この記事のポイント
- 傷あと(醜状障害)の等級は、残った場所と大きさで決まります。顔・頭・首は7級・9級・12級、腕と脚の露出面は14級などに当たります。
- 傷あとは体の働きを直接損なわないため、逸失利益が争いになりやすい障害です。仕事や収入への影響を記録しておくことが大切です。
- 長さ・大きさを測り、写真を撮り、後遺障害診断書の醜状障害の欄に場所と大きさを書いてもらいます。


この頁では、傷あとの等級と大きさの目安、賠償で争われやすい点、等級を認めてもらうための測り方と資料を、交通事故を扱う弁護士がまとめました。目・耳・鼻・口の働きの障害は顔(目・耳・鼻・口・歯)の後遺障害で説明しています。
傷あとが残りやすいのは、どんなけが?

顔の切り傷・裂けた傷
交通事故で車に乗っていた人の約67%に、顔の皮膚や筋肉などのけが(軟部組織損傷)があったという報告があります。顔のけがでは口のまわりの裂けた傷が多く、唇の赤い部分と周りの皮膚との境目がずれたまま治ると、とても目立ちます(交通外傷 メカニズムから診療まで 135頁)。
フロントガラスやサイドガラスに顔を打ちつけると、細かいガラスの破片が傷の中に入り込むことがあります。ガラスの破片はX線に写りにくく、見逃されやすいとされています(同 136頁)。
路面で擦った傷と、皮膚がはがれる傷
はね飛ばされて路面に体を打ちつけると、傷が土や砂で汚れることがあります(交通外傷 メカニズムから診療まで 136頁)。砂や塗料などの細かい粒が顔の皮膚のすぐ下に残ったままになると、入れ墨のように色が残る「外傷性刺青」になり、見た目に大きく影響します(同 135頁)。
タイヤにひかれたり、回るものに挟まれたり、路面で強く擦られたりすると、皮膚が下の筋膜からはがれることがあります(デグロービング損傷・デコルマン損傷)。はがれた皮膚が壊死すると、ほかの場所から皮膚を移す植皮が必要になります(標準救急医学 第5版 423頁)。
植皮のために皮膚を採ったあと(採皮痕)も、後遺障害診断書の醜状障害の欄に書く対象です(むち打ち損傷ハンドブック 第4版 177頁)。
やけどは、深さで何が違う?
やけどは、深さによって治り方が違います(標準救急医学 第5版 429頁)。
- 盛り上がった傷あとやケロイドが残ることがある
- 盛り上がりやひきつれ(瘢痕拘縮)の原因になる
傷あとが落ち着くまで、どのくらいかかる?
傷は、次の時期を経て、傷あとが時間をかけて成熟していきます(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 588頁、593頁)。
- けがの
直後出血が止まり、炎症が起こる時期(2〜5日ほど) - 次に傷がふさがっていく時期(約3週間)
- 1年
ほど傷あとが時間をかけて成熟する時期。けがから1年ほどまで続くのが一般的です。成熟につれて、傷あとの赤みが引いていきます - 2年
以上も成熟する時期が、2年以上続くこともあります
この間にコラーゲンが作られすぎると、傷の範囲の中で赤く盛り上がる「肥厚性瘢痕」や、傷の範囲を越えて広がる「ケロイド」になることがあります。傷あとの皮膚には、毛穴や汗腺が元どおりにはできません(同 593頁〜595頁)。
口のまわりの傷では、ひきつれて口を閉じにくくなるなど、見た目だけでなく働きの障害が出ることもあります(交通外傷 メカニズムから診療まで 135頁)。
修正の手術と症状固定の時期
顔の傷あとを形成外科で修正する手術は、傷が落ち着くまで半年ほど待つ必要があり、けがから6か月後の症状固定を待って、6〜8か月後に傷が安定してから行うのが望ましいとする医学書もあります(同 135頁)。
等級の申請に使う後遺障害診断書は、症状固定の時点で残っている症状を医師が書くものです(むち打ち損傷ハンドブック 第4版 172頁)。修正の手術をいつ受けるか、症状固定をいつにするかは、主治医とよく相談してください。
どんな後遺障害の等級が認められる?

顔・頭・首の傷あと(外貌の醜状)は何級?
「外貌」とは、頭、顔、首のように、腕と脚以外で、ふだん人目にさらされている部分をいいます。
等級と大きさの目安は次のとおりです(別表第二、赤い本 2012年版 下巻 95頁・96頁)。「てのひら大」は、指の部分を含まない大きさです。
| 等級 | 頭 | 顔 | 首 |
|---|---|---|---|
| 7級12号(外貌に著しい醜状を残すもの) | てのひら大以上の傷あと、または頭の骨のてのひら大以上の欠損 | 鶏卵大以上の傷あと、または10円硬貨大以上のへこみ(組織陥没) | てのひら大以上の傷あと |
| 9級16号(外貌に相当程度の醜状を残すもの) | なし | 長さ5センチメートル以上の線状の傷あと | なし |
| 12級14号(外貌に醜状を残すもの) | 鶏卵大以上の傷あと、または頭の骨の鶏卵大以上の欠損 | 10円硬貨大以上の傷あと、または長さ3センチメートル以上の線状の傷あと | 鶏卵大以上の傷あと |
どの等級も、人目につく程度以上であることが必要で、眉毛や髪に隠れる部分は数えません。
認定基準は、眉に沿った長さ3.5センチメートルの縫い傷のうち1.5センチメートルが眉に隠れているときは、顔に見えている線状の傷あとは2センチメートルで、醜状に当たらないという例を挙げています(赤い本 2012年版 下巻 96頁)。けがを縫い合わせたあとも、見た目に残る傷あととして評価されます(同 96頁)。
このほかの扱い(認定基準)
このほか、認定基準では次のように扱われます(赤い本 2012年版 下巻 96頁)。
男女で違う? 平成22年6月10日以後の事故は区別がありません
以前の等級表は男女で分かれており、女性は著しい醜状が7級、醜状が12級、男性は著しい醜状が12級、醜状が14級でした。
平成23年5月2日の政令改正(平成23年政令第116号)で男女の区別がなくなり、顔の長い線状の傷あとに当たる9級が新たに設けられました。改正後の表は、平成22年6月10日以後の事故にさかのぼって適用されます(自動車損害賠償保障法施行令の附則(平成23年政令第116号)、赤い本 2012年版 下巻 91頁・94頁)。
性別にかかわらず等級を決めるのが適当であることと、医療技術の進歩で目立たなくできる線状の傷あとに中間の等級が必要であることが、改正の理由とされています(赤い本 2020年版 下巻 47頁)。
腕・脚や、胸・背中などの傷あとは?
腕と脚は、ふだん人目につく「露出面」かどうかで分けて扱われます。労災保険の認定基準では、露出面は、腕ではひじから先(手を含む)、脚ではひざから下(足の甲を含む)とされています(赤い本 2012年版 下巻 96頁)。
この基準では、二の腕、太もも、胸、お腹、背中、お尻の傷あとは露出面以外の傷あととされ、別表に定めがないため、表の障害に相当するものとして等級が決められます(別表第二の備考、同 95頁・97頁)。
二の腕・太ももの傷あとも、決めつけないで
自賠責保険の支払基準は、等級の認定を「原則として」労災保険の認定基準に準じて行うとしています(自賠責保険の支払基準 第3)。露出面の範囲と、次の表の「相当」の行は、労災保険の認定基準によるものです。腕や脚のどこまでを露出面とみるかを含め、自賠責保険の認定がこのとおりになるとは限りません。二の腕や太ももに手術や植皮のあとが残った方も、等級に当たらないと決めつけないでください。
| 等級 | 後遺障害の内容・目安 |
|---|---|
| 14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
| 14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
| 12級相当(労災保険の認定基準) | 両腕または両脚の露出面の2分の1程度以上に傷あとが残ったもの |
| 12級相当(労災保険の認定基準) | 露出面以外で、両方の二の腕または両方の太もものほとんど全域、胸またはお腹の全域、背中とお尻を合わせた面積の2分の1程度を超えるもの |
| 14級相当(労災保険の認定基準) | 露出面以外で、片方の二の腕または太もものほとんど全域、胸またはお腹のそれぞれ2分の1程度、背中とお尻を合わせた面積の4分の1程度を超えるもの |
傷あとが何か所かに残ったら?
労災保険の認定基準では、傷あとが何か所かに残ったとき、顔・頭・首の傷あとと腕や脚の露出面の傷あと、顔・頭・首の傷あとと胸・背中などの傷あと、腕の露出面と脚の露出面の傷あとは、それぞれ併合して等級を決めます。これに対し、腕や脚の露出面と胸・背中などの傷あと、胸・背中などの2か所以上の傷あとは、そのうち上位の等級だけで認定されます(赤い本 2012年版 下巻 97頁・98頁)。
- 顔・頭・首 + 腕や脚の露出面
- 顔・頭・首 + 胸・背中など
- 腕の露出面 + 脚の露出面
- 腕や脚の露出面 + 胸・背中など
- 胸・背中などの2か所以上
等級ごとの賠償は、いくらが目安?
| 等級 | 後遺障害の慰謝料(裁判の基準) | 労働能力喪失率 | 自賠責保険の後遺障害分の上限 |
|---|---|---|---|
| 7級 | 1,000万円 | 56% | 1,051万円 |
| 9級 | 690万円 | 35% | 616万円 |
| 11級 | 420万円 | 20% | 331万円 |
| 12級 | 290万円 | 14% | 224万円 |
| 14級 | 110万円 | 5% | 75万円 |

自賠責保険では、どう計算する?(計算例)
自賠責保険では、13級以上の障害が2つ以上あると、重いほうの等級を1級繰り上げます(その金額がそれぞれの等級の金額の合計を超えるときは、合計の額)。8級以上が2つ以上なら2級、5級以上が2つ以上なら3級繰り上げます。
12級と14級のように、13級以上の障害が2つそろわないときは繰り上げず、重いほうの等級の金額になります(自動車損害賠償保障法施行令2条1項3号)。
逸失利益は、なぜ争われやすい?

傷あとそのものは体の働きを損なわないため、かつては逸失利益を認めにくいとされ、逸失利益を認めない裁判例では、慰謝料を等級の通常の水準より高くするものが多く見られました(赤い本 2020年版 下巻 47頁・48頁)。
等級表が改められたあとの裁判例を整理した裁判官の講演では、次の点が重視されていると説明されています(同 51頁・52頁)。
裁判例で重視されている点
- 事故のときの仕事の内容と、実際に仕事や収入に影響が出ているか
- 今は影響がなくても、職種や年齢からみて、将来の配置換えや転職に影響が及ぶか(その限度で労働能力の喪失が認められる)
- 接客や営業のように、見た目が仕事に響く職業か(男女を問わず、一定の喪失が認められる傾向にある)
労働能力喪失率も、等級ごとの数字の範囲内で、実際の仕事への影響に応じて決められており、等級の数字より低くされることもあります(同 52頁)。
逸失利益が認められないときの慰謝料
逸失利益が認められなくても、人目を気にして人付き合いや仕事の場で消極的になるなど、間接的に仕事に影響するおそれがあるときは、慰謝料が増やされることがあります。講演では、増やされた額は12級と9級で数十万円程度から200万円程度だったと説明されていますが、必ず増やされるわけではありません(同 53頁)。
高次脳機能障害とあわせて傷あとが残ったときは、傷あとを労働能力の判断に含めない、または限定的にしか含めない裁判例もあります(Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償実務 164頁・169頁)。
事故の前の年収が400万円の方なら、1年あたりの減収分は、喪失率14%(12級)で56万円、35%(9級)で140万円ですが、仮に5%とされれば20万円です。これに働ける年数に応じた係数を掛けて逸失利益を出すため、喪失率の認められ方で賠償額は大きく変わります。
計算の方法は交通事故の逸失利益とは?職業別の計算方法で、認められるための条件は逸失利益発生の要件で説明しています。顔の傷あとの慰謝料と逸失利益は交通事故で顔に傷(醜状)ができた場合の等級と慰謝料でも詳しく解説しています。
等級を認めてもらうには、どう測り、何を残す?
後遺障害診断書の醜状障害の欄に、何を書いてもらう?

長さ・大きさは、どう測る? 写真は?

写真の撮り方
事故の直後から、傷の治り方が分かるように定期的に撮っておきます。次のように撮ると、大きさと目立ち方が伝わります。
- 定規を当てる
- 正面から撮る
- 明るい所で撮る
- 髪や化粧で隠さずに撮る
症状固定は、いつにする?
傷あとの赤みは時間とともに引いていきます(軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 593頁)。やけどのあとの変色や白斑は、永久に残ると認められるものでなければ醜状として扱われません(赤い本 2012年版 下巻 96頁)。修正の手術の予定も含めて、主治医と時期を相談します。
仕事や生活への影響は、どう残す?
接客の有無、事故のあとの配置換え・人事評価・収入の変化、就職や転職の活動への影響などを、勤務先の資料やメモで残しておきます。逸失利益や慰謝料の増額の判断で重視される事情です(赤い本 2020年版 下巻 51頁〜53頁)。
通勤中・仕事中の事故なら
労災保険から障害(補償)給付の支給決定を受けた方は、顔に残った傷あとを軽くする整形手術を、労災保険の「外科後処置」として受けられることがあります。傷あとを軽くできる見込みがあることが条件です(労災保険の実務と手続き最強ガイド 改訂2版 131頁)。
傷あとの見方や等級の考え方は、醜状痕についてでも説明しています。
こんなときはご相談ください

ひとつでも当てはまったら
- 顔や首に傷あとが残り、保険会社から「逸失利益はない」と言われた
- 傷あとの長さや大きさが、等級の目安にわずかに届かないと言われた
- 眉毛や髪に隠れる部分や、複数の傷あとの合計の扱いに納得できない
- 腕や脚(二の腕・太ももを含む)、背中などに、傷あとや植皮のあとが残った
- やけどのあとの変色や、外傷性刺青が残っている
- 修正の手術を受けるか、症状固定をいつにするか迷っている
- 後遺障害の申請をしたが、非該当だった、または等級が低いと思う(異議申立て)
参考文献
- 自動車損害賠償保障法施行令 2条、別表第二(備考を含む)、附則(平成23年5月2日政令第116号)
- 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第3
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)
- 同 下巻(講演録編)2012年版「後遺障害等級表の改訂について(外貌障害)」91頁、94頁、別紙「外貌(上肢及び下肢の醜状を含む。)の醜状障害に関する障害等級認定基準」95頁〜98頁
- 同 下巻(講演録編)2020年版 綿貫義昌「外貌醜状に関する逸失利益,慰謝料をめぐる諸問題」47頁、48頁、51頁〜53頁
- 一杉正仁・西山慶編『交通外傷 メカニズムから診療まで』(名古屋大学出版会)135頁・136頁
- 標準救急医学 第5版(医学書院)423頁、429頁
- 『軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション 組織特性に基づくアプローチ法の構築』(メジカルビュー社)588頁、593頁〜595頁
- 遠藤健司・西村浩輔編著『むち打ち損傷ハンドブック 第4版』(丸善出版)172頁、173頁、177頁
- 松浦裕介・村田佳宏編著『Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償実務』(ぎょうせい)164頁、169頁
- HRプラス社会保険労務士法人『労災保険の実務と手続き最強ガイド 改訂2版』(アニモ出版)131頁



