この記事のポイント
- バイクと車の事故には、車同士とは別の基準があります。右折車との事故や進路変更などでは、同じ形の事故でもバイクの割合が車同士より5〜10%小さく定められています。
- 基本の割合は出発点です。速度違反や合図の有無などの修正要素や、ヘルメットをかぶらずに頭のけがが重くなったことなどで、割合が動くことがあります。
- 計算例では、割合が5%違うだけで受け取る額が約67万円変わります。割合を争うときは、実況見分調書、ドライブレコーダーの映像、傷の写真などが大事な資料になります。


この頁では、右折車と直進バイク、すり抜け、進路変更、追突の基本の過失割合と、割合を動かす事情(修正要素)、ヘルメットやプロテクターの影響、計算例、必要な証拠を、交通事故を扱う弁護士がまとめました。
バイクの過失割合は、車同士とどう違う?
目安になる基準は?

同じ形の事故なら、バイクの割合は小さい
この頁で取り上げる右折車との事故、進路変更、急ブレーキによる追突の基準を、車同士の事故の基準と比べると、同じ形の事故でも、バイクの割合が5〜10%小さく定められています。
たとえば、青信号の交差点で直進車と右折車がぶつかった事故は、車同士なら直進車20%・右折車80%ですが(別冊判例タイムズ38号 228頁【107】)、直進していたのがバイクなら、バイク15%・右折車85%です(同 327頁【175】)。基準の上で、バイクは車より保護される側として扱われているといえます。
バイクには転倒の危険がある

基準の解説も、赤信号で交差点に入ってきた車と、信号に従っていたバイクの事故について、バイクには転倒の危険があるため、ハンドルの切り方が足りなかった、急に止まれば避けられた、というだけで過失を認めるべきではないとしています(別冊判例タイムズ38号 314頁)。
基本の割合は出発点です
修正要素で、割合が動きます
基本の割合はあくまで出発点です。速度違反や合図の有無などの修正要素があれば、事故の形ごとに定められた数値でバイクの割合を加算・減算し、別々の修正要素がいくつか重なれば、それぞれを加えて修正します(別冊判例タイムズ38号 309頁)。
なお、この章の基準は、バイクの側がけがをした場合を想定したものです。それ以外の場面では、車同士の基準を当てはめるのが妥当な場合もあるとされています(別冊判例タイムズ38号 309頁)。
バイクの事故では、どんなけがが多い?
2018年の統計では、事故で死傷した人のうち亡くなった人の割合は、二輪車に乗っていた人が歩行中の人に次いで高くなっています(交通外傷 メカニズムから診療まで 57頁)。同じ年に二輪車に乗っていてけがをした人の主な損傷部位は、脚が約35%、胸が約22%、首が約16%で、亡くなった事故では頭のけがが約4割を占めます(同 12頁)。

後遺障害が残ったときの等級と賠償は、頭部・脳の後遺障害、骨盤・脚・足の後遺障害をご覧ください。
よくある事故の形と、基本の割合は?
右折車と直進バイクがぶつかったら?
交差点で右折する車は、直進してくる車両の進行を妨げてはならないとされています(道路交通法37条)。右折を始めた車と、対向から直進してきたバイクがぶつかるのが、この形の事故です。
双方が青信号で交差点に入った場合の基本は、バイク15%・右折車85%です。右折車が徐行しなかった、バイクの直前で右折を始めた、合図を出さなかった、という事情があれば、それぞれバイクの割合が10%減ります。反対に、バイクに時速15km以上の速度違反があれば10%、30km以上なら20%増えます(別冊判例タイムズ38号 327頁【175】)。
右折する大型車の側面後方にバイクが衝突した場合のように、大型車であることが事故の危険を高めたときは、5%程度の修正をするのが相当とされています(同 310頁)。
バイクが右折し、対向の車が直進してきた場合の基本は、バイク70%・車30%で、車同士の右折車80%より10%小さくなっています(同 328頁【176】、228頁【107】)。二段階右折が必要な交差点で原付がそのまま右折したときは、著しい過失に当たるものの、修正は5%程度にとどめるのが相当とされています(同 328頁)。
車同士の場合は交差点における右折車と直進車の交通事故の過失割合で解説しています。
すり抜け中の事故は?
渋滞した車の列の横や、止まっている車の左側をバイクが進む「すり抜け」は、基準に独立の項目がなく、どのような形でぶつかったかによって当てはめる基準が変わります。
信号のない交差点で、渋滞の列の左側を進んだバイクと、列のすき間を抜けて出てきた車がぶつかった場合は、バイク30%・車70%が基本です。交差点以外の場所(道路の外の駐車場やガソリンスタンドに入る車など)では、バイクの割合が5〜10%減ります(別冊判例タイムズ38号 359頁・360頁【217】)。
速度が出ていると「著しい過失」とされることも
渋滞の列の左側を進んで、列のすき間から出てきた車とぶつかった場合には、速度違反がなくても相当な速度で走っていれば著しい過失とされることがあり、時速15km以上の速度違反があれば著しい過失として扱うべきとされています。著しい過失があれば、バイクの割合が20%増えます(別冊判例タイムズ38号 360頁)。
左折する車との事故は、次のとおりです。
交差点とその手前30メートル以内は、優先道路を通行している場合を除いて追越しが禁止されていて(道路交通法30条3号)、先を走る車の前にバイクが出ることは本来許されません。
それでも、左折車にも左に十分寄らなかったなどの過失があり、左側の車線は事実上バイクの走る車線といえることから、バイクの割合は20%程度にとどめるのが相当とされています(別冊判例タイムズ38号 354頁)。
すり抜けについてはバイクのすり抜け事故の過失割合で詳しく解説しています。
進路変更で接触したら?
車両は、後ろから来る車両の速度や方向を急に変えさせるおそれがあるときは、進路を変えてはならないとされています(道路交通法26条の2第2項)。
- 車が合図を出さなかったときや、進路変更禁止の標示がある場所だったときは、バイクの割合がさらに20%減ります(同 371頁)。
前の車が進路を変えた場合、車同士なら後ろの直進車30%・進路変更車70%ですから(別冊判例タイムズ38号 291頁【153】)、バイクの割合が10%小さくなっています。
なお、隣の車線の車両を追い抜いた直後に前へ割り込んだ場合などは、この基準の対象外で、個別の事情から割合を考えます(同 370頁)。
追突の割合は?
後ろの車両は、前の車両が急に止まっても追突しないだけの車間距離を保たなければなりません(道路交通法26条)。そのため、信号待ちや渋滞で止まっていたバイクに車が追突した場合、バイクの割合は0%が基本です(別冊判例タイムズ38号 373頁)。
割合が問題になるのは、前の車両が理由のない急ブレーキをかけた場合です。道路交通法24条は、危険を防ぐためやむを得ない場合を除いて急ブレーキを禁じています。基本の割合は次のとおりです(別冊判例タイムズ38号 374頁【227】【228】)。
- 前の車の急ブレーキでバイクが追突した場合:バイク60%・車40%(車同士なら追突した車70%。別冊判例タイムズ38号 294頁【154】)
- 前のバイクの急ブレーキで車が追突した場合:バイク20%・車80%
追突については追突事故の過失割合を事故状況別に一覧表で解説もご覧ください。
基本の過失割合を一覧で見ると?

| 事故の形 | バイク:車 | 基準の頁 |
|---|---|---|
| 青信号で直進するバイクと、青信号で右折する車 | 15:85 | 327頁【175】(車同士なら20:80) |
| 青信号で右折するバイクと、青信号で直進する車 | 70:30 | 328頁【176】(車同士なら右折車80) |
| 信号のない交差点で、渋滞の列の左側を進むバイクと、列のすき間から出てきた車 | 30:70 | 360頁【217】 |
| 左折の合図を出して先を走る車の左側を直進したバイク | 20:80 | 354頁【213】 |
| バイクを追い越して、または並んだまま左折した車 | 10:90 | 356頁【214】 |
| 前の車が進路を変え、後ろから直進してきたバイクと接触 | 20:80 | 371頁【225】(車同士なら30:70) |
| バイクが進路を変え、後ろから直進してきた車と接触 | 60:40 | 371頁【226】 |
| 止まっていたバイクに車が追突 | 0:100 | 373頁 |
| 車の理由のない急ブレーキで、バイクが追突 | 60:40 | 374頁【227】(車同士なら追突車70) |
| バイクの理由のない急ブレーキで、車が追突 | 20:80 | 374頁【228】 |
車同士の事故の割合は車同士の事故の過失割合にまとめています。
ヘルメットやプロテクターがないと、割合は変わる?
道路交通法は、自動二輪車の運転者に、乗車用ヘルメットをかぶって運転し、同乗者にもかぶらせることを、原付(一般原動機付自転車)の運転者に、ヘルメットをかぶって運転することを義務づけています(71条の4第1項・第2項)。
ヘルメットをかぶらないと、割合が加算されることも
ヘルメットをかぶらなかったために頭のけがが重くなったなど、義務違反が損害の拡大につながったといえるときは、「著しい過失」に準じてバイクの割合を加算するのが相当とされています(別冊判例タイムズ38号 312頁・372頁)。高速道路でのヘルメット不着用は、さらに重い「重過失」と評価すべきとされています(同 312頁)。
加算が問題になるのは、頭のけがなど、ヘルメットをかぶっていれば軽くすんだといえる場合です。

胸のプロテクターは?
胸のプロテクターは、衝撃を分散・吸収して肋骨の骨折などを防ぐために着用が勧められています(交通外傷 メカニズムから診療まで 61頁)。もっとも、法律で着用が義務づけられているのはヘルメットで、別冊判例タイムズ38号の単車の章の初めで説明されている主な修正要素にも、プロテクターの有無は挙げられていません(別冊判例タイムズ38号 309頁〜312頁)。
事故で傷んだヘルメットやライディングウェア、プロテクターは、物の損害として請求できます。着ていた服や持っていた物(着衣・携行品)の損害は、裁判では、購入の時期や使っていた期間が考慮され、購入価格から減らした額とされることがあります(赤い本 2020年版 上巻 261頁)。

捨てずに保管してください。
計算すると、受け取る額はどう変わる?

| 損害の項目 | 金額 |
|---|---|
| 治療費(相手の保険会社が病院に支払い済み) | 2,000,000円 |
| 休業損害 | 1,000,000円 |
| 入院・通院の慰謝料 | 1,500,000円 |
| 後遺障害の慰謝料(12級) | 2,900,000円 |
| 逸失利益(500万円×14%×8.5302) | 5,971,140円 |
| 合計 | 13,371,140円 |
後遺障害の慰謝料は裁判の基準の目安です(赤い本 2020年版 上巻 196頁)。逸失利益は「事故前の収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数」で計算し(同 100頁)、12級の喪失率14%(同 441頁)、喪失期間を10年と仮定して、年3%の係数8.5302を使いました(同 429頁)。
係数の基になる法定利率
中間利息を差し引くときの利率(法定利率)は、令和2年3月31日までの事故では年5%でしたが、令和2年4月1日から年3%になり、その後は3年ごとに見直される仕組みです(赤い本 2020年版 上巻 100頁)。令和11年3月31日までの事故は年3%のままと、法務省が公表しています(「令和8年4月1日以降の法定利率について」)。見直しで利率が変わったときは、事故の時期に合った係数を使います。
相手の保険会社がすでに病院に払った治療費も、損害の合計に含めてから割合を掛け、そのあとで差し引きます。基本の15:85の場合は、次のように計算します。
- 損害の合計を出す治療費も含めて13,371,140円
- バイクの過失の分を減らす基本の15:85なら、13,371,140円×85%
- 支払い済みの治療費を差し引く相手の保険会社が病院に払った200万円
- 受け取る額は約937万円
| 過失割合(バイク:車) | 計算 | 受け取る額 |
|---|---|---|
| 基本の15:85 | 13,371,140円×85%−200万円 | 約937万円 |
| 車同士の基準だったら(20:80) | 13,371,140円×80%−200万円 | 約870万円 |
| 右折車が徐行しなかった(5:95) | 13,371,140円×95%−200万円 | 約1,070万円 |
| バイクに時速15km以上の速度違反(25:75) | 13,371,140円×75%−200万円 | 約803万円 |
計算例では、5%の違いで約67万円の差
この例では、割合が5%違うだけで約67万円、10%違えば約134万円の差になります。治療費も損害の合計に含めて割合を掛けるため、治療費が大きいほど、自分の割合の分だけ手元に残る額が減ります。
計算の方法は交通事故の過失割合と損害賠償請求額の計算方法、逸失利益は交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法でも解説しています。
割合を争うときは、どんな資料と証拠が要る?
集めておきたい資料と証拠
- 実況見分調書:警察が事故現場で作る記録です。衝突した地点のほか、相手を最初に見つけた地点や、見通しから見つけられたはずの地点が書かれ、過失を判断する大事な資料になります(交通事故実況見分調書作成実務必携 35頁)。
- ドライブレコーダーと防犯カメラの映像:バイクに付けたカメラ、相手の車や後ろの車の映像、近くの店などの防犯カメラの映像です。時間がたつと消されることがあるので、早めに保存を頼みます。
- バイクと車の傷の写真:傷の位置や向き、へこみの深さは、ぶつかった角度や速度を考える手がかりになります。修理や廃車の前に撮っておきます。
- 現場の写真:信号の位置、見通し、車線の数、進路変更禁止の標示などを記録します。

救急搬送されると、最初の実況見分は相手の説明をもとに行われることがあります。警察向けの実務書も、入院した当事者は立ち会えるようになった時点で立ち会わせて見分するよう求めています(交通事故実況見分調書作成実務必携 314頁)。相手の説明と食い違う点があれば、ご自身が立ち会う見分を警察に申し出てください。
右折車の側から「バイクの速度が出ていた」と言われたときは、速度違反が割合を10〜20%動かす修正要素なので(別冊判例タイムズ38号 327頁)、映像や傷の状態から実際の速度を確かめることが大切です。事故の届出の記録は交通事故証明書は何に使う?で解説しています。
こんなときはご相談ください

ひとつでも当てはまったら
- 右折車の保険会社から「バイクの速度が出ていた」と言われ、示された割合に納得できない
- すり抜けの途中の事故で、バイク側の割合が大きいと言われた
- ヘルメットやプロテクターを理由に、過失を加算すると言われた
- 救急搬送されて、実況見分に立ち会えていない
- けがが重く、後遺障害の申請も考えている(交通事故の後遺障害)
参考文献
- 東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂5版〕』(別冊判例タイムズ38号)228頁【107】、291頁【153】、294頁【154】、309頁〜312頁、314頁【160】【161】、327頁【175】、328頁【176】、354頁【213】、356頁【214】、359頁・360頁【217】、370頁〜374頁【225】〜【228】
- 道路交通法 24条、26条、26条の2、30条、37条、71条の4
- 一杉正仁・西山慶編『交通外傷 メカニズムから診療まで』(名古屋大学出版会)12頁・13頁、57頁・58頁、60頁・61頁
- 交通事故・事件捜査実務研究会編『交通事故実況見分調書作成実務必携』(立花書房)35頁、314頁
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 100頁、196頁、261頁、429頁、441頁
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」



