この記事のポイント
- 腱板損傷の後遺障害で問われるのは、主に事故で傷ついたかと、肩の動く範囲や痛みが等級の基準に届くかの二つです。
- 腱板の断裂は年齢とともに増え、症状のない断裂も多いため、MRIに断裂が写っているだけでは足りないことがあります。受傷のしかた、事故の直後からの記録、早い時期の画像、経過を組み合わせて示します。
- 動く範囲は、左右の肩を正しい方法で測ることが大切です。腕を前か横に上げる角度が、けがをしていない側(健側)の4分の3以下なら12級6号、2分の1以下なら10級10号が目安です。


事故で肩を打ったり、転んで手をついたりしたあとに肩の痛みや腕の上がりにくさが続き、腱板損傷(腱板断裂)と診断されることがあります。
この頁では、等級の基準、事故による損傷を示す所見、異議申立てで足す資料、賠償額の目安を説明します。肩・腕・手のけが全体は肩・腕・手の後遺障害にまとめています。
何が問われる? 「事故で傷ついたか」と「動く範囲・痛みの程度」
腱板損傷の後遺障害で問われるのは、主に二つです。一つは、その損傷が事故で生じたのか、事故の前から年齢による傷み(変性)で生じていたのか。もう一つは、肩の動く範囲の制限や痛みが、等級の基準に届くかです。
MRIに断裂が写っているだけでは足りないことも
腱板の断裂は年齢とともに増え、住民検診の調査では50歳代で10人に1人、80歳代で3人に1人にみられ、断裂があっても症状のない人が半分以上を占めます(標準整形外科学 第14版 443頁)。そのため、MRIに断裂が写っているだけでは、事故によるけがと認められないことがあります。
非該当を覆すには、受傷のしかた、事故の直後からの診療記録、早い時期のレントゲンとMRI、その後の経過を組み合わせて「事故で傷ついた」ことを示し、左右の肩の動く範囲を正しい方法で測ってもらうことが中心になります。
自賠責保険の後遺障害の等級は、原則として労災保険の障害等級認定の基準(以下「認定基準」)に準じて認定されます(自賠責保険の支払基準 第3。赤い本 2020年版 上巻 437頁)。腱板損傷で問われる点は、次のとおりです。
| 争点 | 問われること | 主な資料 |
|---|---|---|
| 事故で傷ついたか | 受傷のしかた、年齢と事故の前の肩の状態、初診の所見、早い時期の画像、経過から総合して判断される | 事故の状況の資料、初診からのカルテ、事故の直後のレントゲン、事故から3か月以内のMRI |
| 損傷を画像で確かめられるか | 後遺障害の認定は、体の組織が傷ついていること(器質的損傷)が前提 | MRI、MR関節造影、手術記録 |
| 動く範囲 | 腕を前に上げる角度・横に上げる角度が、けがをしていない側(健側)の4分の3以下か、2分の1以下か | 後遺障害診断書の左右の角度 |
| 痛み | 痛みの原因を医学的に証明できるか(12級)、説明できるか(14級) | 画像、圧痛や筋力の検査の結果 |
「事故で傷ついたか」は、どう判断される?
一つ目の点について、講演の当時、損害保険料率算出機構の審査委員を務めていた整形外科医は、腱板断裂がいつ起きたのかを、受傷のしかた、年齢・既往歴、初診時の所見、初期の画像検査、経過から総合的に判断しており、自賠責保険の審査でも同様だと述べています(赤い本 2018年版 下巻(講演録編)池上博泰「肩関節〜腱板断裂を中心に〜」45頁・68頁。以下「講演録2018」)。
腱板損傷とはどんなけが? 受傷の仕組みと症状
腱板のはたらきと、切れる仕組み
腱板は、肩甲骨から上腕骨の頭(骨頭)に付く4つの筋肉(肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋)の腱の集まりで、腕を上げるときに骨頭を肩甲骨に引きつけて支点をつくります。棘上筋の腱は、腕を上げるたびに肩峰(肩の屋根にあたる骨)と骨頭の間にはさまれるため、断裂の多くはこの腱から起こります(講演録2018 49頁・51頁、標準整形外科学 第14版 442頁)。
切れる原因は、年齢による変性、事故や転倒などの外傷、腕を上げるスポーツなどのくり返しによる摩耗に大きく分けられ、これらが重なる例も多いとされます(講演録2018 52頁・53頁、標準整形外科学 第14版 442頁・443頁)。

完全断裂と不全断裂は、どう違う?
断裂には、腱の厚み全体が切れる完全断裂と、一部が切れる不全断裂(関節面断裂・腱内断裂・滑液包面断裂)があります(標準整形外科学 第14版 443頁)。変性による断裂の多くは関節面側の不全断裂で、この型は痛みのない断裂によくみられるとされます(肩関節拘縮の評価と運動療法 臨床編 170頁)。
大きさは、1cmまでを小断裂、1〜3cmを中断裂、3〜5cmを大断裂、5cm以上を広範囲断裂とする分類がよく使われます(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 238頁)。
- 自然にはつながらない
- 肩が固くなること(拘縮)はまれ
- 自然に治ることもある
- 変性による断裂の多くは、関節面側の不全断裂
- 拘縮を起こすこともある

完全断裂は自然にはつながらない一方、不全断裂は自然に治ることもあるとされます(講演録2018 54頁)。MRIの読影の報告書に「腱板断裂」とあっても、その多くは不全断裂を含んでいるという指摘があり(同 54頁)、両者は病態も見通しも大きく違うので(同 55頁)、どちらなのかを主治医に確かめておきましょう。
どんな症状が出る? 治療は?

腕を横に上げる途中の60度から120度の間で痛む「有痛弧」もよくみられます(肩関節拘縮の評価と運動療法 臨床編 173頁・174頁)。完全断裂で肩が固くなること(拘縮)はまれで、不全断裂では拘縮を起こすこともあるとされています(講演録2018 52頁)。
治療は、保存療法と手術
変性を基盤とする中高年の断裂では、まず薬や注射、リハビリなどの保存療法を行い、3〜6か月ほどで約7割の人の症状が軽くなるとされます。若い人の外傷による断裂には積極的に手術を考えるとされ、関節鏡を使って腱を骨に縫い付ける手術が標準的です(標準整形外科学 第14版 443頁・445頁)。
何級になる? 肩の動く範囲(10級10号・12級6号)と痛み(12級13号・14級9号)
腱板損傷で当てはまる主な等級は、次のとおりです(自動車損害賠償保障法施行令 別表第二。「 」内は政令の文言)。
| 残った症状 | 等級と別表第二の文言 | 認定基準による目安 |
|---|---|---|
| 肩が固まって動かない | 8級6号「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」 | 前に上げる動きと横に上げる動きの両方が、健側の10%程度以下など |
| 肩の動く範囲が大きく減った | 10級10号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」 | 前に上げる動きか横に上げる動きの、どちらかが健側の2分の1以下 |
| 肩の動く範囲が減った | 12級6号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」 | どちらかが健側の4分の3以下 |
| 痛み | 12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」 | 痛みの原因を医学的に証明できる(自賠責保険の実務) |
| 痛み | 14級9号「局部に神経症状を残すもの」 | 医学的に説明できる(同) |
肩の角度は、どう測る?
測り方は、認定基準の別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」(以下「測定要領」)で決まっています。
角度を測るときに気をつける点
- 前に上げる・横に上げる動きで比べる:肩の主要運動は屈曲(前に上げる)と外転・内転(横に上げ下ろし)で、どちらか一方が基準以下なら当たります。内転の参考可動域は0度なので、実際には横に上げる角度で比べます。伸展(後ろに上げる)、外旋・内旋(腕を外・内にひねる)は参考運動です。なお、8級6号は屈曲と外転の両方の制限が必要です。
- 健側と比べる:健側もけがをしているときは、参考可動域角度(屈曲180度、外転180度、伸展50度、外旋60度、内旋80度)と比べます。
- 医師が動かした角度で:原則は他動運動の角度です。動かすと我慢できない痛みが出て自分では動かせないと医学的に判断される場合などは、自動運動の角度を参考にします。
- 外転は手のひらを上に向けて:手のひらを下に向けたままだと、大結節が肩峰にぶつかり100〜120度くらいまでしか上がりません(講演録2018 70頁)。
- 制限の原因を明らかにしてから:原因を無視して機械的に角度を測っても資料にならないので、測る前に原因を明らかにしておく必要があるとされています。腱板損傷では、画像で損傷を示すことが、原因を明らかにする手がかりになります。

健側が180度なら、何度で何級?
| 健側の角度(屈曲または外転) | 12級6号(4分の3以下) | 10級10号(2分の1以下) | 8級6号(屈曲と外転の両方) | 参考運動もあわせて見る範囲 |
|---|---|---|---|---|
| 180度 | 135度以下 | 90度以下 | 20度以下 | 12級は140度まで、10級は100度まで |
| 170度 | 127.5度以下 | 85度以下 | 20度以下 | 12級は132.5度まで、10級は95度まで |
| 160度 | 120度以下 | 80度以下 | 20度以下 | 12級は125度まで、10級は90度まで |
前に上げる角度や横に上げる角度が境目をわずかに(原則5度、10級10号をみるときは10度)上回るときは、参考運動のどれか一つが健側の4分の3以下(10級10号では2分の1以下)なら、それぞれの等級に当たります(測定要領)。
図の例で、健側が屈曲・外転とも180度、外旋と内旋の合計140度、けがをした側が屈曲125度・外転95度なら、屈曲が135度以下なので12級6号です。外転の95度は90度を上回りますが差が10度以内なので、外旋と内旋の合計が70度以下なら10級10号に当たります。
ギプスなどで固定していたために起きた動きの制限(廃用性の機能障害)は、将来、障害が軽くなることを考えて等級を認定するとされています(認定基準)。
痛みが残ったときは? 12級13号・14級9号
動く範囲が基準に届かなくても、痛みが残れば12級13号か14級9号に当たることがあります。自賠責保険の実務では、障害を医学的に証明できるものを12級、証明まではできなくても医学的に説明できるものを14級とし、訴えだけで医学的な説明もないものは非該当とする考え方がとられているといわれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。

事故による損傷だと、どう示す? MRIの所見・受傷直後の記録・経過
肩の障害を評価するときは、まず病歴を聴き、症状が外傷をきっかけに出たのか、いつの間にか出てきたのかを確かめるとされています(肩のリハビリテーション 原書第2版 14頁)。事故による損傷を支える事情と、事故の前からの傷みを疑わせる事情を、表にまとめました。
| 見る点 | 事故による損傷を支える事情 | 事故の前からの傷みを疑わせる事情 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 受傷のしかた | 歩行中や自転車・バイクで転んで肩を直接打った、手をついて体を支えた | 車どうしの追突などで、肩に大きな力がかかったことを説明しにくい | 講演録2018 53頁・68頁、上肢MRI読影の一手 8頁・9頁、12頁・13頁 |
| 事故の前の肩 | 肩の痛みで通院や画像検査をしていない | 肩の痛みで通院していた。痛みのない断裂が多い年代である | 講演録2018 56頁・68頁、標準整形外科学 第14版 443頁 |
| 初診の記録 | 最初の受診から肩の痛みを訴え、肩の圧痛が記録されている | 初診の記録に肩の訴えがない。肩のレントゲンが事故から3〜4か月後 | 講演録2018 59頁・69頁 |
| 事故の直後のレントゲン | 時間をかけて現れる変化(骨棘や肩峰の骨硬化)が写っていない | 大結節や肩峰の骨棘、肩峰の裏の骨硬化がある。肩峰と骨頭のすき間が狭い(大きな断裂が長く続いたときの変化) | 講演録2018 60頁・61頁、標準整形外科学 第14版 443頁 |
| 早い時期のMRI | 3か月以内に撮られている。1か月以内なら、肩を打った皮下出血が写ることもある | 事故から1〜2か月のMRIで、筋肉の脂肪変性や腱の消失がみられる | 講演録2018 69頁・70頁、上肢MRI読影の一手 27頁 |
| 経過 | 事故の直後から、痛みと腕の上がりにくさが続いている | いったんよくなった動く範囲が、再び悪くなった | 講演録2018 70頁 |
いつの記録・画像が大切?
- 事故
直後最初の受診から肩の痛みを訴え、圧痛が記録されているか。肩のレントゲンに、時間をかけて現れる変化(骨棘や肩峰の骨硬化)が写っていないか - 1か月
以内MRIに、肩を打った皮下出血が写ることもある(皮下出血は約4週間残る) - 1〜2
か月筋肉の脂肪変性や、骨棘などのレントゲンの変化は、通常まだ出てこない。この時期のMRIで脂肪変性や腱の消失がみられると、事故の前からの傷みが疑われる - 3か月
以内この時期までに撮られていれば早い時期のMRIとして、事故による損傷を支える事情の一つになる。報告書だけでなく画像のデータも取り寄せる

医学書も、腱の消失と筋肉の脂肪変性を、古い断裂(陳旧性断裂)と診断する根拠に挙げています(上肢MRI読影の一手 27頁)。
年齢や「痛くなかった」だけで決まる?
どれか一つで決まるものではなく、全体で判断されます(講演録2018 68頁)。年齢が高いことだけで事故との関係が否定されるわけでもなく、高齢の方の腱板はもろく、かろうじてつながっていた腱板が小さな外力で切れることもあり得るとされています(同 68頁・69頁)。
「事故の前は痛くなかった」だけでは足りません
「事故の前は痛くなかった」ことは大切ですが、痛くない断裂も多いため、それだけでは足りません(講演録2018 57頁)。事故の直後から症状が続いていた記録と、早い時期の画像に古い損傷の所見がないことを、あわせて示します。
非該当になるのはなぜ? 異議申立てで足す資料

非該当や、思っていたより低い等級とされたときは、異議申立てができます。まず通知の理由が、次のどれに当たるかを見きわめます。
通知の理由は、どれに当たる?
- 事故で傷ついたと認められない:受傷のしかた、初診の記録、早い時期の画像、経過から、事故の前からの変性の可能性を指摘されたもの(講演録2018 68頁)。
- 損傷を画像で確かめられない:後遺障害の認定は器質的損傷があることが前提です(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 191頁)。不全断裂は、超音波やMRIで見つからなかった人の27%程度に実際にはある可能性があり、MR関節造影のほうが見つけやすいとされます(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 241頁)。
- 角度の記録に問題がある:健側の角度がない、自動の角度しかない、外転を手のひらを下にして測った、など。後遺障害診断書の角度が信用できるかも問題にされます(講演録2018 68頁・70頁)。
- 症状固定の時期が早い:肩の動く範囲は1年から2年くらいかけてよくなるのが通常で、受傷から1年以内の症状固定では短すぎるという指摘があります(同 70頁)。
- 痛みの原因を医学的に説明できない:訴えだけのものは非該当とされるといわれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。
異議申立てでは、何を足せばいい?
異議申立てで足す資料のチェックリスト
- 事故の状況:実況見分調書、車両や自転車・バイクの写真。転んで肩を打ったか、手をついたかが分かるもの
- 初診からの記録:カルテ、救急の記録、看護記録。カルテに圧痛の記載がなければ、整骨院などの施術記録も参考になるとされます(講演録2018 69頁)
- 事故の直後のレントゲンと、早い時期のMRI:報告書だけでなく画像のデータ
- 画像の読み方の確認:完全断裂か不全断裂か、大きさ、筋肉の萎縮や脂肪変性の有無を主治医に確かめ、事故による損傷と矛盾しないかの意見をもらう(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 238頁〜240頁)
- 追加の検査:不全断裂が疑われるのに写っていないときは、MR関節造影などを主治医に相談
- 左右の角度:屈曲・外転・伸展・外旋・内旋を左右とも他動で。外転は手のひらを上に向けて。痛みで動かせないときはその事情も
- 診察の所見:圧痛と筋力テストの結果
- 手術記録:手術を受けたなら、断裂の大きさや状態の記載
- 事故の前の肩:事故の前に肩で通院していないこと。通院していたなら、その時期と内容
- 困っていること:腕を上げる作業ができない、夜に痛みで目が覚めるなど、具体的な場面をまとめた書面

慰謝料・逸失利益はいくら? 等級ごとの目安
| 等級 | 後遺障害慰謝料(裁判の基準) | 自賠責保険の保険金額(後遺障害の上限) | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|
| 8級 | 830万円 | 819万円 | 45% |
| 10級 | 550万円 | 461万円 | 27% |
| 12級 | 290万円 | 224万円 | 14% |
| 14級 | 110万円 | 75万円 | 5% |

計算例:非該当・12級・10級で、どれだけ違う?
逸失利益(将来の収入の減少分)は「基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に応じたライプニッツ係数」で計算し、期間は原則として症状固定から67歳までです(赤い本 2020年版 上巻 99頁・100頁)。
係数のもとになる法定利率は、令和2年4月1日から令和11年3月31日までの事故で年3%です(民法404条、722条1項・417条の2、令和7年法務省告示第73号)。症状固定のとき45歳・年収500万円の方なら、22年の係数は15.9369です(赤い本 2020年版 上巻 429頁)。
| 等級 | 逸失利益 | 後遺障害慰謝料 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 非該当 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 12級6号(14%) | 1,115万5,830円 | 290万円 | 1,405万5,830円 |
| 10級10号(27%) | 2,151万4,815円 | 550万円 | 2,701万4,815円 |
等級が変わると、これだけ違います
この例では、非該当が12級6号になれば約1,406万円、12級6号が10級10号になればさらに約1,296万円変わります。図の例のように、角度が5度違うだけで等級が変わることもあります。
喪失率は仕事の内容や年齢なども見て決められます(赤い本 2020年版 上巻 99頁)。計算の方法は交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法で説明しています。

よくある質問
MRIに腱板断裂が写っているのに、非該当とされたのはなぜですか。
痛みのない断裂も多く(標準整形外科学 第14版 443頁)、報告書の「断裂」が不全断裂を指していることも多いため(講演録2018 54頁)、画像に断裂があるだけでは事故によるものと認められないことがあります。受傷のしかた、初診の記録、早い時期の画像で補います。
今からMRIを撮り直しても意味はありますか。
事故の時点の状態を示すのは早い時期の画像なので(講演録2018 69頁)、まず事故の直後に撮った画像のデータを取り寄せましょう。そのうえで断裂の種類や大きさ、筋肉の状態を確かめることは、今の症状の原因を示すのに役立ちます。撮り直すかどうか、MR関節造影にするかは主治医と相談してください。
症状固定はいつにすればよいですか。
主治医と相談して決めます。肩の動く範囲は1年から2年くらいかけてよくなるのが通常だという指摘があり(講演録2018 70頁)、治療の打ち切りを告げられても、リハビリで角度がよくなっている途中なら、急いで症状固定にしないほうがよいことがあります。手続きは交通事故で症状固定したときの後遺障害等級認定手続きをご覧ください。
整骨院の記録も役に立ちますか。
役に立つことがあります。施術記録には圧痛の有無などが詳しく書かれていることがあり、カルテに記載がないときの参考になるとされています(講演録2018 69頁)。ただし、後遺障害診断書を書くのは医師なので、整形外科への通院は続けてください。後遺障害の全体は交通事故の後遺障害(けがの部位から探す)にまとめています。
参考文献
- 自動車損害賠償保障法施行令 別表第二
- 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第3
- せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準(平成16年6月4日基発第0604003号)と別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」
- 民法404条・417条の2・722条1項、令和7年法務省告示第73号
- 標準整形外科学 第14版(医学書院)442頁〜445頁
- 上肢MRI読影の一手 8頁・9頁、12頁・13頁、27頁
- 軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 238頁〜241頁
- 肩関節拘縮の評価と運動療法 臨床編 170頁、173頁・174頁
- 肩のリハビリテーション 原書第2版 14頁
- 交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版(保険毎日新聞社)191頁〜193頁
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 99頁・100頁、196頁、429頁、437頁、441頁
- 同 2018年版 下巻(講演録編)池上博泰「肩関節〜腱板断裂を中心に〜」45頁、49頁、51頁〜57頁、59頁〜61頁、68頁〜70頁



