32頁、35頁
  • 新訂第五版 身体障害認定基準及び認定要領 解釈と運用(中央法規出版)2頁、105頁、341頁・342頁、345頁・346頁
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この記事を書いた弁護士
鈴木 晶神奈川県弁護士会所属・横浜クレヨン法律事務所

 交通事故の被害に遭われた方の、示談交渉から紛争処理センター、訴訟までを担当しています。

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