この記事のポイント
- 人工骨頭・人工関節に入れ替えた関節は、手術のあとどれだけ動いても10級(腕は10級10号、脚は10級11号)に当たります。
- 動く範囲がけがをしていない側(健側)の2分の1以下なら8級(腕は8級6号、脚は8級7号)です。角度は、原則として医師が動かした角度を5度きざみで測ります。
- 10級か8級かで、裁判の基準による慰謝料の目安は550万円と830万円、労働能力喪失率は27%と45%。左右の角度をきちんと測ってもらうことが大切です。


交通事故の骨折で、骨の頭を人工骨頭に入れ替えたり、関節ごと人工関節に入れ替えたりした場合、その関節は、手術のあとどれだけ動いても、後遺障害の10級(腕の関節は10級10号、脚の関節は10級11号)に当たります。
動く範囲が、けがをしていない側(健側)の2分の1以下に制限されていれば、8級(腕は8級6号、脚は8級7号)です(せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準。以下「認定基準」)。対象は、腕の肩・肘・手首、脚の股関節・膝・足首の関節です。
裁判の基準による後遺障害の慰謝料の目安は10級が550万円、8級が830万円、労働能力喪失率は27%と45%で、どちらになるかで賠償額が大きく変わります(赤い本 2020年版 上巻 196頁・441頁)。
8級と10級を分けるのは、手術のあとに関節がどこまで動くかという角度です。角度は、原則として医師が関節を動かしたときの角度を5度きざみで測り、健側と比べます。
この頁では、入れ替えることになる骨折、関節ごとの8級の目安の角度と測り方、身体障害者手帳との違い、慰謝料・逸失利益と将来の入れ替え手術の費用、等級を認めてもらうための資料を、表と計算例で説明します。脚や腕のけが全体は、骨盤・脚・足の後遺障害と肩・腕・手の後遺障害にまとめています。
人工骨頭・人工関節は何級? 動く範囲が健側の2分の1以下なら8級、それ以外は10級
自賠責保険の後遺障害の等級は、原則として労災保険の障害等級認定の基準に準じて認定されます(自賠責保険の支払基準 第3。赤い本 2020年版 上巻 437頁)。認定基準は、人工骨頭・人工関節に入れ替えた関節を、次のように扱っています。
- 慰謝料の目安(裁判の基準):830万円
- 労働能力喪失率:45%
- 自賠責保険の保険金額:819万円
- 慰謝料の目安(裁判の基準):550万円
- 労働能力喪失率:27%
- 自賠責保険の保険金額:461万円
文言と保険金額は自動車損害賠償保障法施行令の別表第二によります。動く範囲が2分の1を超える人工関節を10級と扱うことは、平成16年の認定基準の改正で定められました(認定基準の通達本文 2(2)ア・(3)ア)。
同じ角度なら入れ替えた関節が重い等級(ほぼ動かない場合を除く)
入れ替えていない関節では、健側の4分の3以下で12級、2分の1以下で10級、固まって動かない(強直)ときなどに8級なので(認定基準)、ほとんど動かない場合を除き、同じ角度でも入れ替えた関節のほうが重い等級になります(下の「動く範囲はどう測る?」の図)。
どんな骨折で入れ替えるの? 大腿骨頚部骨折など
大腿骨頚部骨折(股関節)

ずれの大きい骨折は、金属で固定しても骨がつかない(偽関節)、骨頭が壊死するといったことが高い割合で起こるため、高齢の方では人工骨頭に入れ替える手術が行われ、活動的な方などには人工股関節全置換術が行われることもあります(骨折の治療指針とリハビリテーション 208頁・210頁、股関節・骨盤の画像診断 211頁)。
若い方では、人工骨頭が将来入れ替えを要する可能性を考えて、できるだけ自分の骨頭を残して固定するのが一般的とされます(標準整形外科学 第14版 805頁)。
人工骨頭は太ももの骨の側だけを入れ替え、骨盤側の受け皿(寛骨臼)は自分の軟骨のまま使います。人工股関節は、受け皿の側と太ももの側の両方を入れ替えます(標準整形外科学 第14版 644頁、股関節・骨盤の画像診断 128頁)。等級では、どちらも同じ扱いです(認定基準)。
金属で固定したあとに骨頭が壊死するなどして、あとから人工股関節に入れ替えることもあります(骨折の治療指針とリハビリテーション 216頁)。骨頭が遅れてつぶれてくるのは手術から1〜2年以内が多く、その場合は人工骨頭や人工関節が選ばれることが多いとされます(股関節・骨盤の画像診断 51頁)。
上腕骨近位端骨折(肩)

肩に近い端が骨頭・大結節・小結節・骨の軸の4つの部分に割れて大きくずれた骨折や、骨頭の関節の面が大きく壊れた骨折などは、骨頭が壊死するおそれが高いため、人工骨頭に入れ替えることがあります(骨折の治療指針とリハビリテーション 76頁・79頁・80頁)。
受け皿(関節窩)の側もへこんだときは人工肩関節が選ばれ(同 80頁)、治療のあとに骨頭が壊死して、あとから人工骨頭が必要になることもあります(同 89頁)。
膝・足首・肘・手首

骨折のあと、骨の並びや関節の面のかみ合わせ、関節の安定性の乱れが大きいと、けがのあとの変形性関節症が進み、ひどい場合は人工関節や関節を固める手術が必要になります(骨折合併症 白熱講義 349頁)。
足首では、骨折のあとの変形性関節症が進んで関節を固める手術や人工足関節に至った例を見ると、原因となった骨折の約半数がくるぶしの骨折、約3割がピロン骨折(すねの骨の、足首の関節の面が折れる骨折。骨折の治療指針とリハビリテーション 293頁)で、けがからそこに至るまで平均約21年かかったという報告があります(骨折合併症 白熱講義 420頁)。
関節ごとに8級になる角度は? 股関節・膝・足首・肩・肘・手首
関節ごとに、比べる動き(主要運動)と8級になる角度の目安をまとめました。健側が参考可動域どおりに動く場合の計算で、実際には、ご自身の健側を測った角度の2分の1で判断します。
| 関節と等級(8級/10級) | 比べる動き(主要運動)と参考可動域 | 8級の目安(2分の1以下) |
|---|---|---|
| 股関節 8級7号/10級11号 | ①曲げ伸ばし(屈曲・伸展の合計):125度+15度=140度 ②脚を開く・閉じる(外転・内転の合計):45度+20度=65度 | ①70度以下 ②32.5度以下 |
| 膝 8級7号/10級11号 | 曲げ伸ばし(屈曲・伸展の合計):130度+0度=130度 | 65度以下 |
| 足首 8級7号/10級11号 | つま先を下げる・上げる(底屈・背屈の合計):45度+20度=65度 | 32.5度以下 |
| 肩 8級6号/10級10号 | ①腕を前に上げる(屈曲):180度 ②横に上げる・下ろす(外転・内転の合計):180度+0度=180度 | ①90度以下 ②90度以下 |
| 肘 8級6号/10級10号 | 曲げ伸ばし(屈曲・伸展の合計):145度+5度=150度 | 75度以下 |
| 手首 8級6号/10級10号 | 手のひら側・甲側に曲げる(屈曲・伸展の合計):90度+70度=160度 | 80度以下 |
主要運動と、曲げと伸ばしを合計して比べることは、認定基準の別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」(以下「測定要領」)によります。参考可動域は日本整形外科学会などが定める値です(標準リハビリテーション医学 第4版 398頁〜401頁)。角度は5度きざみで測るので、「32.5度以下」は実際には30度以下のときです。
股関節と肩は、2つの動きを両方測ってもらう
股関節と肩は、主要運動が2つあります。入れ替えていない関節の10級・12級は、2つのうちどちらか一方が基準以下なら当たるとされています(測定要領)。人工骨頭・人工関節の8級の「2分の1以下」を2つの主要運動のどちらで判断するかは、認定基準に書かれていません。
2つの主要運動のどちらも、左右とも測って後遺障害診断書に書いてもらいましょう。
2つ以上の関節を入れ替えたら何級?
| 入れ替えた関節と等級 | 自賠責保険での扱い | 慰謝料の目安(裁判の基準) | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|
| 同じ脚(腕)の2つの関節が、どちらも8級に当たる | 6級7号(腕は6級6号) | 1,180万円 | 67% |
| 左右の関節が、どちらも8級に当たる | 併合6級 | 1,180万円 | 67% |
| 左右の一方が8級、他方が10級に当たる | 併合7級 | 1,000万円 | 56% |
| 左右の関節が、どちらも10級に当たる | 併合9級 | 690万円 | 35% |
6級7号・6級6号は、別表第二の「三大関節中の二関節の用を廃したもの」です。
両方の股関節を入れ替えたときなどは比べる健側がないので、参考可動域(股関節なら曲げ伸ばし140度、開く・閉じる65度)と比べ(測定要領)、左右それぞれの等級を併合します。
後遺障害が2つ以上あるときの保険金額
後遺障害が2つ以上あるときの保険金額は、重いほうの等級を、5級以上が2つ以上なら3級、8級以上が2つ以上なら2級、13級以上が2つ以上なら1級繰り上げた等級の金額です(自動車損害賠償保障法施行令2条1項3号ロ・ハ・ニ)。1級繰り上げるときは、繰り上げた等級の金額がそれぞれの等級の金額の合計を超えるなら、合計の額までです(同号ニ)。
たとえば、人工関節の10級(461万円)のほかに13級(139万円)の後遺障害もあるときは、併合9級ですが、保険金額は9級の616万円ではなく、合計の600万円です。
表の組み合わせの保険金額は、6級が1,296万円、7級が1,051万円、9級が616万円です(10級2つの合計922万円より少ないので616万円)。
動く範囲はどう測る? 健側との比べ方
動く範囲の測り方(5つの要点)
- 健側と比べる:健側にも障害があるときは、参考可動域と比べます。
- 同じ面の動きは合計する:曲げと伸ばし、開くと閉じるは、2つの角度を足します。肩の前に上げる動きと後ろに上げる動きは別々に見ます。
- 医師が動かした角度で:原則は他動運動の角度です。神経の麻痺で自分では動かせない場合や、動かすと我慢できない痛みが出ると医学的に判断される場合などは、自分で動かした角度(自動運動)を参考にし、その旨を書きます。
- 5度きざみで:角度計で5度きざみで測ります。股関節の曲げは、膝を曲げた姿勢で測ります。
- 原因を明らかにしてから:動かない原因を明らかにしてから測る必要があるとされています。
いずれも測定要領によります。
次の図は、股関節の曲げ伸ばしを例に、入れ替えた場合と入れ替えていない場合の等級の分かれ目を並べたものです。
図の例で、入れ替えた側が65度なら8級7号、100度なら10級11号です。入れ替えていない股関節なら、65度は10級11号、100度は12級7号です。

図と例は、曲げ伸ばしの角度で比べた場合の目安です。開く・閉じるの動きの扱いは、上に書いたとおり認定基準に書かれていません。また、入れ替えていない関節では、主要運動の角度が基準をわずかに上回るときに、参考運動(股関節では外にひねる・内にひねる動き)の制限もあわせて見ることがあります(測定要領)。
痛みや脱臼のおそれで止めたときは、その事情も
人工骨頭・人工股関節では、股関節を曲げて脚を内に寄せて内にひねる姿勢などで脱臼するおそれがあり、脱臼しやすい姿勢を避けるよう指導されます(骨折の治療指針とリハビリテーション 212頁・213頁、標準整形外科学 第14版 918頁)。
痛みなどが角度に影響するときはその旨を書くこととされているので(測定要領)、痛みや脱臼のおそれで動かす範囲を止めたときは、その事情も書いてもらいましょう。
身体障害者手帳の等級と同じ? 基準が違います

身体障害者手帳の等級と、自賠責保険の後遺障害の等級は、別の制度で基準も違います。
手帳では、人工骨頭・人工関節は手術のあと経過が安定した時点の機能障害の程度で判定され(新訂第五版 身体障害認定基準及び認定要領 342頁)、人工関節を入れたことだけで一律に4級とはしないとされています(同 418頁)。基準は、健側との比ではなく、医師が動かしたときに何度動くかという角度そのもので決まっています(同 341頁・343頁・345頁・346頁)。
| 関節 | 自賠責保険(人工骨頭・人工関節) | 手帳の「全廃」の例 | 手帳の「著しい障害」の例 |
|---|---|---|---|
| 股関節 | 健側の2分の1以下で8級7号、それ以外は10級11号 | 4級:各方向の連続した可動域が10度以下 | 5級:可動域30度以下 |
| 膝 | 同上 | 4級:可動域10度以下 | 5級:可動域30度以下 |
| 足首 | 同上 | 5級:可動域5度以内 | 6級:可動域10度以内 |
| 肩 | 健側の2分の1以下で8級6号、それ以外は10級10号 | 4級:可動域30度以下 | 5級:可動域60度以下 |
| 肘 | 同上 | 4級:可動域10度以下 | 5級:可動域30度以下 |
| 手首 | 同上 | 4級:可動域10度以下 | 5級:可動域30度以下 |
手帳には、筋力テストや関節のぐらつきによる基準もあります(新訂第五版 身体障害認定基準及び認定要領 343頁・345頁・346頁)。たとえば、健側の膝の曲げ伸ばしが130度の方が人工膝関節に入れ替え、60度まで動く場合は、次のとおりです。
- 健側と比べて決まる
- 何度動くかという角度そのもので決まる
膝の可動域90度以下は「軽度の障害」(7級)の例ですが、7級の障害が1つだけでは手帳の交付の対象になりません(新訂第五版 身体障害認定基準及び認定要領 342頁・346頁)。反対に、手帳を受け取っても、それで自賠責保険の等級が決まるわけではありません。
慰謝料・逸失利益はいくら違う? 将来の入れ替え手術の費用も
計算例:8級と10級の差は?

係数を計算する法定利率は、令和2年4月1日以降の事故では年3%です(赤い本 2020年版 上巻 100頁。令和8年4月1日から令和11年3月31日までの事故も年3%。令和7年法務省告示第73号)。症状固定のとき40歳、年収500万円の方なら、67歳までの27年の係数は18.3270です(赤い本 2020年版 上巻 429頁)。
| 項目 | 10級(喪失率27%) | 8級(喪失率45%) |
|---|---|---|
| 逸失利益 | 500万円×27%×18.3270 =2,474万1,450円 | 500万円×45%×18.3270 =4,123万5,750円 |
| 後遺障害慰謝料 | 550万円 | 830万円 |
| 合計 | 3,024万1,450円 | 4,953万5,750円 |
この例では、10級か8級かで約1,929万円違います。

基準の違いは後遺障害の慰謝料計算基準の比較と計算方法、職業ごとの計算は交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法で説明しています。
将来の入れ替え手術(再置換)の費用は?
人工股関節では、摩耗の粉で骨が溶けることなどにより緩みが生じることがあり、緩んだときは入れ替えの手術(再置換術)が行われます。高度な技術を要する手術で、骨が大きく壊れる前に行う必要があるとされます(標準整形外科学 第14版 637頁・643頁・644頁)。
人工股関節の耐用年数は、近年15〜20年程度とされます
再置換が必要になる合併症には、緩み、人工関節の破損、感染、脱臼のくり返し、人工関節のまわりの骨折などがあり、人工股関節の耐用年数は近年15〜20年程度とされます(股関節・骨盤の画像診断 128頁・132頁)。
深い部分の感染の割合も、初めての手術の0.2〜2.9%に対し、再置換術では0.5〜17.3%程度とされています(標準整形外科学 第14版 236頁)。
症状固定のあとの治療費は、一般には認められないことが多いものの、その支出が相当なときは認められるとされ、裁判では将来の手術費が認められることもあります(赤い本 2020年版 上巻 7頁・9頁)。

将来の費用を今まとめて受け取るときは、その費用を払う時までの利息分(中間利息)を差し引くのが通常で(赤い本 2020年版 上巻 8頁・10頁)、差し引く割合は事故の時点の法定利率によります(民法417条の2第2項・722条1項)。年3%の現価表(赤い本 2020年版 上巻 428頁)で計算すると、見込み額100万円あたりの今の価値は次のとおりです。
| 入れ替えが必要になる時期 | ライプニッツ係数(現価表・年3%) | 見込み額100万円あたりの今の価値 |
|---|---|---|
| 10年後 | 0.7441 | 74万4,094円 |
| 15年後 | 0.6419 | 64万1,862円 |
| 20年後 | 0.5537 | 55万3,676円 |
| 30年後 | 0.4120 | 41万1,987円 |
今の価値は、表の小数第8位までの係数で計算しました。入れ替えが2回以上見込まれるときは、回ごとに計算して合計します。
定期金による賠償という考え方
若い方で将来の悪化と人工関節の手術が予想される場合について、等級が12級から8級相当まで変わりうることなどから、逸失利益を定期的に受け取る方法(定期金)による賠償が相当な場合もありうるとする裁判官の講演があります(赤い本 2022年版 下巻(講演録編)島崎卓二「後遺障害逸失利益について定期金賠償方式が認められる事案」13頁・14頁)。
等級を認めてもらうには? そろえたい資料
等級を認めてもらうための資料
- 手術記録と手術のあとのレントゲン:どの関節を、人工骨頭と人工関節のどちらに入れ替えたかが分かるもの
- 後遺障害診断書の角度:主要運動を左右とも、他動運動の角度で。股関節と肩は2つの主要運動の両方。健側の欄が空いていないか確かめる
- 痛みや脱臼のおそれ:そのために動かす範囲を止めたときは、その旨
- 脚の長さ:左右の長さが変わったときは、上前腸骨棘(腰骨の前の出っ張り)から内くるぶしの下の端までを左右で測った値(認定基準)。1cm以上短くなれば13級8号、3cm以上で10級8号、5cm以上で8級5号です(別表第二)
- 仕事と生活で困っていること:立ち仕事、しゃがむ・正座、階段、靴下をはくことなどを具体的に
- 将来の入れ替えの見込み:必要になる見込み、時期、費用についての主治医の意見
大腿骨頚部骨折の手術のあとのリハビリは、少なくとも6か月程度続けると機能の回復が期待できる一方、手術の前と同じ程度まで回復するとは限らないとされています(骨折の治療指針とリハビリテーション 216頁)。症状固定の時期は主治医とよく相談してください(交通事故で症状固定したときの後遺障害等級認定手続き)。認められた等級に納得できないときは、異議申立てができます。

よくある質問
事故の前から、同じ関節に人工関節が入っていました。
すでにあった後遺障害の程度が事故で重くなった(加重した)場合、自賠責保険の保険金額は、今の等級の金額から、すでにあった等級の金額を差し引いた額です(自動車損害賠償保障法施行令2条2項)。たとえば、事故の前の状態が10級に当たり、事故で8級に当たる状態になったなら、819万円−461万円=358万円です。事故の前の手術記録や、どこまで動いていたかが分かる記録を集めておきましょう。
今は金属で固定していますが、将来人工関節が必要になるかもしれないと言われました。
示談や等級の認定のあとに症状が悪化して人工関節の手術が必要になった場合について、当初予想しなかった損害が広がったものとして、後の手術とその後の経過を経た症状固定の日が時効の数え始めになる余地があるとする裁判官の講演があります。一方、はじめから同じ状態で医師の判断が変わっただけなら、はじめの時点から数えることになるとされています(赤い本 2010年版 下巻(講演録編)千葉和則「後遺障害と消滅時効・除斥期間について」17頁。平成21年の講演)。示談の前に、将来の見通しを主治医に確かめておきましょう。後遺障害の全体は交通事故の後遺障害(けがの部位から探す)にまとめています。
参考文献
- 自動車損害賠償保障法施行令 2条、別表第二
- 民法 404条、417条の2、722条
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」(令和7年法務省告示第73号)
- 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第3
- せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準(平成16年6月4日基発第0604003号)と別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」
- 標準整形外科学 第14版(医学書院)200頁、236頁、637頁、643頁・644頁、805頁、918頁
- 骨折の治療指針とリハビリテーション 76頁、79頁・80頁、89頁、208頁、210頁、212頁・213頁、216頁、293頁
- 股関節・骨盤の画像診断 51頁、128頁、132頁、211頁
- 骨折合併症 白熱講義 349頁、420頁
- 標準リハビリテーション医学 第4版(医学書院)398頁〜401頁
- 新訂第五版 身体障害認定基準及び認定要領 341頁〜343頁、345頁・346頁、418頁
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 7頁〜10頁、99頁・100頁、196頁、428頁・429頁、437頁、441頁
- 同 2010年版 下巻(講演録編)千葉和則「後遺障害と消滅時効・除斥期間について」17頁
- 同 2022年版 下巻(講演録編)島崎卓二「後遺障害逸失利益について定期金賠償方式が認められる事案」13頁・14頁



