この記事のポイント
- 後遺障害の等級・過失割合・損害の額が争いになる交通事故の事件について、弁護士の先生から共同受任や事件のご紹介のご相談をお受けしています。
- ご紹介いただいた事件は、当事務所がご本人と委任契約を結びます。紹介の謝礼はお支払いせず、お受け取りもしません。
- まず依頼者の方と相手方のお名前をお知らせください。利益相反がないことを確かめてから、資料を拝見します。
当事務所は、交通事故の損害賠償に力を入れて取り組んでいます。後遺障害の等級や過失割合が争いになる事件では、診療録と画像、刑事記録を読み込み、医学的な所見や事故の態様を主張と証拠に組み立てる作業が欠かせません。こうした事件について、弁護士の先生から、共同受任や事件のご紹介のご相談をお受けしています。
この頁では、共同受任とご紹介の進め方と、当事務所が扱っている後遺障害・過失割合・損害の論点を、裁判所と実務書の考え方にそってまとめました。
共同受任と事件のご紹介は、どう違う?


- 依頼者の方との連絡、医学的な資料の検討、書面の起案、期日への出頭などの分担は、先生とご相談のうえで事件ごとに決めます。
- 示談交渉、自賠責保険の手続、訴訟のどの段階からでもご相談ください。
- 当事務所がご本人から直接お話を伺い、ご本人と委任契約を結びます。
- 事件の内容は弁護士の守秘義務の対象になるため(弁護士法23条)、その後の経過を先生にお伝えできるのは、ご本人の了解がある範囲に限られます。

ご相談は、どう進む?
ご相談の際は、まず依頼者の方と相手方(加害者と保険会社)のお名前をお知らせください。利益相反がないことを確かめてから、資料を拝見します。
遠方の裁判所の事件でも
遠方の裁判所の事件でも、裁判所が相当と認めれば、当事者の意見を聴いたうえで、口頭弁論の期日はウェブ会議で、弁論準備手続の期日は電話会議などで行うことができます(民事訴訟法87条の2第1項、170条3項)。
どんな事件をお受けしている?



後遺障害の等級は、自賠責保険と訴訟でどう違う?
後遺障害の等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第一・別表第二に定められ、自賠責保険では、原則として労災保険の障害等級認定基準に準じて認定されます(自賠責保険の支払基準。赤い本 2020年版 上巻 437頁)。主な論点について、自賠責保険と訴訟での扱いを並べると次のとおりです。
| 論点 | 自賠責保険での扱い | 訴訟での扱い |
|---|---|---|
| 痛み・しびれ(別表第二 12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級9号「局部に神経症状を残すもの」) | 12級は障害の存在が医学的に証明できるもの、14級は医学的に説明可能なもの、という考え方で区別されるといわれる(交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕192頁) | 同じ区別に準じた判断が多いが、症状に対してどの所見がどこまでそろうかが問われ、自賠責保険で14級や非該当とされたものを12級とした例もかなりある(同 193頁、196頁・197頁) |
| 高次脳機能障害(別表第一 1級1号・2級1号、別表第二 3級3号・5級2号・7級4号・9級10号。神経系統の機能又は精神の障害) | 脳の受傷を裏付ける画像、一定程度の意識障害、認知・行動などの異常な傾向の3つを総合し、とくに画像を重く見る(Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償実務 40頁・45頁) | 脳室の拡大・脳の萎縮が画像にあれば、ほとんどの裁判例で肯定。局在性の損傷だけのときは判断が分かれ、CT・MRIに所見がないのに肯定されるのは、近時は非常にまれ(同 84頁〜86頁) |
| 事故の前からの変化(素因) | 素因減額の手法がないため、経年性の変化の影響が明らかだと、症状に見合う等級にならないことがある(交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕194頁) | 事故をきっかけに症状が出たり重くなったりしたといえれば、因果関係まで否定することは少なく、事故前からの変化が影響した割合だけ賠償額を減らす(素因減額)ことが多い(同 194頁・195頁) |
| 等級認定の位置づけ | 大量の請求を早く公平に処理するため、書面の審査が中心で、定型的・画一的に行われる(同 193頁・194頁) | 認定に拘束されず、証拠から自由な心証で判断する(民事訴訟法247条)。認定があれば、特段の事情がない限り、その等級に見合う喪失率と慰謝料は一応立証されたとされ、それを超える等級を主張する側が根拠を十分に主張・立証すべきとされる(別冊判例タイムズ38号 11頁・12頁) |

12級を主張するには、何を確かめる?
神経学的検査の所見は、医師の習熟度や検査を受ける人の意思に左右されうるため、評価が分かれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕196頁)。
画像に神経の圧迫があっても、14級にとどまることがある
画像で神経の圧迫が認められても、しびれなどの部位や神経学的な異常が、圧迫された神経の支配領域と合わなければ、14級にとどまりやすいとされます(交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕200頁)。
12級を主張するには、画像上の神経の圧迫の高さ、腱反射・筋力・知覚の異常の範囲、症状の部位が互いに合っているかを、診療録と画像で確かめておく必要があります。
高次脳機能障害は、何で立証する?
自賠責保険では、意識障害の有無・程度・持続時間と、外傷後およそ3か月以内に完成する脳室の拡大・びまん性の脳萎縮などの画像所見がポイントとされています(Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償実務 41頁・42頁)。
初診時に頭部外傷の診断があり、JCSで2桁〜3桁・GCSで12点以下の意識障害が6時間以上、または健忘やJCSで1桁・GCSで13〜14点の軽い意識障害が1週間以上続いたことが確認できる事案は、自賠責保険(共済)審査会で、より慎重に検討される扱いです(同 43頁)。
そろえる資料の基本
- 脳の画像
- 初診の病院の経過の診断書
- 「頭部外傷後の意識障害についての所見」
- 主治医の「神経系統の障害に関する医学的意見」
- ご家族による「日常生活状況報告」
これらをそろえることが基本になります(同 43頁・44頁、46頁)。

CT・MRIに異常がないとき
CT・MRIに異常がないのに、SPECTや拡散テンソル画像などの所見を根拠に、脳に器質的な損傷があると主張しても、裁判例では認められないことが多いとされます(Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償実務 81頁〜83頁、87頁)。
神経心理学的検査の結果は、障害の有無の判断ではさほど重視されず、障害が認められたあとの等級の評価で参考にされることが多いとされます(同 87頁)。
異議申立てを続ける? それとも訴訟?
自賠責保険は、被害者の過失が7割以上の場合に限って減額し(最大5割)、事故との因果関係の判断が難しい後遺障害なども5割の減額で支払うなど、被害者に有利に扱います。
訴訟が係属すると、この扱いがされないことがある
損害保険料率算出機構は、訴訟が係属すると裁判所の判断を優先し、この扱いをしなかったり認定を保留したりすることがあるため、大きな過失相殺や因果関係の争いが見込まれる事件では、提訴前に被害者請求(自動車損害賠償保障法16条1項)を済ませておくほうが有利な場合が多いとされます(別冊判例タイムズ38号 2頁)。
訴訟の前に等級の認定を受けておけば、等級認定票を出すことで医学的な事項を明らかにする負担が軽くなり、認定が主張と違っても、どの点が問題かが分かって争点を早く絞れます(損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)2020年版 44頁)。

また、診療録の送付嘱託は争点を明らかにしたうえで必要なものに絞るべきとされ、東京地裁の交通部では、鑑定を申し立てる例そのものが少なく、採用されることはまれとされます(別冊判例タイムズ38号 23頁)。手続の流れは後遺障害の異議申立てで説明しています。
過失割合の争いでは、何を押さえる?
誰が何を主張・立証する?
- 民法709条で請求するときの、加害者の過失
- 運転者でも所有名義人でもない者に自賠法3条で請求するときの運行供用者性(事実上)
- 事故の態様(自賠法3条による場合も、具体的に主張するのが妥当とされる)
- 自賠法3条ただし書の免責の事実
- 過失相殺(民法722条2項)の事実
- 泥棒運転などで運行供用者性を争うときの事実(被告の側が挙証責任を負うことが多いとされる)
人身損害を自動車損害賠償保障法(自賠法)3条で請求するときは、運行供用者の側が、自己と運転者が運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意・過失があったこと、自動車に構造上の欠陥・機能の障害がなかったことを証明しない限り、責任を免れません(同条ただし書)。民法709条で請求するときは、加害者の過失を請求する側で主張・立証します。
どちらを責任原因とするかで相手方の認否や主張も変わるため、訴状で明確にすべきとされ、自賠法3条の責任は人的損害だけが対象です(別冊判例タイムズ38号 11頁)。
免責や過失相殺(民法722条2項)の事実の挙証責任は被告の側にあると解されています(同 21頁)。運行供用者性については、運転者でも所有名義人でもない者に自賠法3条で請求するときは請求する側が事実上主張・立証すべきとされる一方(同 11頁)、泥棒運転などで運行供用者性を争うときは被告の側が挙証責任を負うことが多いとされます(同 21頁)。
もっとも、請求する側も、自賠法3条による場合を含めて事故の態様を具体的に主張するのが妥当とされ(同 10頁)、その主張は過失相殺の判断の材料にもなります。どこまで主張するかは交通事故の過失割合(過失相殺)の「立証責任」と主張設計で検討しています。
刑事記録は、どこに申請する?

刑事記録は事故の態様を示す直接的で有力な証拠とされ、当事者の説明だけで提訴したあと、刑事手続では全く異なる供述をしていたと分かる例もあるため、提訴前に入手して検討しておくべきとされます。保存期間を過ぎると入手できません(別冊判例タイムズ38号 5頁)。取り寄せ方は、刑事手続の段階によって分かれます(損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)2024年版 288頁)。
- 不起訴:実況見分調書などの客観的な証拠は、検察庁に閲覧・謄写を申請します(代理人としての申請か、弁護士法23条の2の照会)。供述調書は、民事裁判所からの送付嘱託でも、結論を直接左右する争点のほぼ唯一の証拠で、供述した人の死亡・所在不明などで法廷の供述が得られないか、証言と実質的に食い違う場合などに限って開示されます(別冊判例タイムズ38号 6頁)。
- 起訴され、刑事裁判が続いている:第1回公判期日のあと、被害者等や委託を受けた弁護士が、刑事事件の係属する裁判所に閲覧・謄写を申し出ます(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条1項)。
- 刑事裁判の確定後:何人も訴訟記録を閲覧でき(刑事訴訟法53条1項)、検察庁に申請します。
- 少年事件:審判開始の決定のあと、家庭裁判所に閲覧・謄写を申し出ます(少年法5条の2第1項)。
- 物損事故として処理された事故:警察署の物件事故報告書を、弁護士法23条の2の照会で取り寄せます。
提訴後は、上の5つの段階のいずれでも、記録を持つ検察庁・裁判所・警察署への文書送付嘱託(民事訴訟法226条)を申し立てる方法があります。一方、捜査が続いている間は、記録はふつう開示されません(損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)2024年版 288頁)。
不起訴記録については、被害者の側が損害賠償の請求のために求める場合、実況見分調書と信号機のサイクル表は原則として閲覧・謄写が認められ、立会人の指示説明の部分は供述調書に準じて扱われる運用が紹介されています(同 290頁〜292頁)。
提訴の時点でまだ入手していなければ、第1回口頭弁論期日の前でも送付嘱託を申し立てるのが望ましいとされます(別冊判例タイムズ38号 10頁)。
基準にない形の事故は、どう組み立てる?

そうした事故では、基準を参考にしながら、道路交通法上の優先関係と交通弱者の保護という基本的な考え方と、近い裁判例から割合を組み立てます(同 3頁、5頁)。
損害の額では、どこが争いになる?
- むち打ち症の12級:10年程度
- むち打ち症の14級:5年程度
計算例:過失相殺と既払金は、どの順で差し引く?
過失相殺は、自賠責保険・任意保険・労災保険などからの既払分も含めた損害の全体に対して行い、そのあとで既払額を差し引きます。健康保険の給付は、多くの裁判例で先に差し引いてから過失相殺をするとされ、保険の実務も同じです(別冊判例タイムズ38号 21頁)。
治療費200万円を含む損害1,000万円、被害者の過失30%の事件で比べます。
| 計算の順序 | 治療費を相手の保険会社が病院に払った場合 | 健康保険を使った場合(健康保険140万円、本人60万円) |
|---|---|---|
| 過失相殺の前に差し引く額 | なし | 健康保険の給付 140万円 |
| 過失相殺の対象 | 1,000万円 | 860万円 |
| 過失相殺のあと(70%) | 700万円 | 602万円 |
| 過失相殺のあとに差し引く既払額 | 治療費 200万円 | なし |
| これから請求できる額 | 500万円 | 602万円 |
| 本人の手元に残る額 | 500万円 | 542万円(窓口で払った60万円を除く) |
健康保険が負担した140万円には過失相殺がかからないため、手元に残る額が42万円(140万円の30%)多くなります。
既払額は、費目を分けて主張・立証を
既払額の主張・立証がないと、裁判所が把握できた範囲の損害にしか過失相殺ができず、被告の側が不利になります。また、給付の中には埋め合わせる損害の費目が限られるものもあるため、既払額は費目を分けて主張し、証拠を出す必要があるとされています(別冊判例タイムズ38号 21頁)。
ご相談の際は、どんな資料を送ればよい?
お送りいただきたい資料
- 交通事故証明書と、事故の状況が分かる資料(刑事記録、ドライブレコーダーの映像、車両の写真)
- 診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書と、画像のデータ
- 自賠責保険の認定の結果と理由が書かれた書面(異議申立てをしていれば、その申立書と添付資料)
- 保険会社の提示の内訳と、既払額が分かる資料
- 訴訟中の事件では、訴状、準備書面、書証の写し
資料をお送りいただく際は、依頼者の方の了解を得てください。
こんなときはご相談ください

ひとつでも当てはまったら
- 自賠責保険で非該当や14級とされたが、画像と神経学的所見からみて12級に当たると考えている
- 高次脳機能障害が疑われるのに、画像の所見が乏しい
- 異議申立てを続けるか、訴訟で争うかを判断したい
- 事故の態様が争いになり、刑事記録の読み込みに手間がかかる
- 別冊判例タイムズ38号の基準にない形の事故で、過失割合の主張を組み立てたい
- 利益相反などでご自身では受けられない事件を、当事務所にご紹介したい
参考文献
- 自動車損害賠償保障法3条、16条1項
- 自動車損害賠償保障法施行令 別表第一(1級1号、2級1号)、別表第二(3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号、14級9号)
- 民法709条、722条2項
- 民事訴訟法87条の2第1項、170条3項、226条、247条
- 刑事訴訟法53条1項、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律3条1項、少年法5条の2第1項
- 弁護士法23条、23条の2
- 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(平成16年11月10日会規第70号)13条
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 99頁、437頁(自賠責保険の支払基準)
- 同『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)』2020年版 44頁・45頁、2024年版 288頁、290頁〜292頁
- 東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』別冊判例タイムズ38号(判例タイムズ社)2頁、5頁・6頁、10頁〜12頁、21頁、23頁
- 栗宇一樹・古笛恵子編『交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕』(保険毎日新聞社)192頁〜197頁、200頁
- 松浦裕介・村田佳宏編著『Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償実務』(ぎょうせい)40頁〜46頁、81頁〜87頁
- 伊豆隆義・九石拓也編『事例にみる新類型・非典型交通事故の過失相殺』(新日本法規出版)はしがき、3頁、5頁



