この記事のポイント
- 首・背中・腰のけがで多いのは、むちうち・椎間板ヘルニア・圧迫骨折などです。
- 痛みやしびれは、医学的に証明できれば12級、説明できれば14級と区別する考え方がとられているといわれます。どちらになるかで、賠償額が大きく変わります。
- 等級を認めてもらうには、事故の直後からの通院の記録・MRI・神経学的検査・後遺障害診断書をそろえることが大切です。


追突されたあとの首の痛みや腕のしびれ、腰の痛みや脚のしびれが、治療を続けても残ることがあります。そのとき、後遺障害の等級が認められるかどうかで、受け取れる賠償額は大きく変わります。
この頁では、首・背中・腰のけがで残りやすい症状と、認められる等級、等級を認めてもらうために必要な検査と資料を、交通事故を扱う弁護士がまとめました。
首・背中・腰には、どんなけがが多い?
むちうち(頚椎捻挫など)

骨や関節に明らかな変化がないのに、事故のあとから首・肩・腕の痛みがしつこく続き、めまい、耳鳴り、吐き気を伴うこともあります(標準整形外科学 第14版 100頁)。
「症状は軽い」と言われることがあるけが
画像に写る変化がないことが多く、症状を客観的に示しにくいため、保険会社から「症状は軽い」「事故との関係が分からない」と言われることがあるけがです。
むちうちについては、むち打ち(末梢神経障害)についてとむちうちで後遺症が残ったら後遺障害等級は何級?でも詳しく解説しています。
椎間板ヘルニア
背骨の骨と骨の間にある椎間板の中身が後ろ側に飛び出して、神経を圧迫した状態です。
首では、片側の腕の痛み・しびれ・力が入りにくいといった症状が出ます(標準整形外科学 第14版 522頁)。
腰では、腰の痛みと片側の脚の痛みが主な症状で、脚の感覚が鈍くなったり、力が入りにくくなったりすることもあります(同 557頁〜559頁)。

ヘルニアは、症状のない人の画像にも写ることがある
注意が必要なのは、椎間板は年齢とともに傷んでいくもので、椎間板のふくらみやヘルニアは、症状のない人の画像にも写ることがある点です(脊椎MRI読影の一手 2頁・3頁、標準整形外科学 第14版 513頁・522頁)。
そのため、画像にヘルニアが写っているだけでは「事故の前からあった」と言われることがあります。
圧迫骨折など背骨の骨折

折れた椎体はつぶれた形になることが多く、骨がつながったあとも、その形のまま固まることがあります(椎体骨折診療ガイド 3頁・4頁)。
背骨の中を通る脊髄が傷ついて手足に麻痺が出た場合は、脊髄・神経の後遺障害をご覧ください。
どんな後遺障害の等級が認められる?
首・背中・腰のけがで認められる主な等級は、次のとおりです。等級は自動車損害賠償保障法施行令の別表第二で決まっています。
| 等級 | 後遺障害の内容 | 主な例 |
|---|---|---|
| 14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | むちうち・腰椎捻挫などで痛みやしびれが残り、医学的に説明できるもの |
| 12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 椎間板ヘルニアなどで、痛みやしびれを画像と神経の検査で医学的に証明できるもの |
| 11級7号 | 脊柱に変形を残すもの | 背骨の圧迫骨折が画像で確かめられるもの、背骨の固定術を受けたものなど |
| 8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの | 背骨の骨折や固定術のために、首または胸・腰の動く範囲が、参考となる角度の半分以下になったものなど |
| 6級5号 | 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | 2つ以上の椎体の圧迫骨折で背骨が前に大きく曲がったもの(後彎)、首と胸・腰の両方が固まって動かなくなったもの(強直)など |
表の「主な例」のよりどころ
自賠責保険の等級の認定は、原則として労災保険の障害等級認定の基準に準じて行われます(自賠責保険の支払基準。赤い本 2020年版 上巻 437頁)。
表の「主な例」のうち、11級・8級・6級は、厚生労働省の障害等級認定基準(平成16年6月4日基発第0604003号)をもとにまとめたものです。14級・12級は、下の「14級と12級の分かれ目」で述べる自賠責保険の実務の考え方をもとにまとめました。
14級と12級の分かれ目は?
痛みやしびれ(神経症状)が残ったときは、14級と12級のどちらになるかで、賠償額が大きく変わります。
自賠責保険の実務では、障害があることを医学的に証明できるものは12級、証明まではできなくても医学的に説明できるものは14級、と区別する考え方がとられているといわれます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 192頁)。もっとも、どういう条件がそろえば12級や14級になるという、はっきりした決まりがあるわけではありません(同 192頁)。
- 例:椎間板ヘルニアなどで、痛みやしびれを画像と神経の検査で証明できる
- 例:むちうち・腰椎捻挫などで痛みやしびれが残り、医学的に説明できる
裁判で12級が認められやすいのは
裁判では、12級が認められやすいのは、画像で神経の圧迫が確かめられ、その神経が受け持つ場所に、感覚の異常などの検査の結果が出ている場合です。画像で圧迫が疑われる神経と、しびれなどが出ている場所が合わないときは、14級にとどまりやすいとされています(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 200頁)。
腕のしびれであれば、首のどの高さの神経が圧迫されているかと、しびれや力の入りにくさが出ている場所が合っているかを確かめます(標準整形外科学 第14版 512頁・513頁)。
賠償の目安は、等級ごとにどう違う?
| 等級 | 後遺障害の慰謝料(裁判の基準) | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|
| 14級 | 110万円 | 5% |
| 12級 | 290万円 | 14% |
| 11級 | 420万円 | 20% |
| 8級 | 830万円 | 45% |
| 6級 | 1,180万円 | 67% |
慰謝料の額は、裁判で使われる基準(いわゆる赤い本)の目安です(2020年版 上巻 196頁)。
このほかに、将来の収入の減少分(逸失利益)を請求します。逸失利益は、原則として事故の前の収入をもとに、労働能力喪失率と、労働能力が下がる期間(症状固定の日から、原則として67歳まで)から計算します。労働能力喪失率は、表の割合を参考に、仕事の内容や年齢なども見て決められます。
むちうちでは、期間を限る例が多い
むちうちでは、この期間を12級で10年程度、14級で5年程度に限る例が多く見られます(赤い本 2020年版 上巻 99頁)。
計算の方法は後遺障害14級の慰謝料と逸失利益の計算方法で、例を挙げて説明しています。
等級を認めてもらうには、どんな検査と資料が要る?

そろえておきたい検査と資料
- 事故の直後からの通院の記録:事故から受診までの間が空くと、事故との関係を疑われやすくなります。痛みがあれば、早めに整形外科を受診してください。
- MRI:レントゲンで分かるのは、骨と骨の間のすき間が狭くなっているかどうかなどで、椎間板の飛び出しや神経の圧迫の程度はMRIで確かめます(標準整形外科学 第14版 523頁)。しびれがあるときは、MRIを撮ってもらうよう主治医に相談してください。
- 神経学的検査:腱反射、筋力、感覚の検査や、スパーリングテスト・ジャクソンテスト(首を後ろ、または痛む側の斜め後ろに傾けて頭を上から押し、腕や肩甲骨のあたりに痛みが出るかをみる検査。同 510頁〜512頁)の結果を、カルテと後遺障害診断書に書いてもらいます。
- 後遺障害診断書:自覚症状を具体的に(「右手の親指と人差し指のしびれ」など)書いてもらい、画像所見と検査結果を漏れなく記載してもらいます。
軽い事故だったとして、症状が事故によるものかどうかが争われるときは、事故の様子、事故の直後の症状、その後の治療の経過、事故の前からの病気などから判断されます(交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版 195頁)。

通院日数については、後遺障害14級に認定されるには通院日数はどれくらい必要?で解説しています。
当事務所の解決事例から:首の痛みと腕のしびれで12級

ご依頼を受けてから、MRIの撮影の指示、レスキュー隊の記録の収集、医師への検査の依頼などを行い、後遺障害12級が認められました。
等級が認められるかどうかは、こうした資料をそろえられるかどうかで分かれることがあります。
結果は事案により異なります。
こんなときはご相談ください

ひとつでも当てはまったら
- 保険会社から治療費の打ち切りを告げられた
- 後遺障害の申請をしたが、非該当だった(異議申立て)
- 14級が認められたが、12級に当たるのではないかと思う
- 画像にヘルニアが写っているのに「事故の前からのもの」と言われた
参考文献
- 自動車損害賠償保障法施行令 別表第二
- 厚生労働省労働基準局長通知「せき柱及びその他の体幹骨、上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」(平成16年6月4日基発第0604003号)
- 標準整形外科学 第14版(医学書院)100頁、510頁〜513頁、522頁・523頁、557頁〜559頁
- むち打ち損傷ハンドブック 第4版(丸善出版)1頁、6頁
- 脊椎MRI読影の一手(南山堂)2頁・3頁
- 椎体骨折診療ガイド(椎体骨折評価委員会 編)2頁〜4頁
- 交通事故におけるむち打ち損傷問題 第3版(保険毎日新聞社)192頁、195頁、200頁
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 99頁、196頁、437頁



