この記事のポイント
- 後遺障害の等級、過失割合、損害の額は、どの資料で何を示すかで結論が変わります。当事務所は、この3つの立証に取り組んでいます。
- 40歳・年収500万円の会社員の計算例では、後遺障害の部分の額は14級(5年)か12級(10年)かで約663万円違います。
- 共同受任・ご紹介や書類についてのお問い合わせには、弁護士が対応します。紹介への謝礼は、お支払いせず、お受け取りもしません。

この頁は、交通事故の被害に仕事で関わる弁護士、医師、整骨院(接骨院)、保険代理店の方に向けた入口です。交通事故の損害賠償では、後遺障害の等級、過失割合、損害の額のそれぞれについて、どの資料で何を示すかによって結論が変わります。当事務所は交通事故の損害賠償の事件に力を入れており、この3つの立証に取り組んでいます。
ここでは、当事務所が扱っている論点と立証に使う資料、等級や期間の違いで賠償額がどれだけ変わるかの計算例、共同受任・ご紹介と書類についてのお問い合わせの窓口をまとめました。弁護士の方、医師の方、整骨院・保険代理店の方それぞれに向けた内容は、上の3つの頁をご覧ください。
当事務所が扱っている論点は?
後遺障害の立証:12級と14級は何で分かれる?
自賠責保険の等級の認定は、大量の請求を早く公平に処理するため、書面の審査を中心に、定型的・画一的に行われます(交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕193頁・194頁)。
痛みやしびれで問題になる、自動車損害賠償保障法施行令(以下「施行令」)別表第二の12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と14級9号「局部に神経症状を残すもの」の区別は、自賠責保険の実務では、障害の存在を医学的に証明できるものが12級、医学的に説明できるものが14級という考え方によるといわれ、裁判でもこれに準じた判断が多いとされています(同 192頁、196頁)。
- 障害の存在を医学的に証明できる
- 裏付けは他覚的所見(画像検査・神経学的検査・理学的検査などで得られた異常所見)
- 医学的に説明できる
他覚的所見で大切なこと
証明の裏付けとなる他覚的所見とは、画像検査、神経学的検査、理学的検査などで得られた異常所見です。もっとも、どの検査が他覚的所見に当たるかという分け方よりも、訴えている症状に対して、どの所見がどこまでそろっているか、所見と症状が食い違っていないかが大切だと説明されています。
その評価では、それぞれの検査の結果がどこまで客観的で信頼できるかも問われます。受ける人の応答や協力が要る検査は、画像のように本人の意思と関係なく結果が出る検査に比べて、客観性が低いとみられます(同 196頁・197頁)。

自賠責保険の保険会社は、支払ったときは認めた等級とその理由を、支払わないときはその理由を、書面で示さなければなりません(自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」)16条の4第2項・3項)。
異議申立てや訴訟の準備は、この理由を読み、足りない所見が何かを見定めることから始まります。等級の仕組みと、けがの部位ごとの頁は、交通事故の後遺障害の頁にまとめています。
過失割合の立証:何を示せばよい?
過失割合の目安には、東京地方裁判所民事第27部の裁判官が関わってまとめた別冊判例タイムズ38号の基準が使われています。同書は、事故の形ごとに基本の割合と修正要素を示しつつ、基準はあくまで想定した事故の態様についての一応の目安であり、修正要素の数値も画一的に当てはめず、事案に応じて増減させる柔軟な使い方が望ましいとしています(別冊判例タイムズ38号 21頁、43頁)。
どの基準を当てはめるかは事故の態様で決まるため、立証の中心は、信号の色、速度、位置関係といった事故の態様そのものです。
刑事記録と映像は、早いうちに確保を
刑事事件の記録(実況見分調書、供述調書、車両の写真など)は、事故の態様を示す直接的で有力な証拠とされ、訴えを起こす前に検討を済ませておくべきこと、保存の期間を過ぎると手に入らなくなることが指摘されています(同 5頁)。ドライブレコーダーの映像も、早いうちに確保する必要があります。
また、責任の根拠を民法709条とするか自賠法3条とするかで、相手方の認否や主張も変わるため、訴状で明確にすべきとされています(同 11頁)。
過失相殺の事実の挙証責任は、それを主張する被告の側にあると解されていますが(同 21頁)、請求する側も事故の態様を主張する以上、それだけで割り切れない場面があります。

損害の論点:どこが争われる?
後遺障害の逸失利益は、基礎収入、労働能力喪失率、喪失期間の3つで決まります。基礎収入は原則として事故の前の実際の収入で、将来それを上回る収入を得られることを立証できれば、その額によります。喪失率は、労働省(当時)の通達の表を参考に、職業、年齢、後遺障害の部位や程度、事故の前後の働き方などを総合して判断されます。喪失期間は症状固定日から原則67歳までです。ただ、むち打ち症では、12級なら10年程度、14級なら5年程度に期間を限る例がよく見られます。それでも、期間は後遺障害の具体的な症状に応じて判断すべきとされています(赤い本 2020年版 上巻 99頁)。

素因の扱いは、自賠責保険と裁判で違う
事故の前からある椎間板の変化などの素因も問題になります。自賠責保険には素因減額という方法がないため、年齢による変化の影響が明らかだと、症状に見合う等級が認められないことがあります。
これに対して裁判では、事故の前にはなかった痛みが事故をきっかけに出てきたような場合、因果関係そのものは認め、素因が影響した分だけ賠償額を減らして(素因減額)調整する方法がよくとられます(交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕194頁・195頁)。
整骨院などの施術費
整骨院などの施術費は、施術が症状に効果があり相当といえる場合、特に医師が施術を指示している場合には、損害と認められやすい傾向があります。
ただ、訴訟では、施術が必要だったか、効果があったか、内容が合理的か、期間や費用が相当かといった点が問われ、医師の治療費よりも厳しくみられます。必要かつ相当な施術の費用とまではいえない場合には、施術費の総額のうち一定の割合に限って認める裁判例が多いとされています(同 90頁・91頁)。
損害の項目ごとの考え方は、交通事故で請求できる損害の頁にまとめています。
計算例:等級と喪失期間で、額はどれだけ変わる?

症状固定の時に40歳、事故の前の年収が500万円の会社員に、痛みやしびれ(神経症状)が残った場合で、後遺障害の部分(逸失利益と慰謝料)だけを計算してみます。逸失利益は「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に応じたライプニッツ係数」で計算し、生活費は差し引きません(赤い本 2020年版 上巻 100頁)。
計算に使った数字
喪失率は自賠責保険の支払基準の表(同 441頁)、係数は令和2年4月1日から令和11年3月31日までの事故に使う年3%のもの(民法404条、417条の2、722条1項、法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」。赤い本 2020年版 上巻 429頁)、慰謝料は裁判の基準の目安(同 196頁)です。
| 等級と喪失期間 | 逸失利益 | 後遺障害の慰謝料 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 14級9号・5年 | 500万円 × 5% × 4.5797 = 114万4,925円 | 110万円 | 224万4,925円 |
| 12級13号・10年 | 500万円 × 14% × 8.5302 = 597万1,140円 | 290万円 | 887万1,140円 |
| 12級13号・67歳まで(27年) | 500万円 × 14% × 18.3270 = 1,282万8,900円 | 290万円 | 1,572万8,900円 |
14級(5年)か12級(10年)かで約663万円、同じ12級でも喪失期間を10年とみるか67歳までとみるかで約686万円の差が出ます。3行目は原則どおり67歳までとした場合と比べるための数字で、むち打ち症では10年程度に制限される例が多いことは前に述べたとおりです。
過失相殺は、自賠責保険や任意保険からすでに支払われた分も含めた損害の全体に対して行い、そのあとで既払額を差し引きます(健康保険からの給付は先に差し引く裁判例が多いとされます。別冊判例タイムズ38号 21頁)。887万1,140円の損害なら、割合が1割違うだけで約89万円変わります。
自賠責保険から支払われる後遺障害の分の上限は、12級で224万円、14級で75万円です(施行令 別表第二)。これを超える分は、相手方や任意保険会社に請求します。実際の額は、収入の資料、仕事への影響、すでに受け取った保険金などで変わります。
立証には、どんな資料を使う?
- 事故の直後と経過の画像
- 神経学的検査の結果
- 診療録
- 後遺障害診断書
- 自賠責保険の結果と理由が書かれた書面
- 刑事記録(実況見分調書、供述調書、写真)
- ドライブレコーダーや防犯カメラの映像
- 車両の壊れ方の写真と修理の見積書
- 源泉徴収票や確定申告書など事故の前の収入の資料
- 仕事を休んだことや仕事への影響が分かる資料
- 入通院の期間と実日数が分かる診断書と診療報酬明細書(別冊判例タイムズ38号 11頁)
- 整骨院に通った場合は、施術の内容と、医師の指示や同意があったかが分かる資料
ご相談の窓口と、読み手ごとの頁

- 共同受任・ご紹介の進め方
- 後遺障害についての自賠責保険と訴訟の扱いの違い
- 過失割合の立証責任と刑事記録の取り寄せ
- 損害の論点
- 後遺障害診断書・意見書で等級の判断に影響しやすい点
- 画像所見と神経学的検査の書き方
- 照会への回答
紹介への謝礼は? お支払いせず、お受け取りもしません

弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならず、紹介したことに対する対価を受け取ってもなりません(弁護士職務基本規程13条)。当事務所は、事件のご紹介に対する謝礼をお支払いせず、お受け取りもしません。
紹介を受けてはならない相手
また、弁護士は、報酬を得る目的で法律事件の周旋を業とする者など、弁護士法72条から74条までの規定に違反する者から、事件の周旋や依頼者の紹介を受けてはならないとされています(弁護士法27条、弁護士職務基本規程11条)。ご紹介は、謝礼などのやり取りを伴わない形に限ってお受けしています。
ご紹介のあと、秘密はどう守られる?

ご紹介いただいたあとは、弁護士がご本人から直接お話を伺い、委任の趣旨についてのご本人の意思を尊重して事件を進めます(弁護士職務基本規程22条1項)。事件の内容は、弁護士の守秘義務の対象になります(弁護士法23条、弁護士職務基本規程23条)。そのため、紹介してくださった方への経過のご報告は、ご本人の了解がある範囲に限られます。
こんなときはご相談ください

ひとつでも当てはまったら
- 自賠責保険で非該当や14級とされたが、画像や神経学的検査の所見から、上の等級に当たるのではないかと考えている(弁護士の方)
- 過失割合が争点で、刑事記録やドライブレコーダーの映像をどう使うか検討している(弁護士の方)
- 共同受任で、後遺障害や過失割合の立証を分担したい(弁護士の方)
- 当事務所から届いた照会書や、後遺障害診断書・意見書のご依頼について確かめたいことがある(医師の方。整形外科・接骨院の先生へもご覧ください)
- 患者さんの施術費の支払を保険会社から打ち切られた、または施術費が争われている(整骨院の方)
- お客さまが、保険会社から示された賠償額や過失割合に納得していない(保険代理店の方)
- 弁護士費用特約を使って弁護士に相談できるか知りたいお客さまがいる(弁護士特約の使い方)
参考文献
- 自動車損害賠償保障法 3条、16条の4第2項・3項
- 自動車損害賠償保障法施行令 別表第二(12級13号、14級9号と保険金額)
- 民法404条、417条の2、709条、722条
- 弁護士法23条、27条、72条
- 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(平成16年11月10日会規第70号)11条、13条、22条1項、23条
- 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤い本)2020年版 上巻 99頁・100頁、196頁、429頁、441頁
- 東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版』別冊判例タイムズ38号(判例タイムズ社)5頁、11頁、21頁、43頁
- 栗宇一樹・古笛恵子編『交通事故におけるむち打ち損傷問題〔第3版〕』(保険毎日新聞社)90頁・91頁、192頁〜197頁
- 法務省「令和8年4月1日以降の法定利率について」



