交通事故の被害者の方への相談は初回無料です。全国対応なので、どこにいても対応可能です。 専門家の方へ(弁護士・医師・整骨院・保険代理店) サイトマップ

肩の腱板損傷の後遺症が非該当になったら|後遺障害等級と立証の資料

執筆 弁護士 鈴木晶(神奈川県弁護士会所属) 公開

この記事のポイント

  1. 腱板損傷の後遺障害で問われるのは、主に事故で傷ついたかと、肩の動く範囲や痛みが等級の基準に届くかの二つです。
  2. 腱板の断裂は年齢とともに増え、症状のない断裂も多いため、MRIに断裂が写っているだけでは足りないことがあります。受傷のしかた、事故の直後からの記録、早い時期の画像、経過を組み合わせて示します。
  3. 動く範囲は、左右の肩を正しい方法で測ることが大切です。腕を前か横に上げる角度が、けがをしていない側(健側)の4分の3以下なら12級6号、2分の1以下なら10級10号が目安です。
肩を痛がる男の子のイラスト
ご相談者
事故で肩を打ってから、腕が上がりにくいままです。腱板損傷と言われたのですが、後遺障害の等級はどう決まるんでしょう?
説明する弁護士のイラスト
弁護士
問われるのは主に二つ。その損傷が事故で生じたのかと、肩の動く範囲や痛みが等級の基準に届くかです。図も使って、順番に説明しますね。

 事故で肩を打ったり、転んで手をついたりしたあとに肩の痛みや腕の上がりにくさが続き、腱板損傷(腱板断裂)と診断されることがあります。

 この頁では、等級の基準、事故による損傷を示す所見、異議申立てで足す資料、賠償額の目安を説明します。肩・腕・手のけが全体は肩・腕・手の後遺障害にまとめています。

何が問われる? 「事故で傷ついたか」と「動く範囲・痛みの程度」

 腱板損傷の後遺障害で問われるのは、主に二つです。一つは、その損傷が事故で生じたのか、事故の前から年齢による傷み(変性)で生じていたのか。もう一つは、肩の動く範囲の制限や痛みが、等級の基準に届くかです。

MRIに断裂が写っているだけでは足りないことも

 腱板の断裂は年齢とともに増え、住民検診の調査では50歳代で10人に1人、80歳代で3人に1人にみられ、断裂があっても症状のない人が半分以上を占めます(標準整形外科学 第14版 443頁)。そのため、MRIに断裂が写っているだけでは、事故によるけがと認められないことがあります。

腱板の断裂がみられる人の割合(住民検診の調査)住民検診の調査では、腱板の断裂は50歳代で10人に1人、80歳代で3人に1人にみられる。断裂があっても症状のない人が半分以上を占めるため、MRIに断裂が写っているだけでは、事故によるけがと認められないことがある。腱板の断裂がみられる人の割合(住民検診の調査)50歳代10人に1人80歳代3人に1人=断裂がみられる人断裂があっても、症状のない人が半分以上MRIに写っているだけでは足りないことも
図 腱板の断裂は、年齢とともに増えます(標準整形外科学 第14版 443頁をもとに当事務所が作成)

 非該当を覆すには、受傷のしかた、事故の直後からの診療記録、早い時期のレントゲンとMRI、その後の経過を組み合わせて「事故で傷ついた」ことを示し、左右の肩の動く範囲を正しい方法で測ってもらうことが中心になります。

 自賠責保険の後遺障害の等級は、原則として労災保険の障害等級認定の基準(以下「認定基準」)に準じて認定されます(自賠責保険の支払基準 第3。赤い本 2020年版 上巻 437頁)。腱板損傷で問われる点は、次のとおりです。

争点問われること主な資料
事故で傷ついたか受傷のしかた、年齢と事故の前の肩の状態、初診の所見、早い時期の画像、経過から総合して判断される事故の状況の資料、初診からのカルテ、事故の直後のレントゲン、事故から3か月以内のMRI
損傷を画像で確かめられるか後遺障害の認定は、体の組織が傷ついていること(器質的損傷)が前提MRI、MR関節造影、手術記録
動く範囲腕を前に上げる角度・横に上げる角度が、けがをしていない側(健側)の4分の3以下か、2分の1以下か後遺障害診断書の左右の角度
痛み痛みの原因を医学的に証明できるか(12級)、説明できるか(14級)画像、圧痛や筋力の検査の結果

「事故で傷ついたか」は、どう判断される?

 一つ目の点について、講演の当時、損害保険料率算出機構の審査委員を務めていた整形外科医は、腱板断裂がいつ起きたのかを、受傷のしかた、年齢・既往歴、初診時の所見、初期の画像検査、経過から総合的に判断しており、自賠責保険の審査でも同様だと述べています(赤い本 2018年版 下巻(講演録編)池上博泰「肩関節〜腱板断裂を中心に〜」45頁・68頁。以下「講演録2018」)。

腱板損傷とはどんなけが? 受傷の仕組みと症状

腱板のはたらきと、切れる仕組み

 腱板は、肩甲骨から上腕骨の頭(骨頭)に付く4つの筋肉(肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋)の腱の集まりで、腕を上げるときに骨頭を肩甲骨に引きつけて支点をつくります。棘上筋の腱は、腕を上げるたびに肩峰(肩の屋根にあたる骨)と骨頭の間にはさまれるため、断裂の多くはこの腱から起こります(講演録2018 49頁・51頁、標準整形外科学 第14版 442頁)。

 切れる原因は、年齢による変性、事故や転倒などの外傷、腕を上げるスポーツなどのくり返しによる摩耗に大きく分けられ、これらが重なる例も多いとされます(講演録2018 52頁・53頁、標準整形外科学 第14版 442頁・443頁)。

車と人の事故のイラスト
外傷で一度に切れるには比較的大きな力が要り、車どうしの事故よりも、バイク、自転車、歩行者の事故で起こるとされています(講演録2018 53頁)。

完全断裂と不全断裂は、どう違う?

 断裂には、腱の厚み全体が切れる完全断裂と、一部が切れる不全断裂(関節面断裂・腱内断裂・滑液包面断裂)があります(標準整形外科学 第14版 443頁)。変性による断裂の多くは関節面側の不全断裂で、この型は痛みのない断裂によくみられるとされます(肩関節拘縮の評価と運動療法 臨床編 170頁)。

 大きさは、1cmまでを小断裂、1〜3cmを中断裂、3〜5cmを大断裂、5cm以上を広範囲断裂とする分類がよく使われます(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 238頁)。

完全断裂
腱の厚み全体が切れる
  • 自然にはつながらない
  • 肩が固くなること(拘縮)はまれ
不全断裂
腱の一部が切れる(関節面断裂・腱内断裂・滑液包面断裂)
  • 自然に治ることもある
  • 変性による断裂の多くは、関節面側の不全断裂
  • 拘縮を起こすこともある
首をかしげる男の子のイラスト
ご相談者
MRIの報告書に「腱板断裂」と書いてありました。完全に切れている、ということですか?

 完全断裂は自然にはつながらない一方、不全断裂は自然に治ることもあるとされます(講演録2018 54頁)。MRIの読影の報告書に「腱板断裂」とあっても、その多くは不全断裂を含んでいるという指摘があり(同 54頁)、両者は病態も見通しも大きく違うので(同 55頁)、どちらなのかを主治医に確かめておきましょう。

どんな症状が出る? 治療は?

肩を痛がる男の子のイラスト
症状で多いのは痛みで、動かしたときのほか、じっとしているときや夜の痛みを伴うことも多くあります。棘上筋が切れると腕を横に上げる力、棘下筋・小円筋では外にひねる力、肩甲下筋では内にひねる力が弱くなります(標準整形外科学 第14版 443頁)。

 腕を横に上げる途中の60度から120度の間で痛む「有痛弧」もよくみられます(肩関節拘縮の評価と運動療法 臨床編 173頁・174頁)。完全断裂で肩が固くなること(拘縮)はまれで、不全断裂では拘縮を起こすこともあるとされています(講演録2018 52頁)。

治療は、保存療法と手術

 変性を基盤とする中高年の断裂では、まず薬や注射、リハビリなどの保存療法を行い、3〜6か月ほどで約7割の人の症状が軽くなるとされます。若い人の外傷による断裂には積極的に手術を考えるとされ、関節鏡を使って腱を骨に縫い付ける手術が標準的です(標準整形外科学 第14版 443頁・445頁)。

何級になる? 肩の動く範囲(10級10号・12級6号)と痛み(12級13号・14級9号)

 腱板損傷で当てはまる主な等級は、次のとおりです(自動車損害賠償保障法施行令 別表第二。「 」内は政令の文言)。

残った症状等級と別表第二の文言認定基準による目安
肩が固まって動かない8級6号「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」前に上げる動きと横に上げる動きの両方が、健側の10%程度以下など
肩の動く範囲が大きく減った10級10号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」前に上げる動きか横に上げる動きの、どちらかが健側の2分の1以下
肩の動く範囲が減った12級6号「一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」どちらかが健側の4分の3以下
痛み12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」痛みの原因を医学的に証明できる(自賠責保険の実務)
痛み14級9号「局部に神経症状を残すもの」医学的に説明できる(同)

肩の角度は、どう測る?

 測り方は、認定基準の別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」(以下「測定要領」)で決まっています。

角度を測るときに気をつける点

  • 前に上げる・横に上げる動きで比べる:肩の主要運動は屈曲(前に上げる)と外転・内転(横に上げ下ろし)で、どちらか一方が基準以下なら当たります。内転の参考可動域は0度なので、実際には横に上げる角度で比べます。伸展(後ろに上げる)、外旋・内旋(腕を外・内にひねる)は参考運動です。なお、8級6号は屈曲と外転の両方の制限が必要です。
  • 健側と比べる:健側もけがをしているときは、参考可動域角度(屈曲180度、外転180度、伸展50度、外旋60度、内旋80度)と比べます。
  • 医師が動かした角度で:原則は他動運動の角度です。動かすと我慢できない痛みが出て自分では動かせないと医学的に判断される場合などは、自動運動の角度を参考にします。
  • 外転は手のひらを上に向けて:手のひらを下に向けたままだと、大結節が肩峰にぶつかり100〜120度くらいまでしか上がりません(講演録2018 70頁)。
  • 制限の原因を明らかにしてから:原因を無視して機械的に角度を測っても資料にならないので、測る前に原因を明らかにしておく必要があるとされています。腱板損傷では、画像で損傷を示すことが、原因を明らかにする手がかりになります。
×の札を持つ弁護士のイラスト
弁護士
健側の角度がない、自動の角度しかない、外転を手のひらを下にして測った……。こうした記録だと、後遺障害診断書の角度が信用できるかが問題にされることがあります。

健側が180度なら、何度で何級?

健側が180度のときの、けがをした側の肩の角度と等級けがをしていない側の肩が、前に上げる動き(屈曲)と横に上げる動き(外転)ともに180度動く場合、けがをした側のどちらかが135度以下なら12級6号、90度以下なら10級10号の目安です。屈曲と外転の両方が20度以下なら8級6号です。境目から12級は5度、10級は10度までは、伸展、外旋・内旋の制限もあわせて見ます。例として、屈曲125度は12級6号に当たり、外転95度は外旋と内旋の制限しだいで10級10号に当たります。けがをした側の、肩を前・横に上げる角度健側=180度として計算(屈曲・外転)動く範囲では等級に当たらない12級6号健側の4分の3以下10級10号健側の2分の1以下8級6号※180度135度90度20度0度例:屈曲125度例:外転95度境目をわずかに上回る範囲(12級は140度まで、10級は100度まで)。この範囲では、参考運動(伸展、外旋・内旋)の制限もあわせて見る※8級6号は、屈曲と外転の両方が20度以下(健側の10%を5度単位で切り上げた角度)
図 健側の肩が180度動く場合の、けがをした側の角度と等級の目安(認定基準と測定要領をもとに当事務所が作成)
健側の角度(屈曲または外転)12級6号(4分の3以下)10級10号(2分の1以下)8級6号(屈曲と外転の両方)参考運動もあわせて見る範囲
180度135度以下90度以下20度以下12級は140度まで、10級は100度まで
170度127.5度以下85度以下20度以下12級は132.5度まで、10級は95度まで
160度120度以下80度以下20度以下12級は125度まで、10級は90度まで

 前に上げる角度や横に上げる角度が境目をわずかに(原則5度、10級10号をみるときは10度)上回るときは、参考運動のどれか一つが健側の4分の3以下(10級10号では2分の1以下)なら、それぞれの等級に当たります(測定要領)。

 図の例で、健側が屈曲・外転とも180度、外旋と内旋の合計140度、けがをした側が屈曲125度・外転95度なら、屈曲が135度以下なので12級6号です。外転の95度は90度を上回りますが差が10度以内なので、外旋と内旋の合計が70度以下なら10級10号に当たります。

 ギプスなどで固定していたために起きた動きの制限(廃用性の機能障害)は、将来、障害が軽くなることを考えて等級を認定するとされています(認定基準)。

痛みが残ったときは? 12級13号・14級9号

 動く範囲が基準に届かなくても、痛みが残れば12級13号か14級9号に当たることがあります。自賠責保険の実務では、障害を医学的に証明できるものを12級、証明まではできなくても医学的に説明できるものを14級とし、訴えだけで医学的な説明もないものは非該当とする考え方がとられているといわれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。

医師が診察するイラスト
腱板損傷では、MRIの断裂が、その場所を押したときの痛み(圧痛)や、切れた腱に応じた筋力の低下(棘上筋テスト、リフトオフテストなど)と合っていることが手がかりになります(標準整形外科学 第14版 443頁・444頁、講演録2018 59頁)。

事故による損傷だと、どう示す? MRIの所見・受傷直後の記録・経過

 肩の障害を評価するときは、まず病歴を聴き、症状が外傷をきっかけに出たのか、いつの間にか出てきたのかを確かめるとされています(肩のリハビリテーション 原書第2版 14頁)。事故による損傷を支える事情と、事故の前からの傷みを疑わせる事情を、表にまとめました。

見る点事故による損傷を支える事情事故の前からの傷みを疑わせる事情出典
受傷のしかた歩行中や自転車・バイクで転んで肩を直接打った、手をついて体を支えた車どうしの追突などで、肩に大きな力がかかったことを説明しにくい講演録2018 53頁・68頁、上肢MRI読影の一手 8頁・9頁、12頁・13頁
事故の前の肩肩の痛みで通院や画像検査をしていない肩の痛みで通院していた。痛みのない断裂が多い年代である講演録2018 56頁・68頁、標準整形外科学 第14版 443頁
初診の記録最初の受診から肩の痛みを訴え、肩の圧痛が記録されている初診の記録に肩の訴えがない。肩のレントゲンが事故から3〜4か月後講演録2018 59頁・69頁
事故の直後のレントゲン時間をかけて現れる変化(骨棘や肩峰の骨硬化)が写っていない大結節や肩峰の骨棘、肩峰の裏の骨硬化がある。肩峰と骨頭のすき間が狭い(大きな断裂が長く続いたときの変化)講演録2018 60頁・61頁、標準整形外科学 第14版 443頁
早い時期のMRI3か月以内に撮られている。1か月以内なら、肩を打った皮下出血が写ることもある事故から1〜2か月のMRIで、筋肉の脂肪変性や腱の消失がみられる講演録2018 69頁・70頁、上肢MRI読影の一手 27頁
経過事故の直後から、痛みと腕の上がりにくさが続いているいったんよくなった動く範囲が、再び悪くなった講演録2018 70頁

いつの記録・画像が大切?

  1. 事故
    直後
    最初の受診から肩の痛みを訴え、圧痛が記録されているか。肩のレントゲンに、時間をかけて現れる変化(骨棘や肩峰の骨硬化)が写っていないか
  2. 1か月
    以内
    MRIに、肩を打った皮下出血が写ることもある(皮下出血は約4週間残る)
  3. 1〜2
    か月
    筋肉の脂肪変性や、骨棘などのレントゲンの変化は、通常まだ出てこない。この時期のMRIで脂肪変性や腱の消失がみられると、事故の前からの傷みが疑われる
  4. 3か月
    以内
    この時期までに撮られていれば早い時期のMRIとして、事故による損傷を支える事情の一つになる。報告書だけでなく画像のデータも取り寄せる
MRIの検査を受ける場面のイラスト
皮下出血は約4週間残るので、事故から1か月以内のMRIは肩を強く打った事実を示す情報になります。反対に、腱板の筋肉が脂肪に置き換わる「脂肪変性」は断裂から2か月くらいでは通常起きず、骨棘などのレントゲンの変化も1〜2か月では通常出てきません(講演録2018 61頁・69頁・70頁)。

 医学書も、腱の消失と筋肉の脂肪変性を、古い断裂(陳旧性断裂)と診断する根拠に挙げています(上肢MRI読影の一手 27頁)。

年齢や「痛くなかった」だけで決まる?

 どれか一つで決まるものではなく、全体で判断されます(講演録2018 68頁)。年齢が高いことだけで事故との関係が否定されるわけでもなく、高齢の方の腱板はもろく、かろうじてつながっていた腱板が小さな外力で切れることもあり得るとされています(同 68頁・69頁)。

「事故の前は痛くなかった」だけでは足りません

 「事故の前は痛くなかった」ことは大切ですが、痛くない断裂も多いため、それだけでは足りません(講演録2018 57頁)。事故の直後から症状が続いていた記録と、早い時期の画像に古い損傷の所見がないことを、あわせて示します。

非該当になるのはなぜ? 異議申立てで足す資料

書類を読んで困る女性のイラスト
ご相談者
後遺障害は「非該当」という通知が届きました。どこから見直せばいいですか?

 非該当や、思っていたより低い等級とされたときは、異議申立てができます。まず通知の理由が、次のどれに当たるかを見きわめます。

通知の理由は、どれに当たる?

  • 事故で傷ついたと認められない:受傷のしかた、初診の記録、早い時期の画像、経過から、事故の前からの変性の可能性を指摘されたもの(講演録2018 68頁)。
  • 損傷を画像で確かめられない:後遺障害の認定は器質的損傷があることが前提です(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 191頁)。不全断裂は、超音波やMRIで見つからなかった人の27%程度に実際にはある可能性があり、MR関節造影のほうが見つけやすいとされます(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 241頁)。
  • 角度の記録に問題がある:健側の角度がない、自動の角度しかない、外転を手のひらを下にして測った、など。後遺障害診断書の角度が信用できるかも問題にされます(講演録2018 68頁・70頁)。
  • 症状固定の時期が早い:肩の動く範囲は1年から2年くらいかけてよくなるのが通常で、受傷から1年以内の症状固定では短すぎるという指摘があります(同 70頁)。
  • 痛みの原因を医学的に説明できない:訴えだけのものは非該当とされるといわれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。

異議申立てでは、何を足せばいい?

異議申立てで足す資料のチェックリスト

  • 事故の状況:実況見分調書、車両や自転車・バイクの写真。転んで肩を打ったか、手をついたかが分かるもの
  • 初診からの記録:カルテ、救急の記録、看護記録。カルテに圧痛の記載がなければ、整骨院などの施術記録も参考になるとされます(講演録2018 69頁)
  • 事故の直後のレントゲンと、早い時期のMRI:報告書だけでなく画像のデータ
  • 画像の読み方の確認:完全断裂か不全断裂か、大きさ、筋肉の萎縮や脂肪変性の有無を主治医に確かめ、事故による損傷と矛盾しないかの意見をもらう(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 238頁〜240頁)
  • 追加の検査:不全断裂が疑われるのに写っていないときは、MR関節造影などを主治医に相談
  • 左右の角度:屈曲・外転・伸展・外旋・内旋を左右とも他動で。外転は手のひらを上に向けて。痛みで動かせないときはその事情も
  • 診察の所見:圧痛と筋力テストの結果
  • 手術記録:手術を受けたなら、断裂の大きさや状態の記載
  • 事故の前の肩:事故の前に肩で通院していないこと。通院していたなら、その時期と内容
  • 困っていること:腕を上げる作業ができない、夜に痛みで目が覚めるなど、具体的な場面をまとめた書面
法律書と木槌のイラスト
それでも認められないときは、裁判で争うこともできます。裁判所は自賠責保険の等級認定に縛られず、証拠全体から判断します(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 193頁)。

慰謝料・逸失利益はいくら? 等級ごとの目安

等級後遺障害慰謝料(裁判の基準)自賠責保険の保険金額(後遺障害の上限)労働能力喪失率
8級830万円819万円45%
10級550万円461万円27%
12級290万円224万円14%
14級110万円75万円5%
積み上がるお金と女性のイラスト
慰謝料はいわゆる赤い本の目安(赤い本 2020年版 上巻 196頁)、保険金額は別表第二の額、喪失率は自賠責保険の支払基準の割合です(同 441頁)。基準の違いは後遺障害の慰謝料計算基準の比較と計算方法をご覧ください。後遺障害の分とは別に、入通院の慰謝料、休業損害、治療費なども請求します。

計算例:非該当・12級・10級で、どれだけ違う?

 逸失利益(将来の収入の減少分)は「基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に応じたライプニッツ係数」で計算し、期間は原則として症状固定から67歳までです(赤い本 2020年版 上巻 99頁・100頁)。

 係数のもとになる法定利率は、令和2年4月1日から令和11年3月31日までの事故で年3%です(民法404条、722条1項・417条の2、令和7年法務省告示第73号)。症状固定のとき45歳・年収500万円の方なら、22年の係数は15.9369です(赤い本 2020年版 上巻 429頁)。

等級逸失利益後遺障害慰謝料合計
非該当0円0円0円
12級6号(14%)1,115万5,830円290万円1,405万5,830円
10級10号(27%)2,151万4,815円550万円2,701万4,815円

等級が変わると、これだけ違います

 この例では、非該当が12級6号になれば約1,406万円、12級6号が10級10号になればさらに約1,296万円変わります。図の例のように、角度が5度違うだけで等級が変わることもあります。

 喪失率は仕事の内容や年齢なども見て決められます(赤い本 2020年版 上巻 99頁)。計算の方法は交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法で説明しています。

電話で話す弁護士のイラスト
弁護士
角度の測り方や画像の時期など、異議申立てで何を足せばよいか迷ったら、お気軽にご相談ください。

よくある質問

MRIに腱板断裂が写っているのに、非該当とされたのはなぜですか。

 痛みのない断裂も多く(標準整形外科学 第14版 443頁)、報告書の「断裂」が不全断裂を指していることも多いため(講演録2018 54頁)、画像に断裂があるだけでは事故によるものと認められないことがあります。受傷のしかた、初診の記録、早い時期の画像で補います。

今からMRIを撮り直しても意味はありますか。

 事故の時点の状態を示すのは早い時期の画像なので(講演録2018 69頁)、まず事故の直後に撮った画像のデータを取り寄せましょう。そのうえで断裂の種類や大きさ、筋肉の状態を確かめることは、今の症状の原因を示すのに役立ちます。撮り直すかどうか、MR関節造影にするかは主治医と相談してください。

症状固定はいつにすればよいですか。

 主治医と相談して決めます。肩の動く範囲は1年から2年くらいかけてよくなるのが通常だという指摘があり(講演録2018 70頁)、治療の打ち切りを告げられても、リハビリで角度がよくなっている途中なら、急いで症状固定にしないほうがよいことがあります。手続きは交通事故で症状固定したときの後遺障害等級認定手続きをご覧ください。

整骨院の記録も役に立ちますか。

 役に立つことがあります。施術記録には圧痛の有無などが詳しく書かれていることがあり、カルテに記載がないときの参考になるとされています(講演録2018 69頁)。ただし、後遺障害診断書を書くのは医師なので、整形外科への通院は続けてください。後遺障害の全体は交通事故の後遺障害(けがの部位から探す)にまとめています。

参考文献

  • 自動車損害賠償保障法施行令 別表第二
  • 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第3
  • せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準(平成16年6月4日基発第0604003号)と別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」
  • 民法404条・417条の2・722条1項、令和7年法務省告示第73号
  • 標準整形外科学 第14版(医学書院)442頁〜445頁
  • 上肢MRI読影の一手 8頁・9頁、12頁・13頁、27頁
  • 軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 238頁〜241頁
  • 肩関節拘縮の評価と運動療法 臨床編 170頁、173頁・174頁
  • 肩のリハビリテーション 原書第2版 14頁
  • 交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版(保険毎日新聞社)191頁〜193頁
  • 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 99頁・100頁、196頁、429頁、437頁、441頁
  • 同 2018年版 下巻(講演録編)池上博泰「肩関節〜腱板断裂を中心に〜」45頁、49頁、51頁〜57頁、59頁〜61頁、68頁〜70頁
弁護士の写真
この記事を書いた弁護士
鈴木 晶神奈川県弁護士会所属・横浜クレヨン法律事務所

 交通事故の被害に遭われた方の、示談交渉から紛争処理センター、訴訟までを担当しています。

同じ分野の解説

次に読む交通事故で骨折したときの慰謝料|入院・通院期間ごとの計算例
交通事故の無料相談予約
事前予約で休日・時間外対応
お電話から無料相談045-479-5928受付(平日)9:30~22:00(土日祝)11:00~18:00 LINEから無料相談LINEで写真を送る示談の提示書・後遺障害の結果・事故の図など WEBから無料相談メールフォーム24時間受け付けています