この記事のポイント
- 駐車場の通路が「道路」に当たらなくても、裁判所の目安である別冊判例タイムズ38号の駐車場の基準で過失割合を考えます。
- 基本の割合は事故の形で違います。区画から出てきた車70:通路の車30、通路の車80:区画に入ろうとした車20、通路どうしの出会い頭は50:50、歩行者は10%です。
- 車の修理費などの物損は自賠責保険では払われず、請求する側が相手の過失を示す必要があります。ドライブレコーダーや防犯カメラの映像を早めに確保しましょう。



道路のような信号や優先道路の決まりが当てはまらないことが多く、どちらがどれだけ悪いのかで言い分が食い違いやすい事故です。損害は物損にとどまることが多い一方、責任の有無や過失割合の争いで解決に時間がかかりやすいと、実務書も指摘しています(駐車場事故の法律実務 iii頁)。
この頁では、駐車場の通路どうしの出会い頭、通路を進む車と駐車区画から出る車・入る車、歩行者との事故について、基本の割合と修正要素、道路交通法との関係、物損事故の注意点、計算の例を、交通事故を扱う弁護士がまとめました。一般の道路での事故は車同士の事故の過失割合と歩行者と車の事故の過失割合を、全体の考え方は交通事故の過失割合をご覧ください。
駐車場の通路は「道路」? 道路交通法との関係
道路交通法が適用されるのは「道路」で、国道や市町村道などのほか「一般交通の用に供するその他の場所」も含まれます(道路交通法2条1項1号)。誰でも自由に出入りでき、実際に人や車が通っている場所は私有地でも道路に当たります(執務資料 道路交通法解説 18訂版 6頁・7頁)。
ただ、駐車場の通路が道路に当たるかは、駐車場の形や使われ方によって判断が分かれます。
通路が道路でなければ、交差点の優先の決まり(道路交通法36条など)はそのままは使えません。それでも過失割合がなくなるわけではありません。

駐車場の中の「止まれ」や通行方向の矢印は、道路でなければ法律上の義務ではありませんが、管理者が安全のために設け、ほかの車もそれに従うと考えて走っているので、従わなかった車は不利になります(同 495頁)。
区画から通路に出る車には、道路と道路の外との出入りの決まり(道路交通法25条の2第1項)に準じた注意が求められます(同 500頁)。

この基準は大型商業施設のような収容台数の多い駐車場を想定していますが(同 494頁)、小さな駐車場でも、区画と通路がはっきり分かれていれば、区画から出る車に同じように重い注意が求められ、この基準と同じ考え方が当てはまりうるとする実務書もあります(事例にみる新類型・非典型交通事故の過失相殺 186頁)。
駐車場ではどんな事故が多い? 速度が低くてもけがに注意
駐車場の事故には、歩行者と車の事故のほか、通路を走る車同士、通路を走る車と区画に出入りする車、区画に出入りする車同士の事故、切り返しの途中の事故、止まっている車にぶつかる事故があります(駐車場事故の法律実務 17頁・18頁)。別冊判タ38号が基準を示しているのは、下の表の5つの形です。
子どもと高齢の歩行者のけがに注意
駐車場の中は速度が低いものの、けがが軽いとは限りません。子どもは背が低いため、時速10km程度の車に押し倒されただけで頭を路面に打ち、重いけがになることがあります(交通外傷 メカニズムから診療まで 41頁・47頁)。
高齢の歩行者の重傷も、運転者が危険に気づいたときの速度が時速10km以下の事故に多いという分析があります(同 43頁)。頭を打ったときは頭部・脳の後遺障害もご覧ください。
事故の形ごとの基本の過失割合は?
被害者にも過失があれば、その割合の分だけ賠償額が減らされます(民法722条2項)。
表の「○:○」はそれぞれの車の過失の割合(%)、歩行者の数字は歩行者の側から差し引く割合、【 】は別冊判タ38号の図の番号です。基本の割合は典型的な事故を想定した目安で、事情に応じて修正されます(別冊判タ38号 21頁・494頁)。
| 事故の形 | 基本の割合 | 図の番号・頁 |
|---|---|---|
| 通路が交わる所での車同士の出会い頭(直進・右左折を問わない) | 50:50 | 【334】498頁 |
| 通路を進む車と、駐車区画から通路に出てきた車 | 通路の車 30:出てきた車 70 | 【335】501頁 |
| 通路を進む車と、通路から駐車区画に入ろうとした車 | 通路の車 80:入ろうとした車 20 | 【336】503頁 |
| 駐車区画の中にいた歩行者と車 | 歩行者 10% | 【337】506頁 |
| 通路を歩いていた歩行者と車 | 歩行者 10% | 【338】508頁 |
通路が交わる所での出会い頭【334】

次の事情がある車は割合が加えられます(同 495頁・498頁・499頁)。
- 狭い通路・丁字路:自分の通路が狭く相手の通路が明らかに広いとき、丁字路の突き当たりから曲がって出たときは10%。
- 「止まれ」や通行方向の標示に従わなかった:15〜20%(狭い通路と重なっても合わせて20%、丁字路と重なっても合わせて15%)。先に入っていても有利には修正されません。
- その他の著しい過失:ひどい前方不注意のほか、相手が明らかに先に入っていた場合や、手前で減速しなかった場合も原則として当たり、10%。
- 重過失:酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転など(同 496頁)で20%。
通路を進む車と、区画から出てきた車【335】
- 動き出す前なら、止まって左右を確かめられる
- 通路の車の邪魔になるおそれがあれば、出るのを控えるべき
- 前進でも後退でも同じ
- 区画から車が出てくることを、常に考えて走る
- ひどい前方不注意、明らかに速い速度、矢印と逆向きの走行は、10%(速さの程度によっては20%)不利に
区画の車は、動き出す前なら止まったまま左右を確かめられ、通路の車の邪魔になるおそれがあれば出るのを控えるべきだとされます。一方、通路の車も区画から車が出てくることを常に考えて走らなければならず、出てきた車70、通路の車30が基本です。前進か後退かは問いません(別冊判タ38号 500頁・501頁)。
通路の車のひどい前方不注意、ほかの車より明らかに速い速度(制限速度の表示があればそれが目安)、矢印と逆向きの走行は、通路の車の著しい過失として10%(速さの程度によっては重過失として20%)不利になります(同 501頁)。
基準によらず、個別に判断される場合
通路の車が急ブレーキでも止まれない距離まで来てから区画の車が出始めた場合や、通路の車が十分な間をあけて止まっていたのにぶつけられた場合は、この基準によらず個別に判断します(同 500頁)。
実務書は、前者は通路の車に過失なしとされる可能性が高く、後者は過失なしが原則だとしています(駐車場事故の法律実務 76頁・78頁・79頁)。
通路を進む車と、区画に入ろうとした車【336】
駐車場は車を止めるための場所なので、区画に入る動きは原則として通路を走ることより優先されます。通路の車は、入り終わるまで止まって待つか、安全にすれ違える距離をとって相手の動きを見ながら進む義務があるとされ、通路の車80、区画に入る車20が基本です(別冊判タ38号 502頁・503頁)。
入ろうとしていると分かる状態だったことが前提です
ただし、ハザードランプ、ウインカー、バックランプや車の向きから、区画のある程度手前で入ろうとしていると分かる状態だったことが前提で、すぐ近くで急に入り始めた場合などは個別に判断します(同 502頁・503頁)。
いったん全部の車輪が区画に収まった後に、止め直すため通路に出てきた場合は、【335】を参考にします(同 502頁)。これで割合がほぼ逆転することには疑問もあり、中間の割合がふさわしい事案もあると指摘されています(駐車場事故の法律実務 33頁・79頁・80頁)。
区画に入る車が、切り返しの途中でぶつかるまで通路の車に気づかなかった場合などは入る車に10%不利に、通路の車が徐行しなかった(すぐに止まれる速さで進まなかった。道路交通法2条1項20号)場合は通路の車に10%不利に修正します(別冊判タ38号 503頁・504頁)。
歩行者との事故【337】【338】

駐車区画は人が乗り降りする場所でもあり、歩行者専用の通路がある駐車場は多くありません。区画に出入りする車にはいつでも止まれる速さで走る義務がある一方、歩行者も車の動きに気を配るべきだとされ、区画の中の歩行者の基本は10%です(別冊判タ38号 505頁・506頁)。
通路は主に車が動くための場所なので、歩行者は区画の中よりいっそう注意すべきですが、車も人の通行を常に考えて走らなければならず、やはり10%が基本です(同 507頁・508頁)。
| 修正要素 | 駐車区画の中【337】 | 通路【338】 |
|---|---|---|
| 車が区画に入り始めたとき、隣の区画で人が乗り降りしていた | −10% | なし |
| 白線などで示された歩行者用の通路の上にいた | なし | −20% |
| 児童(6歳以上13歳未満)・高齢者(おおむね65歳以上) | −5% | −5% |
| 幼児(6歳未満)・身体障害者等 | −10% | −10% |
| 車の著しい過失/重過失 | −10%/−10% | −10%/−20% |
| 歩行者の急な飛び出し | なし | +10% |
通路を人が歩くのは日常のことなので、「急な飛び出し」は車のすぐ前を急に渡るなど予想外の動きに限られます(同 495頁)。
車の著しい過失には、止めるはずの区画からはみ出して隣の区画の人にぶつかった場合、通路をほかの車より明らかに速く走っていた場合、曲がるときやバックするときに見通しの悪い所で徐行しなかった場合などが挙げられています(同 506頁・508頁)。
実務書の見解:車から降りた人がぶつけられたとき
実務書には、自分の車から降りた人がその区画や隣の区画に出入りする車にぶつけられた場合は、運転者から人がよく見えるので、歩行者の基本の割合は0が妥当だとする見解があります。
ただし、車がゆっくり近づいてくるのが十分見えていたのに、スマートフォンの画面に気を取られるなどして全く避けなかった場合や、降りた区画に十分な広さがあるのに急に隣の区画へ入った場合は、歩行者の割合を5〜10%程度加える余地があるともしています。
止まっている車のドアを開けて人に当てた事故は、安全を確かめずにドアを開けてはならないため(道路交通法71条4号の3)、歩行者の過失は問わないのが妥当だとしています(駐車場事故の法律実務 35頁・36頁)。
基準のない形の事故
- 止まっていた車にぶつけられた:区画に出入りする車が操作を誤って、止まっていた車にぶつけた場合は、止まっていた車に過失はないとするのが原則とされます(駐車場事故の法律実務 78頁・86頁)。
- 区画に入ろうとする車同士:後から来た車が前の車の動きに注意すべきだとして、前の車40、後ろの車60が目安として提案されています(同 83頁)。
- 区画から出る車同士:50:50が目安として提案されています(駐車場事故の法律実務 84頁)。
- 区画に入る車と、区画から出る車:入る車30、出る車70が目安として提案されています(同 85頁)。
割合が変わると、受け取る額はどう変わる?(計算例)

- 相手から受け取る額:40万円×70%=28万円
- 相手に払う額:20万円×30%=6万円
- 差し引き:22万円を受け取る
- 相手から受け取る額:32万円
- 相手に払う額:4万円
- 差し引き:28万円を受け取る
- 相手から受け取る額:24万円
- 相手に払う額:8万円
- 差し引き:16万円を受け取る
- 相手から受け取る額:40万円
- 相手に払う額:0円
- 差し引き:40万円を受け取る
次は、商業施設の駐車場の通路を歩いていた8歳の子どもが、通路を走ってきた車にはねられた事故です【338】。損害(治療費、慰謝料など)の合計を600万円とします。
| 事情 | 子どもの割合 | 受け取れる額 |
|---|---|---|
| 基本(通路の歩行者。年齢による修正の前) | 10% | 540万円 |
| 児童であること(−5%) | 5% | 570万円 |
| 児童で、車のすぐ前に急に飛び出した(+10%) | 15% | 510万円 |
| 児童で急に飛び出したが、車もほかの車より明らかに速く走っていた(−10%) | 5% | 570万円 |
証拠で示せるかどうかで、受け取る額が変わることがあります
この例では、運転の仕方や子どもの動きを証拠で示せるかどうかで、車の事故では手元に残る額が16万円から40万円まで、歩行者の事故では60万円変わります。計算の方法は過失割合と損害賠償請求額の計算方法もご覧ください。
駐車場の事故では、どんな証拠を集めておけばいい?
集めておきたい証拠
- ドライブレコーダーと防犯カメラの映像:捜査の実務書も、これらの確保を求めています(交通事故実況見分調書作成実務必携 19頁)。施設の防犯カメラは、上書きで消える前に管理者に保存を頼んでください。
- 相手の車の合図と向き:ハザードランプ、ウインカー、バックランプがついていたか、車がどちらを向いていたかで、【336】を使えるかが決まります(別冊判タ38号 502頁・503頁)。
- 現場の写真:通路の幅、「止まれ」や矢印の標示、制限速度の表示、歩行者用の通路の白線は、当てはめる基準と修正要素に関わります(同 494頁・495頁・501頁・508頁)。
- 車の傷の写真:事故の様子を推し量る手がかりになり、修理費や評価損を示す資料にもなります(同 6頁)。修理の見積書も残しておいてください。
- 警察の書類:物損事故で実況見分調書がなくても、簡単な図面の付いた物件事故報告書などから、事故直後の当事者の説明が分かることがあります(同 6頁)。

物損が多い駐車場の事故、保険と示談で気をつけることは?
物損の示談で決めた割合に注意
物損の示談で合意した割合を、けがの賠償にも使うと言われることがあります(物損の示談での過失割合の合意は、人損に影響するか)。
- 修理費のほかに請求できるもの:評価損(格落ち)や、仕事で使う車なら休車損害が問題になります。示談の進め方は物損事故の示談交渉の流れと注意点をご覧ください。
- 駐車場の設備が原因のとき:機械式駐車場の設備やコインパーキングのフラップ板の不具合など、駐車場の設備が原因の事故では、駐車場の管理者などの責任(民法717条1項の土地工作物責任)が問題になることがあります(駐車場事故の法律実務 89頁〜93頁)。
こんなときはご相談ください

ひとつでも当てはまったら
- バックで出てきた車にぶつけられたのに、「駐車場の中はお互いさま」と50:50を示された
- 区画に入ろうとしていたのに、通路の車から「急にバックしてきた」と言われている
- 止まっていたのに、こちらにも過失があると言われた(もらい事故で損をしないために)
- 駐車場を歩いていて車に当てられ、歩行者にも1割の過失があると言われた
- けがの治療中なのに、物損の示談を急かされている
- 弁護士費用特約が使えるか知りたい(弁護士特約の使い方)
参考文献
- 東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』別冊判例タイムズ38号(判例タイムズ社)6頁、21頁、494頁〜508頁
- 中込一洋・末次弘明・岸郁子・植草桂子『駐車場事故の法律実務 過失相殺・駐車場管理者の責任』(学陽書房)iii頁、3頁、17頁・18頁、33頁、35頁・36頁、76頁、78頁〜80頁、83頁〜86頁、89頁〜93頁
- 伊豆隆義・九石拓也共編『事例にみる新類型・非典型交通事故の過失相殺』(新日本法規出版)186頁
- 道路交通執務研究会編著・野下文生原著『執務資料 道路交通法解説 18訂版』(東京法令出版)6頁・7頁
- 交通事故・事件捜査実務研究会編『交通事故実況見分調書作成実務必携』(立花書房)19頁
- 一杉正仁・西山慶編『交通外傷 メカニズムから診療まで』(名古屋大学出版会)41頁、43頁、47頁
- 道路交通法 2条1項1号・20号、25条の2第1項、36条、71条4号の3
- 自動車損害賠償保障法 2条2項、3条、11条1項
- 民法 709条、717条1項、722条2項
- 最高裁判所昭和46年10月27日第二小法廷決定(昭和45年(あ)第1848号)・集刑181号1021頁
- 大阪高等裁判所平成14年10月23日判決(平成14年(う)第974号)・高刑集55巻3号1頁



