この記事のポイント
- 自転車は車の仲間ですが、裁判所が目安にしている基準では、自転車の割合は車やバイクより軽く、歩行者よりは重く考えられています。
- 割合は、事故の形ごとの基本の割合に、夜間・無灯火・二人乗り・子どもや高齢者・車の速度違反などの事情(修正要素)を足し引きして決まります。
- 2026年4月に始まった青切符は違反の取締りの仕組みで、それだけで自転車の割合が一律に重くなるわけではありません。
- どの修正要素が当てはまるかは証拠で決まります。映像や写真は早いうちに確保してください。


この頁では、自転車と車の事故の基本の割合、夜間の無灯火・二人乗り・歩道の通行などで割合が動く仕組み、2026年4月に始まった自転車の青切符との関係、計算の例と集めたい証拠を、交通事故を扱う弁護士がまとめました。損害賠償の全体は自転車の交通事故と損害賠償についてをご覧ください。
自転車は「車両」なのに、割合が軽くなるのはなぜ?
自転車も車の仲間です

一方、自転車を押して歩いている人は歩行者として扱われ(同法2条3項)、歩行者と車の事故の基準で考えます(別冊判例タイムズ38号 383頁)。
車やバイクより軽く、歩行者よりは重く
別冊判例タイムズ38号は、自転車の特色として、次のことを挙げています。
- 免許がいらず、交通の決まりをよく知らない子どもも乗ること
- 速さが、車・バイクと歩行者の中間であること
- 道路を横切るときの事故など、自転車ならではの事故があること
そのうえで、自転車をバイクよりは有利に扱い、ただし歩行者と同じ程度まではしない、という考え方で基本の割合を決めています(同 383頁)。
この基準は、自転車がふつうの速さ(時速15km程度)で走っていることが前提です。速さによっては、次のように考えるとされています(同 383頁・389頁)。
同じ事故でも、相手によって割合が変わる
たとえば、青信号どうしで、直進してきた側と対向の右折車がぶつかった事故では、直進してきたのが車なら直進側20、バイクなら15、自転車なら10が基本の割合です(同 228頁【107】、327頁【175】、402頁【249】)。
信号機のない同じくらいの幅の交差点での出会い頭は、車同士なら左から来た車40:右から来た車60ですが、自転車と車なら自転車20:車80です(同 215頁【101】、396頁【240】)。赤信号で交差点に入った側の割合も、車同士なら100ですが、自転車なら80です(同 208頁【98】、391頁【236】)。
事故の形ごとの基本の割合は?
別冊判例タイムズ38号の基準から、主な事故の形の基本の割合を挙げます。【 】は同書の図の番号です。修正要素を加える前の割合で、実際の割合は事故ごとの事情で変わります。
| 事故の形(図の番号・頁) | 自転車:車 |
|---|---|
| 信号機のある交差点。自転車が青、車が赤(【235】391頁) | 0:100 |
| 信号機のある交差点。自転車が赤、車が青(【236】391頁) | 80:20 |
| 信号機のない、同じくらいの幅の交差点の出会い頭(【240】396頁) | 20:80 |
| 自転車が狭い道、車が明らかに広い道から出会い頭(【242】397頁) | 30:70 |
| 車の側に一時停止の規制がある交差点(【243】398頁) | 10:90 |
| 自転車の側に一時停止の規制がある交差点(【244】398頁) | 40:60 |
| 青信号どうし。直進する自転車と対向の右折車(【249】402頁) | 10:90 |
| 青信号どうし。右折する自転車と対向の直進車(【250】402頁) | 50:50 |
| 同じ方向に進む自転車と、先に左折を始めた車(【289】431頁) | 10:90 |
| 同じ方向に進む自転車を追い越して左折した車(【290】431頁) | 0:100 |
| 歩行者用信号の青で横断歩道を渡り始めた自転車と、赤信号で進んできた車(【292】436頁) | 0:100 |
| 歩行者用信号の青で横断歩道を渡る自転車と、青信号で右折・左折してきた車(【297】443頁) | 10:90 |
| 道路を直進する自転車と、駐車場など道路の外から出てきた車(【299】446頁) | 10:90 |
| 道路の右端を走る自転車と、対向してきた車(【303】452頁) | 20:80 |
信号機のない交差点では、道の広さと一時停止の規制で割合が大きく変わります。
止まってから出ていれば、自転車40から10減ります
自転車の側に一時停止の規制がある場合の自転車40は、一時停止をせずに出たことを前提にした割合で、止まってから出ていれば10減ります(同 398頁【244】)。
右折車・左折車との事故
直進する自転車と右折車の事故では、右折車が徐行しなかった、自転車の直前で曲がった、合図をしなかった、早回りや大回りをしたといった事情があれば、自転車の割合はそれぞれ5減り、自転車が交差点に入る時点で車がほぼ右折を終えていたときは10加えられます(同 402頁【249】)。
自転車が右折するときは、あらかじめできる限り道路の左端に寄り、交差点の端に沿って徐行しなければなりません(いわゆる二段階右折。道路交通法34条3項)。
表の「右折する自転車」(【250】)は、車と同じように交差点の中を回って曲がった場合の割合で、二段階右折に従っていたときは、直進する自転車として考えます(別冊判例タイムズ38号 384頁・401頁)。
左折する車が、左側を直進してきた自転車を巻き込む事故では、自転車を追い越してすぐ左折した車が相手なら自転車0、交差点の手前30mから合図を出して先に左折を始めていた車でも自転車10で、車の合図の遅れや大回りの左折があれば、さらに減らされます(同 431頁【289】【290】)。
どんな事情で割合が動く?(修正要素)

夜間と無灯火
自転車も、夜間(日没から日の出まで)に道路を通るときは前照灯や尾灯をつけ、尾灯をつけないときは基準に合う反射器材を備えなければなりません(道路交通法52条1項、63条の9第2項)。
過失割合では、夜間であることが自転車に5を加える事情になっている事故の形があります。ライトをつけて走る車は自転車の側から見えやすいのに、車の側からは自転車が見えにくいためです。車が無灯火だったときは、反対に自転車の割合を減らします(別冊判例タイムズ38号 388頁)。
自転車の無灯火は「著しい過失」にも当たります
自転車が無灯火だったときは「著しい過失」にも当たり、同じくらいの幅の交差点の出会い頭なら、さらに10が加えられます(同 388頁、396頁【240】)。
二人乗り、傘差し運転、スマートフォンなど
別冊判例タイムズ38号は、自転車の「著しい過失」と、さらに重い「重過失」の例として、次のものを挙げています(同 388頁・389頁、交通事故実況見分調書作成実務必携 267頁)。
- 著しい過失:酒気帯び運転、二人乗り、無灯火、横に並んで走ること(並進)、傘を差すなどしての片手運転、わき見運転などのひどい前方不注意、携帯電話で通話したり画面をじっと見たりしながらの運転
- 重過失:酒酔い運転や、ブレーキのない自転車(いわゆるピスト)での運転
同じくらいの幅の交差点の出会い頭なら、著しい過失で10、重過失で10から15が自転車に加えられます(別冊判例タイムズ38号 396頁【240】)。
歩道の通行と、横断歩道・自転車横断帯
自転車は、歩道のある道路でも車道の左側を通るのが原則です(道路交通法17条1項・4項)。
普通自転車が歩道を通れるのは次のときで、歩道では車道寄りを徐行し、歩行者の邪魔になるときは一時停止します(同法14条3項、63条の4、同法施行令26条。執務資料 道路交通法解説 18訂版 672頁〜674頁)。
- 標識で認められているとき
- 13歳未満の子どもや70歳以上の人などが運転するとき
- 駐車車両が続いているなどで、歩道を通るのがやむを得ないとき
歩道を走っていたこと自体では、割合を増やさないとされています
もっとも、車との事故では、自転車が歩道や横断歩道を走っていたこと自体を理由に、自転車の割合を増やすことはしないとされています(別冊判例タイムズ38号 388頁)。
道路の外から出てくる車との事故でも、歩道を正しく通っていれば割合は動かず、通行が認められていない歩道を走っていたときや、歩道での走り方の決まりに反していたときに5が加えられます(同 446頁・447頁【299】)。
自転車横断帯や横断歩道を通って道路を横切っていた場合は、車が注意を向けてくれると期待できるため、自転車の割合が減らされます(同 387頁・388頁)。

歩行者用信号の青で渡っていた自転車が、曲がってきた車とぶつかった事故で自転車10とされるのはこのためで、歩行者と同じくらいの速さで渡っていたときは10減らされます(同 443頁【297】)。
右側通行、子ども・高齢者、車の側の落ち度
信号機のない交差点で、自転車が道路の右側を通り、しかも車から見て左から入ってきたときは、車から予想しにくいため、自転車に5が加えられます(同 386頁・387頁、396頁【240】)。
自転車に乗っていたのが、おおむね13歳未満の子どもや、おおむね65歳以上の人であれば、自転車の割合は5から10減らされます(同 385頁、396頁【240】、402頁【249】)。
車の側に次のような「著しい過失」があれば自転車の割合が減り、「重過失」があれば、減り方がより大きくなることがあります。
- 車の著しい過失:おおむね時速15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転、ひどいわき見など
- 車の重過失:居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、おおむね時速30km以上の速度違反など
同じくらいの幅の交差点の出会い頭なら、著しい過失で10、重過失で10から20が自転車の割合から減らされます(同 389頁、396頁【240】)。
2026年4月からの青切符で、過失割合は変わる?

2026年4月1日から、16歳以上の人が自転車でした一定の違反に、交通反則通告制度(いわゆる青切符)が使われています。信号無視、一時不停止、右側通行や歩道通行などの通行区分違反などが対象で、期限までに反則金を納めれば、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けずに終わります。16歳未満の人は青切符の対象外で、その違反の多くを指導警告で扱うこれまでの取扱いは変わりません(警察庁「自転車の新しい制度」「取締りについて」、道路交通法125条2項4号、128条2項)。
もっとも、16歳以上でも、違反のたびに青切符が切られるわけではありません。警察は、自転車の違反を見つけたときは基本的に現場で指導警告をし、検挙するのは、事故の原因になるような、歩行者やほかの車両にとって危険性・迷惑性の高い悪質・危険な違反のときだとしています(警察庁「取締りについて」)。
ただし、酒に酔った状態や、基準を超えるアルコールを体に保有した状態(酒気帯び)で運転した場合と、違反によって実際に交通事故を起こした場合は、青切符ではなく刑事手続で扱われます(道路交通法125条2項2号・3号、警察庁「取締りについて」)。
- 16歳未満の人の違反の多くも、これまでどおり指導警告
- 信号無視、一時不停止、通行区分違反など
- 期限までに反則金を納めれば、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けずに終わる
- 酒酔い・酒気帯びの運転
- 違反によって実際に交通事故を起こしたとき
青切符は、自転車に交通ルールを守ってもらうこと、違反した人の責任を実効性のある形で問うこと、違反を簡単・迅速に処理することを目的に導入された、違反の取締りの仕組みです(警察庁「自転車の新しい制度」)。
過失割合の決まり方は、これまでどおり
事故の賠償の過失割合は、これまでどおり民法722条2項のもとで、事故の形と双方の落ち度を比べて決まります。信号無視、右側通行、携帯電話を使いながらの運転などは、青切符が始まる前から自転車の落ち度として割合に反映されてきました(別冊判例タイムズ38号 386頁〜388頁、391頁【236】)。青切符が始まったからといって、自転車の割合が一律に重くなるわけではありません。
計算すると、受け取る額はどう変わる?
信号機のない同じくらいの幅の交差点で、自転車と車が出会い頭にぶつかった事故(基本は自転車20:車80。同 396頁【240】)で、自転車に乗っていた方の損害の合計が600万円、そのうち治療費120万円を車の保険会社がすでに病院に払っている場合で計算してみます。
過失相殺は、損害の全体に割合を掛けてから、すでに払われた分を差し引きます(同 21頁)。
| 事情 | 自転車の過失 | 過失相殺のあとの損害 | すでに払われた治療費 | これから受け取る額 |
|---|---|---|---|---|
| 基本のまま(昼間) | 20% | 480万円 | 120万円 | 360万円 |
| 自転車に乗っていたのが12歳の子ども(児童等で-5) | 15% | 510万円 | 120万円 | 390万円 |
| 車が時速15km以上30km未満の速度違反(車の著しい過失で-10) | 10% | 540万円 | 120万円 | 420万円 |
| 夜間で、自転車が無灯火(夜間で+5、自転車の著しい過失で+10) | 35% | 390万円 | 120万円 | 270万円 |
同じ事故でも、事情によって受け取る額は270万円から420万円まで変わります。表の割合は、基準の修正要素をそのまま足し合わせた目安で、実際の割合は、事故ごとの具体的な事情に応じて決まります(別冊判例タイムズ38号 21頁・385頁)。
すでに払われた治療費にも、割合が掛かります
夜間の無灯火の例では、治療費にも35%が掛かり、そのうち42万円は残りの賠償金から差し引かれる形になります。
どの修正要素が当てはまるかは、証拠で決まります。計算の仕方は交通事故の過失割合と損害賠償請求額の計算方法でも説明しています。
自転車の側の過失が大きいとき

相手の自賠責保険は、被害者の過失が7割未満なら減額なし
車の自賠責保険は、被害者の過失が7割未満なら減額されず、7割以上10割未満でも、けがの分は2割、後遺障害や死亡の分は2割から5割の減額にとどまります(自賠責保険の支払基準 第6)。
自転車が赤信号で入った事故(自転車80:車20。別冊判例タイムズ38号 391頁【236】)でも、相手の自賠責保険に請求できる場合があります。被害者請求のメリット・デメリットとやり方と自賠責保険から払われる慰謝料もご覧ください。
割合を争うために、どんな証拠を集める?

早いうちに確保したい4つの証拠
- ドライブレコーダーと防犯カメラの映像:相手の車や周りの建物の映像は、有力な目撃者にもなります(同 9頁)。上書きされて消える録画方式もあるため、早く保全を求めてください(同 50頁・51頁)。
- 自転車とライトの状態:修理や処分の前に、壊れた場所と、ライトの種類や付いている位置が分かる写真を撮っておいてください。夜間は、ライトをつけていたかどうかで割合が変わります(別冊判例タイムズ38号 388頁)。
- 実況見分:夜は昼と見え方がまったく違います。夜間の事故では、車の前照灯をロービームとハイビームに切り替えながら、相手がどこから見えたかを実際に試して確かめるのが基本とされ、雨の夜のような特別な状況では、事故の直後に確かめておくことが大切だとされています(交通事故実況見分調書作成実務必携 36頁)。救急搬送されて立ち会えなかったときは、相手の説明だけで図面が作られていないか確かめてください。
- 現場の写真:道の広さ、一時停止の標識と停止線、信号機、横断歩道と自転車横断帯の位置を撮っておくと、どの基準が当てはまるかを確かめる手がかりになります。夜間の事故なら、街灯が写るように撮っておいてください(同 151頁)。
刑事記録の取り寄せ方や、実況見分調書の見方は、交通事故の過失割合で説明しています。
こんなときはご相談ください

ひとつでも当てはまったら
- 保険会社から、自転車の側にも過失があると言われた
- 夜にライトをつけていたのに、無灯火だったと言われている
- 歩道や横断歩道を通っていたのに、自転車の割合を大きく示された
- お子さんやご高齢のご家族が、自転車に乗っていて車とぶつかった
- ご自身の過失が大きく、どこに請求できるか分からない
- 弁護士費用特約が使えるか知りたい(弁護士特約の使い方)
参考文献
- 民法722条2項
- 道路交通法2条1項8号・11号、2条3項、14条3項、17条1項・4項、34条3項、52条1項、63条の4、63条の9第2項、70条、125条2項、128条2項、道路交通法施行令26条
- 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第6
- 東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』別冊判例タイムズ38号(判例タイムズ社)21頁、208頁、215頁、228頁、327頁、383頁〜389頁、391頁、396頁〜398頁、401頁・402頁、431頁、435頁・436頁、442頁・443頁、446頁・447頁、452頁
- 道路交通執務研究会編著『執務資料 道路交通法解説 18訂版』(東京法令出版)672頁〜674頁
- 交通事故・事件捜査実務研究会編『交通事故実況見分調書作成実務必携』(立花書房)9頁、36頁、50頁・51頁、151頁、267頁
- 警察庁「自転車の新しい制度」「取締りについて」(自転車ポータルサイト)、「道路交通法の一部を改正する法律(概要)」(令和6年法律第34号)



